
「家庭教師のトライ」を展開するトライグループ(東京・千代田区、非上場)を、英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが買収する。買収額は1100億円。新型コロナウイルスの感染拡大下でオンライン教育が浸透するなか、トライは人工知能(AI)関連の投資を増やし競争力を高め、3~4年後の株式上場を目指す。
月内にも買収契約を結ぶ。CVCは買収のためにSPC(特別目的会社)を設立し、創業者の平田修会長や二谷友里恵社長からトライ株を全株取得する。その後、平田会長と二谷社長は売却で得た資金を活用してSPCに再投資することで経営に関与する。
二谷友里恵さんは元女優。俳優の故・二谷英明氏と女優の故・白川由美さん夫妻の一人娘。高校生の時に芸能界にデビュー。87年、慶應義塾大学文学部国文学専攻卒業、歌手の郷ひろみさんと結婚、話題を集めた。結婚と同時に女優業を引退。2女をもうける。1998年、郷さんと離婚。2000年、トライグルーブの創業者・平田修氏と再婚。2005年、トライグループの社長に就任した。
平田修氏は立教大学経済学部卒。個人で塾を経営していたが、1987年1月、富山大学の学生向けに家庭教師教育サークル「富山大学トライ」を設立し、家庭教師の派遣事業を始めた。これがのちに「家庭教師のトライ」となる。
トライは現在、家庭教師の派遣のほか、個別指導塾を展開し、全国に1100カ所の拠点を持つ。社員はグループ全体で1273名、登録している教師・講師の数は約22万人。トライグループ(登記上本店は大阪市中央区)の20年5月期の決算公告(単体)によると、資本金は5000万円、当期純利益は3億6097万円、利益剰余金は101億2358万円。株主資本(103億2263万円)が総資産(200億269万円)の51.5%を占める超優良会社である。
損益計算書は開示されていないが、日本経済新聞の報道によると、「21年5月期の売上高は約500億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は80億円強」だという。稼ぐ力に対して買収額1100億円は13倍を超える。買収予定額1100億円と、上場している教育サービス・学習塾の時価総額(10月12日終値時点)を比較してみると、その凄さがわかる。
通信講座「進研ゼミ」のほか介護事業等を運営するベネッセホールディングス(2585億円)の次に位置する。高校生向け受験塾「東進ハイスクール」のナガセ(550億円)の2倍である。資本金5000万円のトライの株主構成は非公開だが、「平田・二谷夫妻が大半の株式を所有しているとみられる。会社を1100億円で売却すると、超がつく大富豪になる」(関係者)。