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大丸松坂屋、「商品を売らない店舗」拡大…百貨店、衰退止まらず不動産賃貸業化

文=編集部
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大丸心斎橋店本館(「Wikipedia」より)

 J・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は店舗で商品を販売しない「売らない店舗」づくりを始めた。ネット販売の新興ブランドのショールーム「明日見世(asumise)」を10月6日、大丸東京店(東京・千代田区)にオープンした。明日見世ではQRコードが設置され、それを読む込むことで出品しているブランドの商品を購入できる。

 4階の婦人服フロアの一角に「D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)」と呼ばれるネット販売に特化した売り場を設けた。ファッション、ビューティ、ライフスタイル雑貨、フード(食品)など、これまでの枠を越えた新しいブランドを取り揃えた。

 自社ECサイトを通じて商品を消費者に直接販売する形態のD2Cブランドでは、実店舗を持たないことが多い。購入前に商品を手に取れないことや、商品説明を直接聞けないことがネックになっていた。

 明日見世には百貨店で接客の経験を積んだスタッフが常駐し、それぞれのブランドや商品の魅力を説明するアドバイザー役を務める。説明を受けた客はブランドのECサイトで購入する仕組みで、その場で購入して持ち帰ることはできない。大丸松坂屋は在庫を持たず、ブランド側から一定の出店料を徴収する。明日見世は数カ月の期間でテーマを変え、ブランドも入れ替える。

 第1回(10月6日~22年1月11日)は“社会を良くするめぐりとであう”をテーマに、生分解性素材やオーガニック原料を使用したブランドに焦点を当てる。今後は大丸東京店での成果の検証を踏まえ、名古屋市や大阪市などの店舗でも導入を目指す。

 そごう・西武は9月2日、D2Cブランドの売り場「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA)」を西武渋谷店に開いた。大手百貨店は、次々と新たな売り場の形態を模索し始めている。

丸井グループは「売らないテナント」に売り場の3割を転換

 D2Cブランドなどを集めた「売らない店舗」づくりでは丸井グループが先行する。丸井は2026年3月期までに、売り場面積の約3割を「売らないテナント」に転換する。丸井は首都圏を中心に23店舗の商業施設を展開している。売り場面積は合計で40万平方メートル。現在、「売らないテナント」は1割だが、5年間で3割にまで引き上げる。オーダースーツの「ファブリックトウキョウ」やフリマアプリのメルカリ、米国発で最新家電を体験できる「b8ta(ベータ)」などがすでに出店している。

 丸井は従来の商品を仕入れて売る百貨店型から、定期借家契約で家賃収入を主とするショッピングセンター型へと、15年3月期から転換を進めてきた。飲食やサービス系を含め、体験できるテナントを誘致しやくするための取り組みだ。「店舗で実物を確認してからネットで買う」という消費行動が若い世代を中心に広がった。こうした流れに乗って「売らない店舗」が誕生した。

 かつて百貨店は消費の主役だった。スーパーやコンビニエンスストア、家電量販店、ドラッグストア、カジュアル衣料の専門店の台頭で、百貨店の市場規模は縮小を続けてきた。百貨店には、さまざまな商品が豊富に取り揃えられているが、そのほとんどは百貨店の在庫商品ではない。百貨店の取引先が商品を売り場に展示しているのである。売れたときに初めて百貨店が仕入れて、同時に売り上げを計上する。こうすれば百貨店は在庫リスクを負わず、売れ残れば取引先がその損失を負担する。百貨店に絶対的に有利な取引形態だった。

 こんな取引条件が許されたのは百貨店が小売りの王者だったからである。百貨店に売り場を持つことが、そのままメーカーの売り上げにつながったからだ。アパレルがこの方式で成果を上げたことから定着した。

 百貨店の市場規模はコロナ禍直前の2019年にはピーク時の6割にまで落ち込んでいた。もはや百貨店に神通力はない。百貨店の現在の業態は、いわば「場所貸し」業である。成長著しいD2Cを誘致し、百貨店は小売業から不動産賃貸業へと、抜本的な変化を早めることで生き残りを図る。

(文=編集部)

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