
みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。
2回目の緊急事態宣言に伴う飲食店への営業時間短縮要請が、大きな話題となっていますね。もともと、日本の飲食業界は料金が安すぎることが問題だったのですが、そこに時短営業という問題も発生したことで、さらなる窮地に追い詰められたお店も少なくないようです。一方、要請に従わないお店もチラホラあるようですが、そうしたくなる気持ちはよくわかります。
飲食店の経営難問題はテレビなどでもよく特集されていて、世間的にも同情の声が上がっています。厳しい状況を打破しようと、新たにオンラインショップを開いたり、朝営業を始めたりする飲食店もありますが、本当に取り組むべきは「単価アップ」だと思います。
しかし、単価を上げれば収益構造は改善しますが、客足がさらに遠のく可能性もあります。馴染み客の来店回数が下がることを恐れて、なかなか踏み出せないというケースも多いでしょう。
そこで今回は、飲食店の2大目標である「リピート率の向上」と「単価アップ」をする前にやっておきたい下準備や、心得ておきたいポイントについてお伝えします。
日本の飲食店が「安すぎる」2つの理由
その前に、なぜ日本の飲食業界は料金が安すぎるのかについて、ご説明します。
まず、海外と日本の飲食店には、「チップ」文化の有無という大きな違いがあります。海外では良いサービスをしてくれた店員にチップを渡すのは当たり前ですが、日本はそうではありません。しかし、過去を振り返ると、一部でチップ制が生きていた時代もありました。
現在放送中の朝ドラ『おちょやん』(NHK)の時代が、まさにそうです。ヒロインの女給としてのお給料はお客さんからのチップで、彼女たちはそれを稼ぐために、お客さん一人ひとりを丁寧にもてなしています。
この頃の日本には、海外と同じようにサービスの対価としてお金を払うという文化がありましたが、いつしか廃れてしまいました。これが、現在のサービス軽視=飲食店の客単価低下につながっているのではないかと考えられます。
そして、もうひとつが「POSレジ」の普及です。POSレジとは、会計時に使うレジのことです。POSレジの登場で、いつ、どんなお客さんが、どの商品を買ったのか、という販売情報が蓄積・分析できるようになりました。これによって、お店側は商品の発注・開発や在庫管理がしやすくなり、人気の商品を大量に仕入れておいて売れるタイミングで販売したり、人気のない商品を値下げして売り出したりして、効率的に収益を上げられるようになりました。
こういった飲食店が登場したことで、お客さんは「高くておいしいもの」よりも「安くておいしいもの」を求める傾向が強くなり、市場全体が自然と「価格競争」をするようになりました。そして、お店側は、客単価を下げた分、多くのお客さんを入れようという発想になり、一人ひとりのお客さんに対するサービスが画一的になってきたのです。