中国当局の苛烈な対応に日本国内では困惑の声が上がっている。共同通信は18日、記事『ソニーに罰金1700万円 中国の尊厳損なうと当局』を公開。記事によると、「日中戦争の発端となった盧溝橋事件から84年に当たる日に新製品を発表するとの広告を出し中国国家の尊厳を損なったとして、北京市朝陽区の市場監督管理局は18日までに、ソニーの中国法人に100万元(約1770万円)の罰金を科した」という。いったい何があったのか。
ソニーの中国法人である索尼中国は今年6月30日夜、中国版SNSの微博(weibo)に、新製品のカメラの発表日に関して「2021.7.7 22:00 新机將至,敬清期待」と投稿した。ところが、この投稿にある「7月7日22:00」が、盧溝橋事件が発生した日時(1937年7月7日22時半ごろとされている)とほぼ同じだったため、微博などで批判が殺到。索尼中国は7月1日に謝罪に追い込まれていた。
しかし騒動は収まらず、北京市朝陽区市場監督管理局があらためて索尼中国に対して「国家秘密漏洩、国家尊厳及び利益損害」に抵触したとして罰金を科したのだ。
かつては「NINTENDO64」もアウトになった
中国に駐在経験のある大手家電メーカー社員は話す。
「確かに7月7日は中国にとって特別な日であることは間違いありません。しかし、今回の件で罰金とは。索尼中国にも中国人社員は多数います。現地法人の社員や従業員が、新商品リリースのタイミングを知らないなんてことはあり得ません。つまり事前に社内で、この日、この時間に新商品の広告を出すことに対して疑問の声が上がらなかったということでもあるのです。
つまり、広告を出すまで現地法人の中国人ですら、こんなに大事になるとは思わなかった可能性がある。最近、中国のネット上では、ある種、国粋主義的な粗探しが盛り上がる傾向にあります。どの企業も現地の国家や民族の信条や尊厳を損なわないよう配慮しながら企業活動を続けているのですが……正直、厳しい情勢だと思います」
大手総合商社関係者は話す。
「中国では、今回問題になった7月7日と同じように、安易に使ってはいけない数字がいくつか存在します。例えば、任天堂さんがかつて製造・販売していた家庭用据え置き型ゲーム機『NINTENDO64』。(2003年に)中国で発売するのにあたり、任天堂さんの中国法人は『神遊機』(iQue Player)と名称を変えて発売することになったのは有名ですよね。
問題になったのは『64』という数字で、この数字は1989年6月4日に発生した天安門事件を想起させる数字として、中国当局が目を光らせていたのです。『天安門事件』という言葉が、中国のネット上でタブー視されていることは改めて指摘するまでもありません。
中国当局の思惑はわかりませんが、今回の一件で我が国を含めた諸外国のメーカーがチャイナリスクの深刻さを実感したのは間違いないと思います」
(文=編集部)