ANA、CAの私的なSNS投稿を監視…管理職3人が密室で5時間説教、同期と食事だけで

前回の第8回連載で、全日本空輸(ANA)内部におけるCA(客室乗務員)のSNS利用に対する異常な監視体制について報じたところ、同社現役CAから被害報告が相次いだ。以下は、その報告をもとにしたANAの「思想統制」の実態である。なお、情報提供者の特定を避けるために複数の証言を織り交ぜて記述したが、すべて実際に起こった事実から構成されている。
休日に突然、管理職のCAから呼び出しの電話
「明日、会社に来てもらえますか?」――。緊急事態宣言中、国際線が壊滅状態となり便数が激減し手持ち無沙汰にしていた20代若手CAのAさんは、週末に突然かかってきた管理職CAからの電話に驚いた。「ご用件は何でしょうか?」と問い返すと「今は言えません。明日話しますから、とにかく来てください」の一点張り。翌日は休日で社外の友人と予定のあったAさんがその旨を伝えると、管理職は「会社からの指示です。予定は変更して会社に来てください」とA子さんのプライベートをまったく尊重せず、強引に出社するよう指示した。「誰に見られても恥ずかしくない格好で来てくださいね」。脅し文句のような管理職の一言に恐怖を感じながらも、翌日、指示通りに出社したAさんを密室で待っていたのは3人の40~50代の管理職だった。
LINEの1日で消える設定の身内の投稿が会社側に漏洩
まったく身に覚えのないAさんに対し、管理職の1人はこう質問した。「あなたはコロナ禍にもかかわらず、近所の喫茶店で同期の4人と会食していましたね」。これ自体は事実である。宣言中で3人以上での会食はよくないとは思いつつも、同期とはお互いに会話の際もマスクを付けて会話するなど感染リスク回避に留意しており、日中でもあったので問題ないと考えてのことであった。
それにしても、なぜプライベートな会食について会社が把握しているのか。「LINEに5人で写ってる写真を投稿してたでしょ? 知ってるのよ」。別の管理職が追い詰めるようにAさんに質問する。これも事実だが、そもそも一般には非公開で24時間で消えるストーリーという機能を使ったものであり、あくまで身内でのやりとりである。入社時にSNSの利用についての「確認書」(本連載第1回を参照)にサインし、使用についての研修も受けたが、プライベートなSNS利用まで干渉される覚えはないと不満を覚えた。それにしても、なぜこの件を会社は知っているのだろうか。「投稿を見かけたお客様から情報提供があったからです」。そんな暇な人が本当にいるのか大いに疑わしかったが、有無を言わせぬ雰囲気にAさんは言葉を飲み込むしかなかった。2人の管理職とAさんのやりとりを淡々とパソコンでメモを打つ、もう一人の管理職のキーボードの音だけが密室に響いていた。
1日おきに一人ずつ呼び出し、5時間も密室で「お説教」、無関係なSNSもチェック
ヒアリングという名の「お説教」は5時間も続いた。
「なぜわざわざ投稿したのか?」
「集まっていることをアピールしたかったのか?」
「その時、どんな気持ちだったのか?」
何気なく日常の一コマを投稿しただけなのに、まるで犯罪行為のように問い詰められた挙句、スマホを取り上げられ、今回の件とはまったく無関係な過去のやり取りまでさかのぼって調べられた。本来なら悪いことをしてないはずなのに、密室ということもあり、自分が悪いかのように思わされるのが辛い。最後には「真面目に自粛している人を侮辱している」と罵られた。