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東京ガスの見事なトラブル対応に見る企業SNS活用術…炎上しないための2つのカギ

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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「gettyimages」より

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 規模感に関係なく、どの企業でも公式ホームページを持つことが当たり前になりましたが、その一歩先を行く企業はツイッターやインスタグラムといったSNSの運用にも力を入れています。SNSはフォロワー(企業やお店のファン)にいち早くオフィシャルの情報を届けられる役割を持ち、社内に専門チームを設けている企業もあるくらいです。

 解説本も多数出版されているので、ご存じの方も多いと思いますが、SNSは便利な半面、使い方をひとつ間違えれば一気に炎上してしまい、大きなダメージを受けてしまうこともあります。また、自分たちは健全に運営していたとしても、一般ユーザーのマイナスなつぶやきから火がつくことも……。

 特に個人店などの規模が小さい会社は、最悪の場合は炎上がきっかけで休業に追い込まれることも考えられるので、SNSと現実世界がつながっていることを理解した上で運営しないといけません。

 わかっているようで意外と奥が深いSNS。今回は、ブランディングにも影響を与えるSNSの運用ポイントをご説明しましょう。

企業のSNSが本当に発信すべき情報とは

 その特性上、SNSを「一方的に情報を発信するツール」と捉え、活用している人がまだまだ多い気がします。新商品の発売、定休日のお知らせといったPRやインフォメーションの投稿に終始している企業が多いのは、そのせいでしょう。

 もちろん、それらも消費者の購買意欲をくすぐったり、日々の営業に直結したりする大切な情報です。ただ、重要度は高いのですが、それらの投稿だけがSNSの使い道でしょうか?

 企業のコンサルタントをするとき、私は必ず、「その企業の良さやポリシーを公表して、お客様の共感を得ることが、ブランディングではとても重要だ」とお伝えします。ブランディングでは、「企業理念や経営方針を確立すること」が重要ですが、それらは消費者に伝わり、共感を得てこそ、意味をなします。

 言い方を変えると、その企業の良さやポリシーや理念は、きちんとお客様にも伝えないと意味がないのです。周知されて初めてブランディング力向上へのスタートが切れるといっても、過言ではありません。

 その一端を担うのがSNSです。ここで、「うちの会社は、ポリシーも理念もホームページに書いてあるから安心だ」と思った方は、注意が必要です。なぜなら、さまざまな情報があふれている今、理念やポリシーを単に記載するだけでは目に留まりにくく、仮に目に留まっても主張が一方的で、十分な共感を得られていないケースがほとんどだからです。

 今の時代、ブランディングで企業の認知度や共感度をアップするために、SNSを使った施策は、とても有効です。にも関わらず、実際にはPRやインフォメーションの場としてしか使っていないケースが多く、根本にあるポリシーや理念を伝える機会を活かせていないのが現状なのです。

 また、ポリシーや理念と同様に伝えたいのが、「アテンション」と「エクスキューズ」です。これらは会社と消費者の理解度を深めるに必要不可欠な情報で、これらがない場合はクレームや炎上に発展する可能性が高くなるといえます。

アテンションとエクスキューズの重要性

 たとえば、大切な人の誕生日プレゼントに、店頭では売り切れていて、予約しないと手に入らない物を選んだとしましょう。そして、注文したのはいいけれど、なかなか商品が届かなかったとします。このとき、注文した商品が人気のために生産が追いつかず、発送が数カ月先になることが事前にわかっていれば、そういったものだと理解して、商品の到着を待つことができます。

 しかし、そうした事情を知らない場合、「いつまで待っても商品が届かない」とクレームに発展してしまう可能性があります。こういったケースをなくすためにも、アテンションとエクスキューズを共有することは、とても重要なのです。そして、これらの重要な情報を、SNSを使って広く届けなければならないのです。

見事だった東京ガスのトラブル対応

 最近、SNSでアテンションとエクスキューズを上手に発信して、話題になったのが「東京ガス」です。8月下旬、東京都新宿区および文京区の一部地域で、都市ガスの供給支障が発生しました。前代未聞のトラブルだったので、まだ記憶に新しい人も多いことでしょう。

 このとき、東京ガスは公式ツイッターで、開栓工事の様子、復旧の進行具合、対象エリアの住人に用意したカセットコンロの貸し出しやレトルト食品の配布について、開栓作業時に不在だった家庭への対応についてなど、さまざまなアテンションとエクスキューズを発信しました。

 地道な情報発信等の企業努力の結果、その姿勢への共感や理解が深まり、真夏日に太陽の下で作業を続ける作業員たちへ、栄養ドリンクなどの飲料水、汗拭きシート、お菓子、扇風機の貸し出しなどの差し入れが続々と集まりました。もちろん、東京ガスはツイッターでお礼の投稿もしています。

 対象エリアの住人はもちろん、ツイッターで動向を追っていた人々は、東京ガスへの安心感や信頼感が高まり、ひいてはブランディングの向上にも貢献したのではないでしょうか。

 SNSは、間違った使い方をすると炎上する可能性がある半面、正しい使い方をすればブランディング力のアップにつながります。今回ご紹介した東京ガスのように、SNSを上手に使う企業が増えることを願っています。

(松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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