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セブン、一方的にFCオーナーと契約解除、店前に別店舗設置…双方の言い分

写真・文=粟野仁雄/ジャーナリスト
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セブン側が新店舗建設を始めた駐車場.奥の室外機が載る建物が松本さんがオーナーだった店舗

 24時間営業を拒否して時短営業を始め、セブン-イレブンのフランチャイズ(FC)契約を解除された元店舗オーナーにセブン本部が店舗の明け渡しを求めている問題で、同本部は明け渡しを拒んでいる東大阪南上小阪店(大阪府)の元オーナー松本実敏さん(59)への対抗措置として、4月1日から店舗の駐車場に別の仮店舗を設置する工事を始めた。工事強行について同本部の広報担当は「周辺の住民が営業再開を希望している。土地も本部が地主から借りているもので問題ない」とする。

 松本さんは「契約解除は不当」と主張してオーナーの地位確認の裁判を起こし、本部側は「契約解除は接客態度の苦情が多いことなどが理由」として、松本さんに店舗の明け渡しを求める訴えを起こしている。

 松本さんは「裁判中の強行突破は違法で、不当な工事はやめて法律のもとで争うべき」と反発する一方、「裁判所によれば、仮店舗建設の件は別の問題で、本格的に争うには新たに訴訟を起こさなくてはならないようです。地位確認の本訴のほうが重要なので本訴に全力集中したい」と話す。 

 セブン本部としては4月末から営業を開始し、判決確定後は内容に関係なく仮店舗を解体する予定だという。すでに同本部は「災害時の支援物資提供を通して地域に貢献する責務があるとして、明け渡さなければ仮店舗を建設する」との上申書を大阪地裁に提出していた。

24時間営業をめぐる対立

 大手コンビニと元加盟店主の激しい対立の発端は2年前にさかのぼる。2019年2月、松本氏は「24時間店を開いていても経費がかさむばかりで赤字になるだけ。人手不足で過労になっている」として、本部の反対を押し切り24時間営業をやめて深夜と未明時間帯を除く19時間の営業を始めた。さらに年末には元旦の休業を宣言していたところ、同年の12月31付けでフランチャイズ契約を解除された。さらにセブン本部は翌20年1月、松本さんに対して、契約解除が有効として店舗と土地の引き渡し、店舗が引き渡されないことによる損害の支払いなどを求めて大阪地裁に提訴した。これに対し、松本さんは2月、セブン本部に対して「加盟店契約の解除は無効」として店主としての地位の確認、取引拒絶の排除、取引拒絶による逸失利益の支払いを求めて大阪地裁に提訴した。

 全国では松本さんの動きに賛同、追随するセブンの店舗も現れ、松本さんは「時短営業への意趣返しであり、ほかの店舗のオーナーへの見せしめにするための不当な契約解除」と解除撤回などを求め仮処分申請を起こした。

 他方、セブン本部は「契約解除は時短営業が理由ではなく、松本さんの接客態度などへの苦情が多くブランドイメージを傷つけられたこと」として、店舗明け渡しを求める仮処分申請を起こした。松本さんは契約解除を機にSNSなどで、セブン本部側が店の収支に関係なく売上金から一定額を取る「チャージ」という仕組みのために24時間労働させていることを激しく批判していた。

 双方の仮処分申請について大阪地裁は昨年9月、松本さんの請求も店舗の明け渡し要求も却下した。接客態度で松本氏は「トイレットペーパーを持ち去ったりトイレで長時間スマホを充電しているような客がいる」とトイレを貸すことを拒否したり、さらに長時間駐車の車のタイヤをロックするなどしていた。また、レジで並ばない客を注意して口論になったりしていた。

 松本さんは正当性を訴えたが、大阪地裁は「客と口論になった松本さんが胸を突くなどした」と認定し「同社の信用を低下させた。ツイートによる本部批判は契約の解除事由に当たる」と判断した。一方で、セブンによる明け渡し要求も却下したことについて同地裁は「松本氏が勝訴した場合、営業再開が事実上困難になる」としていた。現在、双方が本訴で争っている。

 松本さんは仮処分の結論が出た後、代理人弁護士を増やして弁護団(大川真郎弁護士ほか4人)を結成した。弁護団によれば、松本さんが経営を始めた12年から時短営業に踏み切った19年2月1日までの約7年間、本部が松本さんの顧客対応や寄せられていた苦情について契約解除を示唆したり強く指導したりすることは一度もないどころか、現場対応の苦労に理解を示すこともあった。

 ところが、松本さんが時短営業をすると、本部は態度を一変し、時短営業を理由に契約解除を示唆する通知を行った。突然、松本さんの顧客対応についても問題視し是正を求めだしたなどとして、「契約解除の理由が時短営業であることは明らか」と主張する。弁護団は「コンビニ会計問題や人員不足問題に悩み、長時間労働を強いられている全国のコンビニオーナーに共通する問題。コンビニオーナーの権利擁護・働き方の改善のために声を上げた松本さんが弾圧されるようなことはあってはならない」と訴える。

「本部にはコストは関係なくチャージ代」

 ほとんど客がいない深夜帯に高い光熱費や人件費を払ってコンビニが店を開けていることを不思議に思う人は多いはずだ。

「深夜営業のためにこちらがいくら経費を掛けても、本部にはコストは関係なく、缶コーヒー1本売れればそれでチャージ代が自動的に入る仕組み」(松本氏)

 こうした巧みな「収奪システム」に行政がメスを入れることが肝要ではないか。松本氏は「最近はあまりニュースにならなかったのに、セブンがアホなことやるからまた注目されてしもうた」と笑う。

粟野仁雄/ジャーナリスト

粟野仁雄/ジャーナリスト

1956年生まれ。兵庫県西宮市出身。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)を経て、82年から2001年まで共同通信社記者。翌年からフリーランスとなる。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌などに執筆。
『サハリンに残されて−領土交渉の谷間に棄てられた残留日本人』『瓦礫の中の群像−阪神大震災 故郷を駆けた記者と被災者の声』『ナホトカ号重油事故−福井県三国の人々とボランティア』『あの日、東海村でなにが起こったか』『そして、遺されたもの−哀悼 尼崎脱線事故』『戦艦大和 最後の乗組員の遺言』『アスベスト禍−国家的不作為のツケ』『「この人、痴漢!」と言われたら』『検察に、殺される』など著書多数。神戸市在住。

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