
“平成の怪物”と呼ばれ、日米で活躍した松坂大輔投手がとうとう引退を決めました。1980年生まれの彼が、西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)の選手として初登板したのは、高校を卒業したばかりの1999年4月7日。8回2失点で勝利投手として華々しいデビューを飾りました。
その後、オリンピックの代表選手に2度選ばれるなど、それこそ怪物ぶりを発揮し、27歳の時には念願の米大リーグ入り。6年、総額5200万ドル(当時のレートで約61億円)というビッグな契約にも驚きましたが、ボストン・レッドソックス移籍後、最初シーズンでチームはワールドシリーズに出場。さらに松坂投手は、日本人初のワールドシリーズ勝利投手となりました。
当時のアメリカでは、「マツザカはジャイロボールを投げる」という噂まで流れ、アメリカの打者も目を白黒させていました。
その後、怪我や故障が続いて、以前のような活躍は見られなくなり、とうとう引退することになったのは残念です。大活躍の時間は短かったとはいえ、とてつもない投手だったのは間違いありません。
スポーツの場合、最盛期はあっという間に過ぎていくので、体力も知力もまだまだあるような年齢で引退となってしまいます。現在、松坂大輔は40歳で現役を退くことを決意したわけですが、彼と同世代の投手は多くがすでに引退し、現役を続けているのは福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手のみとなりました。
野球選手としては多くが引退するとはいえ、一般社会ではまだまだ働き盛りで、将来の出世を願いながらバリバリ働いている年齢です。
高齢になっても働ける音楽家
実は、演奏家も同じく、40歳ごろはもっとも乗りに乗っている年齢でしょう。体力の衰えを感じ始める50代になっても、その音楽には磨きがかかっていきます。定年のないアメリカのオーケストラでは、60代、70代を迎えても、そのオーケストラの顔ともいえるような有名な演奏者が活躍していますし、ヴァイオリンやピアノのソリストで、80歳の大巨匠がいるような世界です。
とはいえ、そんな怪物は特別として、オーケストラの演奏家は、実は体力勝負です。「これって、ほとんど体育会系じゃない?」と思うような世界なのです。
ドイツのオペラ作曲家ワーグナーの作品に、『ニュルンベルクの大歌手』という有名なオペラがあります。内容は愛あり、笑いあり、ドイツ精神あり、悪だくみあり、大騒ぎありの“なんでもあり”の大人気オペラなのですが、その第3幕の演奏時間は、なんと2時間。演劇と違って、オペラはずっと音楽が流れているわけで、特に弦楽器などは弓を持った右腕と、弦を押さえている左腕を下ろすこともほとんどなく、ずっと弾き続けているのです。