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ドトールの“コワーキングスペース化”は成功するか?事業転換で生き残る企業のポイント

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
ドトールのコワーキングスペース化は成功するか?事業転換で生き残る企業のポイントの画像1
ドトールの店舗(「Wikipedia」より)

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて生まれた「事業再構築補助金」。今月に入って、2回目の締め切りが終わりました。1回目の採択結果は緊急事態宣言特別枠で約55%でしたが、通常枠は約30%。全体でも約36%とやや低めだったので、2回目の申請をした企業はハラハラしながら採択結果を待っていることでしょう。

 事業再構築補助金の申請には事業計画書の提出が必須で、申請条件が厳格なのは経営者の本気度を測っているからだと考えられます。採択された事業者は、そうしたハードルを超えたということなので、自信を持って事業の再構築に突き進んでいただきたいと思います。

 採択されなかった事業者も、あまり落ち込まないでください。作成した事業計画書や申請に費やした時間は、決して無駄ではありません。ただ、国が承認するには少し不安な点があっただけ。そう気持ちを切り替えて、計画をブラッシュアップして、今月末頃に設定されている3回目の申請に挑んでみてはいかがでしょうか?

 今回は、事業計画書のブラッシュアップに役立つような、過去に事業転換をして成功した企業の例をお伝えします。

素早いマスク参入で成功したシャープ

 まず事業転換の好例としてご紹介したいのは、昨年のマスク不足を受けて、いち早く動いたシャープです。「なんで電機メーカーがマスクをつくるんだろう?」と驚いた人も多かったと思いますが、実はこれは「できて当たり前」の動きでした。

 シャープはもともとテレビなどに使われる液晶パネルなどの精密機器をつくっていたので、工場ではクリーンルーム管理が徹底されています。そのため、生産現場に衛生面の心配がなく、自分たちが持っている技術をマスクづくりに活かしやすい環境にありました。そのため、コロナという緊急事態にも臨機応変に対応できたのでしょう。

 一方、見方を変えると、これは「マスク不足」という不測の事態を逆手に取った戦略ともいえます。その時々の状況を見て「どうすれば自分たちの能力を活かせるか?」と考えるのは、いわば“マーケティング脳”の思考法です。今回は成功しましたが、この考え方は時として諸刃の剣となる可能性もあるので、注意が必要でしょう。

朝営業で人気を集めた高級レストラン

 続いては、ぜひ参考にしてほしい事例をご紹介します。

 以前の記事でもご紹介しましたが、サービス業のブランディングで大切なのは「体験」「接客」などのサービス部分を軸にすることです。対面が難しくなった今、肝となるのが「体験」です。

 ある高級レストランは、コロナを機に朝営業をスタートしました。新たに朝食向けのコース料理をつくり、一時は予約が取れないほどの人気となりました。また、独自のレシピをSNSで公開したら、それが出版社の目に留まり、レシピ本を出版することになりました。これらの思い切った決断は、仮に思いついたとしても、なかなか実行できないものです。

 おそらく、このお店のオーナーは、飲食店の使命は「味の感動を広げていくこと」にあり、それがお客様に与えられる価値なのだと思っていたのでしょう。そして、味の感動を広げるためには、まずはお店の味を知ってもらうことが大切です。

 3密の回避や時短営業によって減ってしまった来店客数を、どうやってカバーしたらいいか? 自宅でレストランのような本格的な料理を楽しみたい人たちのために、何ができるのか? そういったことを考えた末の英断だったのではないかと思います。

 苦戦を強いられながらも工夫しているのは、飲食店だけではありません。アパレルでは、「niko and …」「GLOBAL WORK」などのブランドを持つADASTRIA(アダストリア)がおもしろい取り組みをしています。ショップのスタッフが自分たちのコーディネートをSNSで紹介したり、YouTubeチャンネルではブランドイメージに合ったタレントを起用して、着まわし術などを紹介しているのです。

 単なる「商品の紹介」ではなく、それぞれの「商品を使った楽しみ方を提案」しています。消費者としては、登場するスタッフ一人ひとりの洋服に対する愛情が伝わるのはもちろん、好きなスタッフが勤務している店舗に行くことが、後々の楽しみになることでしょう。

 このように、社会の変化に柔軟に対応していきながら、会社やスタッフが持っている強みや価値を違う形で活用することが大切です。そうしたことを念頭に置いて考えれば、事業再構築補助金のための事業計画のブラッシュアップも、難しくはないはずです。

ドトールの“壮大な実験”とは?

 最後に、新たな事業転換例として注目しているドトールコーヒーの取り組みを紹介します。実は今、ドトールコーヒーは壮大な実験中です。

 4月から名古屋市にある店舗をリニューアルし、2階をコワーキングスペースに改装しました。電源・Wi-Fi完備はもちろん、料金設定も良心的。さらに、スタディとビジネスでエリアを分けており、作業環境も整っています。

 リモートワークがメインになり、フリーランスが増加する今、コワーキングに新たな需要拡大の流れがあります。残念ながら、まだ都内に同様の店舗はありませんが、大手カフェチェーンが新たなビジネスモデルに本格的に取り組み始めた動きは、今後も注目に値するでしょう。

(松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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