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ダイソー、売上5千億円超え、勢い止まらず…無印・ニトリの半額の「300円ショップ」人気

文=編集部
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 100円均一ショップ最大手のダイソーを運営する大創産業(本社:広島県東広島市、非上場)は3月26日、東京・渋谷の商業施設「渋谷マークシティ」1階に新しい生活雑貨ブランドの店「スタンダードプロダクツバイダイソー」をオープンした。

「ちょっといいのが、ずっといい。」をコンセプトに収納ボックス、食器、服飾雑貨などを販売する。100円均一の商品は置かず商品の大半は300円。もっとも高い商品は1000円に価格を設定した。オーガニックコットンを使った「フェイスタオル・ハンドタオル」(2枚組300円)や新潟県燕市のナイフやフォーク(2本組300円)などが目玉商品である。

 売り場面積は261平方メートル。オリジナルアイテムを、およそ1300品揃えた。ほぼすべての商品をこの店舗のために自社開発したという。今後も年間500アイテムを開発・投入していく。巣ごもり需要で生活雑貨や家具への関心が高まっていることから、大きな収納箱やデザイン性を高めた雑貨などを重点的に扱うことにしている。

 無印良品やニトリと明らかに競合するが、価格を半分程度に抑えることで違いを出す。国内が中心だが、海外での出店も視野に入れている。

 大創産業は100円ショップ「ダイソー」(国内3493店)。若い女性向けの300円ショップ「スリーピー」(41店)、「プラスハート」(54店)、「クゥクゥ」(34店)を展開している。海外は26の国と地域でダイソーが2248店、スリーピーが3店ある。「スタンダードプロダクツ」は100円ショップ、女性向け300円ショップに次ぐ第3の柱と位置付けている。

 ダイソーなど100円均一ショップは商品の大半を中国や東南アジアで生産し、輸入することで低価格を維持してきた。しかし、新興国の経済成長で賃金コストが上昇。コロナによる巣ごもり需要で世界的に荷動きが増え、海上輸送の運賃の高騰で100円均一で利益が出しにくくなっている。

M&Aで300円ショップを強化

 新型コロナウイルスの感染拡大で100円ショップも脚光を浴びた。外出自粛や店舗休業の影響を受けたものの、「おうち時間」の増加で生活雑貨を中心に幅広いアイテムが売れた。消費者の節約志向も重なり、生活雑貨からアイデア商品まで揃う100円ショップが有事に強いことが実証された。

 大創産業は非上場のため財務諸表を公開していない。公表しているのは売上高の概要のみだ。2020年3月期の売上高は前年同期比5.4%増の5015億円だった。20年5月、300円ショップ「クゥクゥ」をビルジャン(名古屋市)から取得した。買収額は非公開だ。「クゥクゥ」は、「女性が心ときめくような、300円の雑貨を集めたショップ」がコンセプトだ。「スリーピー」「プラスハート」のブランドで300円ショップを展開。「クゥクゥ」を加えた3つで女性向けの300円ショップの出店を拡大する。

 今年3月、鳥取・島根両県を中心にダイソーを運営するみどり商事(鳥取県米子市)から95店を譲り受けた。譲渡価格は非公開。さらに、東京・渋谷に新業態店の「スタンダードプロダクツ」を開業するなど、コロナ禍でも勢いが止まらない。

 100円ショップは大手4社の寡占状態だが、業績は明暗が分かれる。業界2位のセリア(ジャスダック上場)の21年3月期決算(非連結)の売上高は前期比9%増の1987億円、純利益は17%増の141億円の見込みで好調だ。業界3位のキャンドゥ(東証1部)の20年11月期の連結売上高は前期比2%増の730億円、純利益は35%増の4億円。除菌、掃除関連などの衛生用品が堅調で「コアラのマーチ」のコラボ雑貨が記録的ヒットとなった。

 一方、業界4位のワッツ(東証1部)の21年8月期の連結売り上げは3%減の509億円、純利益は4%減の7億円と減収・減益になりそうだ。海外に80店を展開しているが、苦戦が続いている。21年8月期中に一部は撤退の方針だ。

 300円ショップから倒産が出た。300円均一のバラエティ雑貨ショップ「ミカヅキモモコ」を運営する三日月百子(大阪市)が今年2月、自己破産を申し立てた。負債総額は12億7500万円(帝国データバンク調べ)。アクセサリーやファッション雑貨などを300円で販売するミカヅキモモコを70店舗以上を展開し、18年1月期の売上高は30億円。近年は外国人観光客からの人気が高かったという。しかし、コロナ禍でインバウンド需要が蒸発したことで回復の見通しが立たなくなったようだ。

創業者の矢野博丈氏、アントレプレナーの日本代表として世界大会に出席

 大創産業は18年3月、創業者の矢野博丈社長が代表権のない会長に退き、次男の靖二副社長が社長に昇格した。社長交代は1977年創業以来初めてのことだった。

 博丈氏は「日経ビジネス」(日経BP社/2017年11月20日号)のインタビューで「株式公開の準備をしている」と明かした。社長交代は株式公開を見据えたもので、靖二氏が株式上場の実務を担うことになる。博丈氏は18年12月に開催された「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2018ジャパン」で日本代表に選出され、19年6月、モナコ公国で開かれた世界大会に出席した。「EY アントレプレナー」は新たな事業領域に挑戦する起業家の努力と功績を称える国際的な表彰制度である。

 博丈氏は1943年北京生まれ。67年中央大学卒業。69年ハマチ養殖業に携わるも倒産、夜逃げ。百科事典の訪問販売など転職9回を経験した。72年、トラック1台で家庭用品の移動販売の矢野商店を創業。77年大創産業として法人化。87年「100円SHOPダイソー」の看板を掲げた。

 今や、国内・海外に5800店舗を超える、日本最大の100円ショップとなった。アントレプレナーを選出する際の審査委員長だった元ソニー社長の出井伸之氏は、「矢野氏は、ものの原価率にとらわれないという、ものに対する価値の見方に独自性があり、一般的な考え方とは異なります。この時代の中で100円ショップを流行らせ、新しいビジネスモデルを確立されたことが素晴らしく、今後のビジネスは、まず考え方を変えていかないと生き残れないということを証明した良い例だと思います」と講評した。

 大創産業が、「いつ上場するのか」に関心が集まる。上場すればニトリホールディングス(株価は2万1000円前後)や無印良品の良品計画(同2600円前後)の強力なライバルになるものとみられている。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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