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昭和電工、世紀の巨額買収、成果乏しく特損も…「のれん代」6千億円の重荷

文=編集部
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「昭和電工 HP」より

 昭和電工は2022年1月4日付で高橋秀仁取締役常務執行役員(59)が社長に昇格する。20年に買収した連結子会社の昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)の社長も兼ねる。森川宏平社長(64)は代表権を持つ会長に就く。社長交代は5年ぶり。「経営トップの一本化と世代交代。昭和電工と昭和電工マテリアルズの統合の加速とグループとしてのスピーディーな経営を推進するため」とした。

 9月22日に開いたオンライン会見で、森川氏は高橋新社長を「グローバル企業で働いた経歴を持ち、論理力と決断力が高く、自社からは出ない人材だ」と高く評価した。高橋氏は「世界大手は優秀な若手を引き上げることに時間を割いている」と述べ、年代ごとに幹部候補を競わせながら人材の育成や登用に力を入れる方針を示した。

 高橋氏は1986年(昭和61年)東京大学経済学部卒、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。日本ゼネラルエレクトリックなど複数の外資系企業を経て、2015年に昭和電工に入社。17年1月、常務執行役員、同年、取締役常務執行役員。20年1月常務執行役員最高戦略責任者(CSO)に就き、9600億円を投じた旧日立化成の買収や、その後の事業整理を進めてきた。

 森川氏は17年1月に社長に就任した。東京大学工学部卒。昭和電工に入社以来、執行役員になるまで一貫して化学品の研究開発畑を歩んできた。20年ぶりの技術系社長だった。

日立化成を9600億円で買収

 日立化成へのTOB(株式公開買い付け)が成立し、20年4月28日付で連結子会社にした。日立グループの「御三家」の一つだった日立化成を昭和電工がM&A(買収・合併)したことになる。

 買収総額は素材分野のM&Aとして破格の約9600億円。昭和電工の時価総額(約3300億円)の3倍だったため「小が大をのむ買収」といわれた。日立化成の買収のために設立した特別目的会社、HCHDに、みずほ銀行がノンリコースローンで4000億円を融資。さらに同行と日本政策投資銀行が優先株を取得することで2750億円を出資した。買収主体となる昭和電工は、HCHDに普通株で2950億円出資。昭和電工の2019年12月期連結決算の営業利益1207億円の2.4倍にあたる巨額の出資だった。

 日立化成の買収によるのれん代の償却負担が重くのしかかる。のれん代(買収額と買収先の純資産の差額)、無形固定資産、持ち分投資の合計は6259億円(20年12月期時点)に達した。償却期間は最大20年間だから、年換算で313億円の償却負担となる。

 昭和電工は「3年後に年間200億円以上のコスト削減効果を見込める」(森川社長)としてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で業績への悪影響は不可避となった。猛烈な逆風下での買収となったわけだ。

 昭和電工が20年12月に公表した長期ビジョンで2000億円相当の事業の売却の方針を打ち出した。今年1月末にはアルミニウムの2事業(アルミ缶、高純度箔)を米投資ファンド、アポロ・グローバル・マネジメントに500億円で売却した。

 連結上場子会社である化学商社の昭光通商の株式を、丸紅系投資ファンドに譲渡した。昭光通商株式の44%を所有していたが、丸紅系のアイ・シグマ・キャピタルが運営するファンドのTOB(株式公開買い付け)に29%分を応募。15%を残すことで昭光通商との取引を継続する。

半導体への投資を拡大

 昭和電工マテリアルズの売り上げ、利益を20年第3四半期(7月~9月)の期首から取り込んだ。21年12月期は年間を通して寄与する。21年12月期の売上高は20年12月期比43.8%増の1兆4000億円。従来予想を550億円上方修正した。営業利益は850億円の黒字(前期は194億円の赤字)。170億円増やした。ナフサ価格の上昇を背景にエチレンなどの製品価格が上昇。黒鉛電極は電炉向けの需要が強く販売数量が上向いた。

 しかし、最終損益は250億円の赤字(同763億円の赤字)。これまでの予想を110億円引き下げ、赤字幅が広がる。事業売却に伴う評価損や昭和電工マテリアルズの資産の再評価で210億円の特損を計上するためだ。

 昭和電工マテリアルズ関連では鉛蓄電池事業やプリント配線事業などの売却を決めており、事業改善費用として150億円を特別損失として計上した。モビリティ事業でも固定資産の減損損失を35億円見積もっている。昭和電工のアルミニウム関連事業も譲渡し、25億円の譲渡損失が出る。事業整理にメドがついたことから、新規投資に踏み切る。

 9、10月に公募増資や追加売り出し(オーバーアロットメント)で最大で3519万株の新株を発行する。発行価格は1株2465円。発行済み株式数の2割強に相当する。手取り資金は概算で823億円。706億円を昭和電工マテリアルズの製造設備や再生医療の分野に充当する。

 25年12月期の売上高を20年12月比6割増の1兆6000億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を同6.4倍の3200億円に高める目標を掲げる。半導体関連に積極投資し収益拡大への道筋をつける。

 今後、旧日立化成の巨額買収の償却負担を吸収できるだけの収益を上げることができるかだ。外資系企業で経験が長い高橋新社長の経営手腕が問われる。

(文=編集部)

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