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大塚家具を倒産させかけた大塚久美子氏、コンサルティング会社代表に“転身”の不可解

文=編集部
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大塚家具本社(「Wikipedia」より)

 大塚家具の創業者である大塚勝久氏が率いる匠大塚は7月22日、東武百貨店池袋本店(東京・豊島区)に進出した。5階の紳士服フロアに1200平方メートルの売り場を設け、ソファ、ベッド、ダイニングテーブル、絨毯、カーテンなど国内外の高級家具・インテリアを1000点以上揃えた。

 勝久氏は2015年に勃発した長女・久美子氏との大塚家具の経営主導権争いに敗れたのを機に、創業の地である埼玉県春日部市に匠大塚を設立した。資本金は3000万円。勝久氏が会長、社長は長男の勝之氏である。

 20年7月に東急百貨店吉祥寺店(東京・武蔵野市)、21年4月に東急百貨店本店(東京・渋谷区)、5月には金沢の大和香林坊店に相次いで出店した。東武百貨店池袋本店への出店で、わずか1年の間に4店目となった。百貨店の店舗は400平方メートル以下の小型店ばかりだったが、東武池袋店は初の大型店だ。

 東武百貨店池袋本店はこれまで催事で何度か匠大塚と組んできた。執行役員の川村徹・賃貸事業部部長は「催事での反響が大きかった。常設の大型店をつくり百貨店にお客さまを呼び込みたい」と意気込む。紳士服売り場のある階に誘致する力の入れようだ。

 勝久会長は「百貨店は前の会社(大塚家具)と共通するお客さまが多い」と解説する。家具・インテリア売り場を自前で運営できる百貨店が少なくなっており、高級家具の商品企画から販売までやれる匠大塚は魅力的に映るのかもしれない。

 勝之社長は「全国の百貨店から声がかかっている。社内の体制が十分でないため、すぐに出店拡大とはいかないが、念願の大型店である池袋東武で実績をつくり、今後につなげたい」と抱負を語った。東武百貨店池袋本店の6階にはニトリも入っている。勝久氏は高級家具路線を守っている限り、低価格路線のニトリとは競合しないと分析している。

 勝久氏が率いていた頃の大塚家具は、1990年代後半に百貨店への出店で名を上げた。起点が三越新宿店(東京・新宿区)。三越横浜店(神奈川・横浜市)、多摩そごう店(東京・多摩市)などに戦線を拡大した。大塚家具は卸を通さず、国内外のメーカーから直接仕入れる手法を駆使して高級家具を割安にした、家具業界の革命児だった。

 しかし、三越は伊勢丹と経営統合、経営破綻したそごうは西武の軍門に降った。大塚家具と三越、そごうの蜜月関係は終わった。勝久氏は大塚家具の社長時代のインタビュ-でこう語っている。

<不景気のときこそ、成長できる。うちは、不景気になって撤退した業種の跡や地域に出店することが多いんですよ。七七、七八年ごろはボウリング場、その後は駅前の大手量販店、バブル崩壊後はウォーターフロント、それで現在は百貨店という具合です。敷金、保証金は安くて済みます。好景気なら広いスペースもとれず、豊富な品ぞろえでお客さんを引きつけることもできなかったでしょう>(2001年8月14日付「日経MJ」記事より)

 百貨店不況はインバウンド需要が一息ついた感があったが、新型コロナの感染拡大で、さらに深刻な危機的状況に陥った。百貨店の売り場スペースは今後も空きが増える。ここに、匠大塚が得意とする中・高級品の家具を取り込めるなら、売り場構成上もプラスと、百貨店側は判断したのだろう。

 もう一つの側面がある。国内の家具メーカーが匠大塚を盛り立てている点だ。東武池袋本店には国内外の170社以上のメーカーから選んだ高級家具を並べた。国内の家具・インテリアの小売業界は、スウェーデン発祥の世界最大の家具量販店イケアとニトリの2強時代だ。ニトリは家具業界で珍しいSPA(製造小売業)で、商品を海外から調達している。国内の家具メーカーにとってイケアとニトリは競争相手、ライバルなのだ。かつての家具業界の王者、勝久氏の匠大塚ならバックアップのしがいがあるとの打算があるのも事実だ。

ヤマダの完全子会社になった大塚家具は再び高級路線へ回帰

 大塚家具は7月29日、東京都内で株主総会を開き、ヤマダホールディングス(HD)の完全子会社になることを決めた。8月30日にジャスダック上場を廃止する。親娘喧嘩に勝ち、経営権を握った久美子氏は中価格帯の家具に軸足を移し、ニトリやイケアと勝負する路線に変更した。勝久氏は「ニトリやイケアを意識しすぎたら間違える」と危惧していたが、高級路線の否定が裏目に出た。

 業績は低迷。19年12月、ヤマダHDの傘下に入ってからも上向かず、久美子氏は経営責任を取って20年12月に辞任した。ヤマダHDの完全子会社となった大塚家具は家電などと組み合わせ、中・高価格帯の家具販売を強化する方針だ。大塚家具の店舗はヤマダが売っている高級家電とセットにした展示販売を積極的に行っている。

 株主総会で三嶋恒夫会長兼社長(ヤマダHD社長)は「大塚家具というブランドを守らないといけない」と強調し、再び高級路線に戻る姿勢を明確にした。一部で取沙汰されているヤマダカグ(家具)への社名変更を否定した。勝久氏は「高価格と低価格という両方の路線はできない。どちらかを選ぶしかないのだ」と述べ、久美子氏の大衆化路線には無理があったことを示唆した。

 久美子氏は社長退任後、コンサルティング会社代表に転身した。大塚家具という有名ブランドを、事実上潰してしまった久美子氏にコンサルティングを依頼する経営者が、はたしているのだろうか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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