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楽天、格付会社が投機的水準に引き下げ…携帯事業で財務悪化懸念、中国リスクを米国が注視

文=編集部
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楽天の三木谷浩史社長(撮影=編集部)

 政府は2021年版の通商白書で、新型コロナウイルス感染拡大を受け、ワクチンなど医薬品の輸出を制限する国が4月時点で54カ国に上ったことを明らかにした。医薬品以外でも自国産業の保護策をとる国が増えているとして、保護主義が「常態化する恐れ」があるとの懸念を表明した。

 白書は経済分野における米国と中国の覇権争いを背景に、各国が半導体や電池といった重要物資の供給体制の整備に動き、「各国・地域で経済安全保障の強化が対外政策上も重要視されている」と指摘。中国による重要技術の国産化の動きや米政府による通信機器の調達制限、欧州による電池や半導体の調達先の多様化などを例示した。

 そのうえで日本も半導体をはじめとする重要物資の確保に向けて生産拠点の多様化に加え、「(欧米など)有志国との『信頼』を軸としたグローバルサプライチェーンの構築が重要だ」と強調した。

 サプライチェーンをめぐり、強制労働や児童労働などの人権侵害に対する問題意識が高まっているとして、各国の規制強化に適合するよう求めた。一方で「法令順守を超えた過度の萎縮は不要」とし、事業機会を失わないよう、欧米の競合他社を参考にした「したたかな対応を行うべき」とした。

技術流出防止へ新戦略

 政府は科学技術政策をまとめた「統合イノベーション戦略」を決定した。半導体や人工知能(AI)などの先端技術の海外流出を防ぐため経済安全保障の推進に重点を置いた。中国などを念頭にサイバー攻撃の脅威に対処すると明記した。

 量子技術やAIなどの先端分野は米国と中国を軸に覇権争いが激化している。中国は豊富な資金をテコに海外から研究者を集める「千人計画」を進め、その結果、各国からの技術流出の懸念がある。米国は「人」を介した中国への技術流出に神経を尖らせる。

 技術流出に関する最近の事例を列挙してみる。

・2017年:災害対策用ヘリコプターに搭載された軍事転用可能な赤外線カメラを中国人留学生が日本から不正に輸出した。

・2018年:豪州内で中国人民解放軍から派遣された科学者17人が、その所属を隠して大学で共同研究を行い、軍事転用目的で先端技術を中国に持ち帰っていた。その人数は、この10年間で2500人以上に上っていた。

・2020年:米ハーバード大学の化学研究部門でトップを務めるチャールズ・リーバー教授が、中国政府の人材派遣計画に協力していたことを隠して米政府から補助金を受け取っていたとして、虚偽陳述の罪で起訴された。

 ノーベル化学賞候補の有名な化学者であるリーバー教授は、2011年から武漢理工大学の戦略科学者になり、のちに「千人計画」に参加した。武漢理工大学は「千人計画」に基づき教授に月5万ドル(約550万円)の報酬や、年間で15万8000ドル(約1700万円)の生活費を支払った。見返りに大学の名前で論文を発表することを求めた。

 米司法省は企業や大学の研究成果や人材を盗む中国の動きを徹底的に取り締まっている。特に「千人計画」は「外国から情報を盗んだ人材に中国が賞金を払っている」と断じており、同計画に関わる研究者への警戒を強めている。

「『千人計画』に、少なくとも44人の日本人研究者が関与している」と読売新聞オンライン(2021年1月1日付)が報じた。「千人計画」に参加した理由について、多額の研究費などが保証され、研究環境が日本より魅力的だとする研究者が少なくなかったという。日本政府は中国を念頭に、経済安全保障の推進に重点を置いた「統合イノベーション戦略」を打ち出した。

楽天Gが米国の虎の尾を踏んだ経済安保

 バイデン米政権は安全保障や経済環境をめぐって対立する中国を警戒し、安全保障上重要な製品のサプライチェーンの「脱中国依存」を目指している。4月16日に行われた日米首脳会談で日本から一定の協力を取り付けた。

 日米首脳会談の4日後の4月20日、共同通信が「日米、楽天を共同監視、中国への情報流出を警戒」と報じた。中国IT大手テンセントの子会社が3月に楽天グループの大株主となり、楽天の日米の顧客情報がテンセントを通じて中国当局に筒抜けになる事態を警戒したわけだ。日本政府が外為法に基づいて楽天から定期的に聞き取り調査を行い、米当局と情報を共有。中国への情報流出のリスクに、日米が連携して対処するという報道だった。

 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「基本的にはエクイティ(株式)出資。取締役の派遣もない。テンセントは米テスラなどにも投資している。なんでそんなに大騒ぎするのか、まったく意味がわからない」と共同通信の報道に反論したが、「EV(電気自動車)の会社と情報通信会社は本質的に違う。インフラを扱っているという社会的責任が理解できていない」(政府関係者)との指摘もある。

国家対企業の対立の図式

 7月26日、米格付会社S&Pグローバル・レーティングが楽天Gの長期発行体格付けを投機的水準に1段階引き下げた。具体的には「トリプルBマイナス」から「ダブルBプラス」になった。新規参入した携帯電話事業の基地局設置など先行投資が重荷で、改めて財務基盤の悪化が懸念された。

 もう一つ、市場が懸念しているのは中国リスク。資本提携しているテンセントが中国当局から買収などの案件を差し止められるなどしている。「中国当局によるネット企業の取り締まり強化で、楽天Gの業績にも悪影響が出るのではないか」(外資系証券会社アナリスト)との指摘がある。

 中国の習近平政権の資本主義への反動を「赤い衝撃」と表現したアナリストもいる。上海総合指数や香港ハンセン指数が7月末にかけて急落した。株式への政治からの逆風は当面、続くとみられ、「経済安保」という視点が重要になってくる。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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