接触確認アプリ「COCOA」アンドロイドユーザーの半数以上が“まったく使わない”休眠状態
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
今回は2020年第4四半期(10~12月)になるが、激動の2020年全体について、同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に話を聞いた。
半数以上が休眠ユーザーのCOCOA
――社会、生活が新型コロナウイルスにより大変貌を遂げた2020年を象徴するアプリを挙げるとしたら、何になるでしょうか?
日影耕造氏(以下、日影) やはり、6月に政府によりリリースされた新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」ですね。厚生労働省の発表によると、2021年1月時点でダウンロード数は2408万件、陽性登録件数は9033件に上っています。短期間でこれほどダウンロード数を増やしたアプリは見たことがありません。
――ダウンロード数とユーザー数は単純には一致しないにしろ、国民の5人に1人がダウンロードしたアプリ、となるとすごいですね。
日影 COCOAがこれほど普及したのは、アプリとしての中身もさることながら、政府によりリリースされ、それがニュースや情報番組で一斉に取り上げられるなど、「広報、広告の規模」がこれまでのアプリとは桁違いだった、というのも大きいと思います。
さらに、他のアプリと比べて非常に独特なのが、「ダウンロードされた後、全然使われていない」ことです。アンドロイドのデータを集計するApp Apeで直近の状況を見てみると、COCOAを1カ月で10日以上起動したのは、全ユーザーの0.5%にすぎません。逆に、1カ月に1回も開かない休眠状態のユーザーは全体の半数近くにも上ります。
――これがもし商業用のアプリなら、あってはならないくらいの「使われなさ」ですね。
日影 はい。使ってもらわなければ収益にならないですからね。しかし、COCOAが「実際に使われる」シーンというのは、陽性登録者との「接触」があり、通知が来たときだけといえます。ですから、通知がないに越したことはないんです。COCOAは「使ってもらうこと」ではなく、「持ってもらうこと」に価値がある、他の商業的なアプリとはまったく異なるコンセプトのアプリです。そのため、利用動向なども、他のアプリとはまったく異なる傾向が見られますね。
(※取材後、COCOAのアンドロイド版は不具合で2020年9月末以降、ユーザーに通知が届いていないことが判明、田村憲久厚生労働大臣が謝罪した。修正の改善は2021年2月を予定しており、利用状況の変化が注目される)
動画アプリより漫画アプリの利用者が多い理由
――COCOA以外で、2020年に伸びたアプリはありますか?
日影 巣ごもり生活が続いたため、やはり「動画アプリ」「漫画アプリ」は強かったですね。どちらも以前から定番アプリではありましたが、2020年はもう一段加速した感があります。一方、著名なゲームタイトルは、これらに比べるとユーザー数が伸びませんでした。もっとも、動画アプリや漫画アプリは多くの作品を扱うプラットフォームであり、「ひとつのゲーム」との単純な比較は難しいですが。
図2は主要動画アプリ、図3は一部漫画アプリの週間利用ユーザー数の推移です。いずれも4~5月の緊急事態宣言下で上昇傾向にあり、特に動画アプリはその後も伸びていますね。「Amazonプライム・ビデオ」は4、5月に子ども向け番組などを無料配信したため、その時期が特に伸びています。また、「TVer」の7月の伸びは『半沢直樹』(TBS系)効果ですね。
なお、実数はお伝えできないのですが、グラフにおける漫画アプリの「上限の人数」は動画アプリの2倍になります。
――漫画アプリのユーザー数は動画アプリより多いのですね。なぜなのでしょう?
日影 いくつかの理由が考えられます。まずは価格ですね。Amazonプライム・ビデオと「Netflix」は有料サービスですし、TVerは無料で見られますが、配信されているのが第1話や最新話だけなど、制限があるケースが多いです。一方、漫画アプリは有料で配信されている作品もありますが、過去の作品だと全話無料で読めたりするものも少なくありません。また、動画は一定時間拘束されてしまうので、見るためのハードルが漫画より高い、というのもあるでしょう。
――かつて漫画の配信サービスというと、聞いたことのないとても昔の作品しか無料で読めないような状況でしたが、最近の漫画アプリを見ると、数年前に連載が終了した話題作や、『進撃の巨人』のような現役の人気作も単行本発売に合わせて既刊が電子で読めたりするなど、ずいぶんサービスが進化しましたよね。
日影 「待てば読める」「CMを見れば読める」というサービスも見かけますね。このようなサービスや特典は、動画アプリより漫画アプリの方がずっと手厚いですよね。これも、漫画アプリのユーザーが動画アプリより多い要因のひとつでしょう。また、主要事業者が絞られる動画アプリと比べて、漫画アプリは事業者が非常に多いんですよね。先ほどのグラフで紹介した漫画アプリも、全体のごく一部です。
――漫画雑誌など強いコンテンツを持つ出版社系列のものから、そこでしか読めないオリジナル作品を配信するものまで、さまざまですよね。その群雄割拠の状況が、手厚いサービスにつながっているのかもしれませんね。
後編は引き続き日影氏に、コロナ感染拡大の状況下でも人々の「外出」がとどまっていない現状について、アプリの利用動向から説明してもらう。
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