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【解説】社員24万人・パナソニック、経営体制を全面刷新へ…新役員人事&経営戦略の内幕

文=編集部
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「パナソニック HP」より

 パナソニックは2022年4月の持ち株会社移行を見据え、21年10月に変更するグループ体制の役員人事を発表した。楠見雄規社長が率いるパナソニックホールディングス(HD)傘下に、8つの事業会社がぶら下がる。白物家電や電設事業、成長が著しい中国事業などを統合して新パナソニックとして独立する「くらし事業本部」の最高経営責任者(CEO)には家電部門を担う社内カンパニー、アプライアンス(AP)社社長の品田正弘専務執行役員が就く。新パナソニックの売上高は8事業会社のなかでもっとも大きく、4兆円規模が見込まれる。

 新パナソニックと共に中心事業と位置付けられている3事業の舵取り役も決まった。企業向けシステム事業のCEOには現コネクティッドソリューションズ社社長の樋口泰行氏が就任する。樋口氏は日本マイクロソフト社長などを経てパナソニックに戻った。買収する米ソフトウェア大手、ブルーヨンダーとの連携も樋口氏が指揮する。

 電子部品事業のCEOに就くのは現インダストリアルソリューションズ(IS)社社長の坂本真治氏。電子部品事業の売上高営業利益率は20年度の時点で5%と低かった。坂本氏は「22年度に10%を目指したい」と意気込む。

 電池事業のCEOにはIS社副社長の只信一生氏が就任する。電気自動車大手、米テスラへのバッテリーの供給はここが担う。テスラ向けの米電池工場「ギガファクトリーI」に投資をしており、テスラ向けビジネスできちんと利益を上げるのが課題だ。片山栄一氏はCSO(最高戦略責任者)から外れ、楠見社長がCEOとCSOを兼務する。これが22年4月に持ち株会社へ移行した後の経営体制の基本形となる。

【パナソニックの新体制】(21年10月1日付)

氏名         新担当

社長執行役員

楠見雄規      グループCEO(最高経営責任者)、同CSO(最高戦略責任者)

副社長執行役員

佐藤基嗣      グループCRO(最高リスク管理責任者)

本間哲朗      中国・北東アジア総代表

専務執行役員

宮部義幸      東京代表

柴田雅久      オートモーティブ営業担当(車載機器事業) 

樋口泰行      コネクティッドソリューションズ社CEO(企業向けシステム事業)

坂本真治      インダストリー社CEO(電子部品事業)

梅田博和      グループCFO(最高財務責任者)

品田正弘      くらし事業本部長CEO(白物家電や電設資材事業など)

常務執行役員

ローレンス・ベイツ グループGC(最高法務責任者)

道浦正治      くらし事業本部副本部長(建設業・安全管理担当)

片山栄一      くらし事業本部副本部長(スポーツマネジメント事業担当)

松岡陽子      くらしソリューション事業本部長

永易正吏      オートモーティブ社CEO

新パナのトップ、品田氏のミッション

 品田氏とはどんな人物か。19年4月の役員人事で“ポスト津賀”を選ぶ最終レースの号砲が鳴った。津賀社長は続投する一方、カンパニーのトップに複数の50代の役員を昇格させた。いずれも次期社長候補とみられた人々だ。

 家電の社内カンパニー、AP社は品田氏が社長に就いた。品田氏は住宅関連のエコソリューションズ(ES)社で赤字続きの太陽電池事業を担当した。米テスラと太陽電池工場を米国で共同運営する。テスラに独占供給する方針を転換し、収益確保の道筋をつけた。「人心掌握に長けたリーダー」と評された。

 新設のオートモーティブ社(車載機器)は楠見氏が社長になった。津賀氏も、かつて所属した研究所出身の技術者。歴代社長を輩出したAV(音響・映像)機器部門に在籍し、18年1月から車載電池の事業部長を務めていた。「論理的な切れ者」で通っていた。

 AP社長の本間哲朗氏は、新設の「中国・北東アジア社」の社長となった。津賀社長が「中国で勝たなければ将来はない」という重点分野で家電や住宅などの強化が必要だった。台湾に留学した経験があり中国語が堪能。経営企画部で津賀社長の改革を支えた。「ソフトな人格者」とされ、早くからポスト津賀の有力候補とされてきた。この時点で車載の楠見、中国の本間、家電の品田の3人に絞られたとみられていた。

 車載事業を黒字に導いた楠見氏が結果的に社長の座を射止めた。21年4月1日付でCEOとなった楠見氏は6月24日の株主総会を経て代表取締役社長に就任。名実共に「楠見新体制」が本格始動した。約24万人の社員を擁しながら長期停滞から脱け出せない巨船、パナソニックを成長路線に回帰させることが、強く求められている。

 今回、楠見氏はライバルだった品田氏に最大事業会社のトップを任せる決断をした。連結売上高の過半を占める新パナソニックを成長させるには、家電と電設事業の融合という長年の宿題をやりとげる必要がある。

 品田氏は入社以来、テレビや家電にかかわる部門を長らく歩んできた。17年、初めて土地勘のない事業を任され、旧松下電工を源流とする電設事業を担うエコソリューションズ社(現ライフソリューションズ)の副社長となった。

 旧松下電器と旧松下電工との融和が喫緊のテーマである。パナソニックは11年に4000億円を投じてパナソニック電工(旧松下電工)を完全子会社にしたが、長年のライバル意識が抜けず、連携の実が上がっていなかった。新体制では別々の社内カンパニーだった家電と電設を新パナソニックでひとつに括る。

 このほか中国や台湾の家電事業を担う中国・北東アジア社など複数の社内カンパニーが新パナソニックに集約される。品田氏が融和に向けて陣頭指揮を執るが、独立独歩でやってきた各事業をまとめるのは容易ではない。楠見・新体制が十全に機能するかどうかは各トップ(CEO)の手腕にかかっている。

(文=編集部)

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