ANAHD子会社CA、検疫補助業務後にPCR検査なしで国際線乗務…現場CAが戦々恐々

本連載第11回で取り上げた、ANAホールディングス(HD)が政府から受注した成田空港国際線での検疫補助業務について、実際に業務を実施する完全子会社エアージャパン(AJ)のCAがPCR検査を受けないまま、国際線に乗務していることをANAHDが認めた。現場で作業に当たるAJのCAはもとより、東京五輪の開催で増加すると思われる国内外の乗客の安全をないがしろにする姿勢が明らかになった格好だ。
ANA子会社のCA、感染リスク確認せずに国際線に乗務
今回の問題の経緯をおさらいしておこう。
AJはANAHDが100%出資し、成田空港にベースを置く。ANAグループで成田=シンガポール、バンコク路線などアジア・リゾート路線を担い、国際線に特化している。ANAグループが雇用調整助成金を今年度から受け取らないと決めたことにともない、ANAHDが検疫補助業務を受注した。業務内容は、成田空港第1ターミナルで乗客が検疫でのPCR検査を受ける際の受付や誘導、必要書類の確認といった補助業務だが、業務をまかされるAJのCAには業務を開始する5月の大型連休明けのおよそ1カ月前の3月末に突然告知された。
ほとんど選択の余地はないまま、検疫補助業務にAJのCAは従事することになったが、感染リスクの高い業務にもかかわらず、会社側は「これまでにこの補助業務で感染した例はない」として、業務後のPCR検査は現在も実施していない。AJのなかで管理職以外のCAだけが強制的に業務に就かせられており、翌日に国際線に乗務するケースも少なくない。飛行機の中という密室で数時間も同乗する乗客の感染リスクは否応なしに高まるはずだ。同僚も同じ状況であり、AJのCAは全員、帰宅後は家族にまで感染させるリスクも背負うことになる。
ANAHDの見解
事実確認のためANAHDに質問状を送付したところ、以下の回答が寄せられた。
Q1:AJのCAは検疫補助業務後にPCR検査を実施しておらず、業務後にPCR検査を受けない状態で国際線に乗務しているケースがあるとの情報を得ておりますが、事実でしょうか。
【回答】
「検疫補助業務」とは、主に到着のお客様の誘導、申請書類のチェック、検疫に関わる内容の案内、検査後の待機場所案内などになります。これら業務については、厚生労働省成田空港検疫所の指示に従って業務についており、その中で検疫補助業務後にPCR検査を実施するという定めはございません。また、検疫補助業務につくにあたっては、感染防止対策としてマスク、手袋を着用するとともに、お客様との間にアクリル板等での仕切りのない業務(誘導業務等)においては、防護メガネ、またはフェイスシールドの着用などを徹底しております。