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ニトリの島忠買収が“成功確実”な理由とは?鍵は「ブランド存続」と「ロマンの共有」

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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ニトリ本店(「Wikipedia」より)

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 前回は「事業再構築補助金」で、この厳しい局面を乗り越えようとする多くの企業のために、申請用の事業計画書のブラッシュアップをする際のヒントをお伝えしました。

 今回は、コロナ禍を乗り越える策として活性化しているM&A(企業の合併・買収)についてお伝えしたいと思います。もし、現在M&Aを検討されている場合は、そのM&Aがアリかナシかを見極める判断材料にしてみてください。

M&Aが成功する2つのポイント

 ご存知の通り、日本経済の成長とM&Aは切っても切り離せない関係です。近年の事例ですぐに思い浮かぶのは、アサヒグループホールディングスの豪ビール大手(カールトン&ユナイテッドブリュワリーズ)の買収、ソフトバンクのヤフー(Zホールディングス)子会社化といった大規模なものでしょう。

 また、ヤマダ電機による大塚家具の子会社化、コロワイドの大戸屋ホールディングス買収なども大きな注目を浴びました。今後の動向を見守っている人も多いと思います。

 それぞれがうまくいっているかどうかは外からはわかりませんが、M&Aを成功させるのに重要なポイントが2つあります。それは、「同じ理念を持つ」ことと「ソフト面にはメスを入れすぎない」ことです。

 基本的に、M&Aの主な目的は、事業拡大、新規事業への進出、ノウハウの取得です。救済目的の場合もありますが、いずれのケースでも「同じ理念を持つ」ことは外せません。数字的なデータや事業内容は、その次と言っても過言ではないでしょう。

 M&Aとは、例えるなら「結婚」です。いくら容姿がよくて、有名大学を卒業していて、大企業に勤めている相手だとしても、生活スタイル、趣味、金銭感覚といった他の部分がかみ合わなければ、長い人生を一緒に過ごそうとは思えませんよね。「スペックが一番!」という人もいるかもしれませんが、数年後に我慢の限界がきて離婚してしまうかもしれません。

 これを企業に置き換えてみましょう。業績など数字の部分のデータで利害が一致してM&Aをしたとします。しかし、同じ理念を持っておらず、一方は顧客ニーズを重視した物づくりをしていて、もう一方は斬新なアイデアを入れ込んだ商品開発に力を入れている。この場合、うまくいくとは思えませんよね。ただ、このミスマッチは単純に育んできたものや目標が違っているからであり、どちらが悪いというものではありません。

 では、大まかではありますが、「顧客の食生活を充実させる」という同じ理念を持っていたらどうでしょうか。前述のようにやり方が違ってもゴールは同じなので、共生できるはずです。むしろ、違う層をターゲットにして、シェア拡大を図れるのではないでしょうか。

 このときに大切なのが、「ソフト面にはメスを入れすぎない」ことです。それぞれが育んできたものや経営の仕方が違うので、かみ合わない部分があるのは当然です。それを無理やり融合させると、どこかに亀裂が走ることになりかねません。

 つまり、M&Aをするときは、「ソフト面をどのくらい残すのか」が重要だということです。社員の雇用を守り、ポジションは据え置き、というのはもちろん、その会社が育んできた文化や価値観に付随するものも踏襲するのが望ましいでしょう。

 M&Aは企業同士の結婚です。長く付き合っていくためには、お互いが納得したやり方で、共に手を取って前進すること。それを可能にする環境づくりが一番だと言えるでしょう。

ニトリの島忠買収は成功する可能性が高い

 前述した2つのポイントを踏まえた上で、私が個人的に成功する可能性が高いと思っている事例をご紹介しましょう。それは、ニトリホールディングスと島忠のM&Aです。

 ニトリと島忠は、ともに家具店が原点です。島忠は、職人気質を持ちながら商売の心得を身につけようと進化した会社です。家具インテリアとホームセンターを軸にして、「住まいのことならなんでもそろう総合センター」を目指してきました。一方のニトリは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」ことを掲げて、「安さ」にこだわって進化してきた会社です。傘下に入った島忠は柔軟に対応して、ニトリのロマンを共有することにしました。

 このM&Aで外せないのが、島忠がニトリのブランドとして存続するという点です。それぞれのやり方を残し、お互いの強みを活用しながら、同じロマンを実現しようというのです。島忠はニトリの子会社になりましたが、言ってみれば「優秀な自走ブランド」となったのです。

 また、それぞれの公式サイトでロマンを共有して、共に目標に向かって歩んでいくことを公表しています。ロマンから生み出したビジョンへのアプローチは違うでしょうが、このくらいお互いを尊重し合う方が“結婚生活”を長く続けることができるでしょう。

 次回は、私が惜しいと思ったM&Aの事例を改善案と共に紹介します。

(松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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