SNS疲れに効くGravity、なぜ20代女性に人気?“女子高生のマストアプリ”もユーザー倍増
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2021年第2四半期(4~6月)のアプリ利用動向について聞いた。
“お忍び利用”がメインの新興SNSとは?
――21年4~6月を象徴するアプリは何になるでしょうか?
日影耕造氏(以下、日影) 今回紹介したいのは、SNSの「Gravity」です。ツイッターやインスタグラムなど主要なSNSはフォロー数やフォロワー数など、いわゆる「強さ」が可視化されていますよね。
一方、Gravityはフォローやフォロワーの数を非表示にできます。設定で表示させることもできるのですが、見る限り、非表示の人が大半ですね。また、アイコンも運営側が用意した18種類のうちからしか選べません。さらに、「いいね」はあるのですが、ツイッターのリツイートに当たる機能がなく、いわゆる「拡散」ができない仕様になっています。
そのため、基本的にユーザーは“お忍び利用”がメインの設計であることがわかります。なお、アプリのインストール後に性格診断のようなものを行う必要があり、その結果に基づいたアルゴリズムで、おすすめのユーザーがタイムラインに表示されます。
――ツイッターでも、「フォロー、フォロワー、いいね、RTの数」を非表示にできるグーグルクロームの拡張機能「おだやかツイッター(パソコン版のみ。※21年8月時点)」が話題になり、私自身愛用していますが、Gravityはさらに機能を制限していますね。ちなみに、グーグルプレイの説明を見ると、「Gravityアプリでは社会的立場や外見などは重要視されません。リラックスして自分の気持ちを打ち明けてください」とあります。
一方で、ガジェット情報サイト「すまほん!!」によると、ツイッターでGravity を利用したことをつぶやけばAmazonギフトカードをプレゼント、などかなり積極的な広報活動を行っていたそうです。その際に「PR表示」を頼んでおらず、ステマではないのか、という声も上がっているようですね【※1】。ツイッターでツイッター的な世界に疲れていないかとGravityを勧めるというのも、なかなかシュールな光景ですが……。
日影 図1、2はGravityの利用ユーザー数推移と性年代比です。ユーザー数は4月から5月にかけて、約3倍に伸びています。もちろん、ツイッターやインスタグラムに比べればまだまだ規模は小さいですが。なお、利用者の性年代を見ると、デジタルネイティブ世代の20代、特に女性が多いようです。
――若年層、特に若年女性層はサービスにとっては起爆剤ですよね。「映え」で一世を風靡したインスタグラムなども、今やさまざまな世代の人が使うサービスになりました。一方、Gravityはそもそも従来型SNSのアンチテーゼ的な「お忍び」的SNSですから、今までのようにいくかということも含め、注目ですね。
位置情報共有アプリが10代男子に人気
日影 Gravity人気の背景には「既存のSNSに疲れた」という事情があるかと思いますが、一方で真逆の流れもあります。現在位置情報をユーザー間で共有できる地図コミュニケーションアプリ「Zenly」が、また伸びているのです。Zenlyは19年の時点で“女子高生のマストアプリ”と呼ばれ人気でしたが、20年1月からの1年間でユーザー数が倍増しています。図3、4は、月間利用ユーザー数推移と性年代比です。
――10代女子より10代男子の方が多いのですね。確かに、10代女子の場合は「SNSに顔を出したら、知らない人から気持ち悪いDMやコメントが……」という経験があったり、そういう経験を友達から聞いたりすることもあるでしょうから、個人情報に対する警戒が男子より強い、というのもあるかもしれませんね。
日影 さらにグラフを見てみると、10代の子どもの「母親世代」が使っているのではないかと推測されます。
――自分が子どもなら、そこまで干渉されたくないですね……。
日影 位置情報をオフにすることもできるので、全国のご家庭でせめぎ合いがあるのかもしれませんね。また、10代ユーザーの利用増については、コロナ禍という社会情勢もあったのかもしれません。集まって対面で遊んだりするのが難しくなってしまったため、友達同士で「ここにいる」と確かめ合うことで、つながりを感じたいという思いもあるのかもしれません。
携帯電話が普及する前は家の固定電話にかけていたわけで、相手がどこにいるかを聞くまでもありませんでした。それが携帯電話になることで、「今どこ?」という言葉を使うようになりました。今はそれがアプリに移り変わり、言葉すらいらずに確認できるようになっているのかもしれませんね。
――10代は友達とつながるのが楽しくて仕方ない時期ですから、Zenlyが流行り、そういうことをしていくうちに、だんだん人間関係の「密」に疲れていって、20代になり、ただの自分でいたいGravityが支持されている……のかもしれませんね。
* * *
後編も引き続き、日影氏に「ウマ娘」「音声アプリ」など、最新ヒットアプリの背景についてうかがう。
【※1】
『「アナ雪2」再来の大規模「ステマ」?疑惑の新興SNSアプリ「Gravity」について調査してみた』 (『すまほん!』より)
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!