
近鉄グループホールディングス(GHD)は8つのホテルを米投資ファンド、ブラックストーン・グループに10月に売却する。大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン近くにある「ホテル近鉄ユニバーサル・シティ」や京都駅前の「都ホテル京都八条」など国内外で運営する24の施設の3分の1に相当する。
新型コロナウイルスの感染拡大で鉄道やホテルの需要が減っており、事業構成を見直す。ホテルは売却後も近鉄が運営を継続し従業員の雇用は維持する。ホテルの名称の変更もない。8つのホテルの帳簿価格は423億円(20年3月末時点)。売却額は非公表だが、600億円規模とみられている。
大規模改装が今春完成した京都を代表する高級ラグジュアリーホテル「ウエスティン都ホテル京都」などの主要ホテルは保有し続ける。JRが昨年新設した山手線高輪ゲートウェイ駅前に19年2月に開業した宿泊主体型の「都シティ東京高輪」も売らない。
「都ホテル博多」の売却が、業界関係者に意外感を与えた。福岡市の「ハイクオリティホテル建設促進制度」の第1号認定を受け、JR博多駅筑紫口前に、新たなランドマークとして19年9月にグランドオープンしたばかりだったからだ。
【近鉄が売却するホテル】
ホテル名(所在地) 客室数 帳簿価格
都ホテル京都八条(京都市) 988室 144.03億円
ホテル近鉄ユニバーサル・シティ(大阪市) 456室 84.84億円
都ホテル博多(福岡市) 208室 143.16億円
神戸北野ホテル(神戸市) 30室 9.86億円
都リゾート志摩ベイサイドテラス(三重県志摩市) 108室 9.05億円
都リゾート奥志摩アクアフォレスト(三重県志摩市)127室 2.19億円
都ホテル岐阜長良川(岐阜市) 192室 18.37億円
都ホテル尼崎(兵庫県尼崎市) 185室 11.52億円
合計 2294室 423.02億円
コロナ禍でホテル・レジャー部門が大打撃
近鉄は総延長約500キロメートルと私鉄では日本一の路線距離を誇る。この営業路線を生かし、ホテル・レジャー事業との相乗効果を狙ってきた。伊勢神宮参拝の伊勢志摩観光旅行は近鉄の目玉だった。
だが、コロナで逆回転した。感染拡大で鉄道やホテル、レジャー施設の利用者が激減した。近鉄GHDの21年3月期の連結決算は、売上高に当たる営業収益が前期比43%減の6850億円、営業損益は800億円の赤字(20年同期は493億円の黒字)、最終損益は780億円の赤字(同205億円の黒字)に転落する見通しだ。
特にホテル・レジャー部門は訪日外国人の大幅減で影響が深刻だった。20年4~12月期連結決算で見るとホテル・レジャー部門の営業赤字は429億円。全社の営業赤字(596億円)の7割強を占めた。