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ブランディングの専門家が語る、コロナに打ち勝つ社員ブランディング(2)

串カツ田中&塚田農場の“社員ブランディング”がスゴい理由…バイトテロとは無縁の教育?

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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串カツ田中の店舗(「Wikipedia」より)

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 前回、会社選びのタブーと、長引くコロナ禍の中で苦戦を強いられながらも健闘している飲食業界の星をいくつかご紹介しました。「給料で会社を選ぶのはよくない」と納得する点もあれば、「顧客サービスを行うことが社員教育にもなっている」といった新しい発見もあったのではないでしょうか?

 後半の今回は、「共創」から一歩進んで、今トレンドの「ジョブ・クラフティング」の概念や、その先の最新社員ブランディング論をご紹介します。

「ジョブ・クラフティング」とは?

 私が「社員ブランディング2.0」と呼んでいる、現在のトレンドにあたるジョブ・クラフティング。どこかで聞いたことがある方も多いでしょう。これは2000年頃にアメリカで提唱された概念で、上司や会社のルールに従うのではなく、社員一人ひとりに主体性を持たせて、仕事にやりがいを見いださせるという方法です。ここから、「やりがいが報酬である」という間違った考え方が派生して、「やりがい搾取」として問題になったこともあります。

 これらのことから、やりがいと報酬は切り離して考える必要があると思いますが、ジョブ・クラフティングが持つ概念そのものは、とても素晴らしいと思います。バリー・シュワルツ著『なぜ働くのか』から、ジョブ・クラフティングを説明するときによく使われる2つの話で、簡単に説明しましょう。

 3人のレンガ職人に、それぞれ「あなたは何をしているのか?」と問いました。すると、1人目は「親方の命令でレンガを積んでいる」と言い、2人目は「レンガを積んで塀をつくっている」と答えました。そして、3人目は「お祈りをしに来るたくさんの人のための大聖堂をつくっている」と言いました。

 もうおわかりだと思いますが、3人目のレンガ職人は、仕事への不満やストレスはなく、やりがいを感じながら仕事に打ち込んでいることが予想されるでしょう。

 次に、「主体性を持って仕事にあたる」ということも説明しましょう。

 ある病院で、掃除係が重篤患者の親族が座る待合室をそのままにして仕事を終わらせました。掃除係が掃除をしないなんて、これはれっきとした業務違反に当たります。しかし、その理由を聞くと、「重篤患者を待つ親族のまわりを掃除することは、病院のホスピタリティに欠ける行為だと判断したからだ」と答えたそうです。

 この掃除係のように、自分で考えて自分の仕事をつくることがジョブ・クラフティングです。このように、社員に主体性を持たせている企業は日本にもあります。代表的なところでは、みなさんも知っている「串カツ田中」「塚田農場」です。

 串カツ田中は、「串カツを日本を代表する食文化にする」ことを掲げ、自社で「串カツ検定」を設けています。会社全体で共有できる明確な理念を持ち、その下で検定を行っている点は、「社員ブランディング2.0」の一歩先を行っていると言えます。

 試験はスタッフ全員が受けることができ、合格すると「串職人」となって、それを示す赤いTシャツを着られるようになります。アルバイトや正社員といった雇用形態にかかわらず、働くスタッフたちが串職人を目指して、日々、自身で創意工夫をしながら仕事をするようになることが想像できますよね? このように、串カツ田中は串カツ検定を行うことでスタッフのモチベーションを上げ、さらに、おいしい串カツの味を守っているのです。

 一方の塚田農場では、スタッフにそれぞれサービス予算が与えられており、お客さんが残したご飯をチャーハンにつくり変えて提供するなどの裁量が与えられています。どのお客さんにどんなサービスをするのかはスタッフ一人ひとりが考えて行うため、自然とお客さん第一の行動を取るようになり、ホスピタリティにあふれた接客ができるようになります。

 ひとつ注意しておきたいのが、「裁量を与える」ということは「好き勝手にしてもいい」ということではありません。この違いが理解できていないと“バイトテロ”などを引き起こすことにもなります。やや捉え方が難しいかもしれませんが、ブランド・社員の成長を図る上で、ジョブ・クラフティングの域に達することは必要不可欠なので、後れを取っていると感じる経営者の方は、ぜひ検討していただきたいです。

「社員ブランディング3.0」の大事なポイント

 ジョブ・クラフティングの一歩先を行く「社員ブランディング3.0」は、「会社と社員の目標や夢がどれだけマッチングしているか」に着目して考えた説で、社員が会社の理念にきちんと賛同できて、目指すビジョンを共有できるのかが大切になります。

 先ほどご紹介したレンガ職人の話にあるように、身近な目標ではなく、世のため・人のためになるような壮大な目標や夢を掲げること。これこそが、会社が持つべき本当の理念です。そして、社員が会社の持っている夢・理念・使命に共感し、これらに人生をどこまでシンクロさせられるのかが、新しい社員ブランディグの肝といえます。

 会社と社員のシンクロ率が高ければ、事業の成功や拡大は社員のやりがいや生きがいへとつながります。会社の成長や社会貢献は、社員の自己実現ともいえます。そういった良好な関係性を持つことができれば、恋人や夫婦のような長い付き合いができるでしょう。

 採用サイトなどでも、今は給料額や福利厚生などのマネー面よりも、こういった理念やビジョンを前面に押し出すのがトレンドになっています。そして、飲食業界でいち早く社員ブランディング3.0の域に踏み込もうとしているのが、前回ご紹介した「鳥貴族」や「串カツ田中」なのです。

 単価を下げすぎている上に、コロナ禍で難局に立たされている飲食業界で社員ブランディング改革を実行するのは、簡単なことではありません。しかし、お客さんから長く愛されるブランドを育てていく上では、無視することはできません。

 いつ終わるかわからない非常事態が続いていますが、この状態を非常時とは思わずに、なおかつ、コロナを乗り越えられるような愛されるブランドになるために、今一度、社員やスタッフと向き合っていただきたいと思います。

(松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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