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ダイソーネットストア、送料770円でも利用者に絶大なメリット?ダイソーの狙い

取材・文=A4studio
ダイソーネットストア
ダイソーネットストアのサイトより

 コロナ禍においても100円ショップの売上は好調だ。なかでも業界トップの「ダイソー」は、テレワーク促進の流れやおうち時間増加を追い風にし、文房具からキッチン用品などバラエティに富んだ商品群をリーズナブルな価格帯で展開。時代に即した消費者の巣ごもりニーズに応え、受け入れられている。

 そんなダイソーが10月13日、商品の取り扱い数・約3万点を誇る「ダイソーネットストア」をオープンした。100円ショップの商品をネットショッピングできるというのは魅力的に感じるだろう。

 しかし、注文できるのが合計金額1650円(税込、以下同)からと制限があり、送料は770円かかるという。合計金額が1万1000円を超えた場合は送料無料となるが、110円商品なら100点以上も注文しなければいけないことになる。この送料がネックとなり、利用を躊躇する方もいるだろう。

 そこで今回は、消費経済ジャーナリストの松崎のり子氏に、ECサイトをオープンさせたダイソーの狙いや利用する消費者のメリットなどについて話を聞いた。

多数の懸念点に目を瞑ってもダイソーがECサイトを展開させたかったワケ

 実はダイソーネットストアは、今年5月に配送先を千葉県と神奈川県に限定してプレオープンしており、その試験運用を経たうえで10月の正式リリースにこぎ着けていた。

「今年3月に東京・渋谷に、ダイソーの姉妹ブランド『スタンダードプロダクツ バイ ダイソー』がオープンしましたが、その時に、ネットストアのプレオープンを報せるチラシを目にしました

 スタンダードプロダクツ バイ ダイソーの商品の大半は330円。SNS映えやデザイン性を重視するデジタルネイティブな消費者に向けて用意されたブランドだと思うので、おそらくダイソーネットストアのターゲット層と被っていたのでしょう。そこでダイソーネットストアを利用してくれそうな層に、早い段階で周知させようとアプローチしていたのだと思われます」(松崎氏)

 ネット上での個人利用を想定した際、確かにSNSを頻繁に利用する客層へのアプローチは効果が高いのだろう。では、なぜダイソーはECサイトのスタートに踏み切ったのだろうか。その背景にはやはり、コロナ禍で大きく変わった消費者のライフスタイルが影響しているようだ。

「ダイソーはショッピングモールなどのテナントとして入っているケースも多いですが、去年は感染対策の観点から、商業施設自体が営業自粛、あるいは時短営業を余儀なくされるケースも多かった。そのため、ある程度売り上げにダメージがあったはずです。

 実店舗に依存しすぎれば、有事にこうした問題が浮き彫りになります。だからこそ時代と需要に即した非接触チャネルとして、個人向けECサイト開設は必要不可欠だったのかもしれません。コロナによる情勢変化は、ダイソーが本格的に通信販売を開始する大きなきっかけになったと見ていいでしょう」(松崎氏)

 しかし、100円ショップブランドの通信販売となると、やはり単価の安さがネックになってくるのではないだろうか。

「確かに、ある程度の“まとめ売り”をしないと利益が出にくいという問題はありました。実はダイソーではこれまでにも『ダイソーオンラインショップ』を運用していましたが、こちらはセット売りや大量注文に特化した販売サイトで、単価の高い買い物をしてくれる企業や法人に向けて打ち出していたサービスだったんです。

 しかし、そういった懸念を押し切ってでも今回のダイソーネットストアのオープンを推し進めたことには意味があったと思います。コロナが終息してもネットの利用者が消えることはありませんから、結果的にはプラスになるという見通しなのでしょう」(松崎氏)

一見高いようにも思える送料770円は、消費者に最大限寄り添ったもの?

 ダイソーネットストアが、100円ショップ最大手としての経験値を踏まえてオープンされたことはわかった。だがやはり、消費者にとって大きなハードルとなりかねないのが、1万1000円以下の決済に掛かる770円という送料だろう。

「ネットショッピング全盛の今、私たちは“送料無料”に慣れすぎてしまっており、さらにダイソーという冠がのっかってくると余計に商品以外のコストが目立って見えてしまうかもしれません。ただし、実店舗で買い物をするときは、店舗までの電車・バス代やガソリン代がかかるかもしれないし、自分の貴重な時間も移動で消費することになります。仮に往復1時間かかるとすれば、その時間働いていれば1時間分の時給が稼げたわけです。普段はあまり意識していないかもしれませんが、実店舗を利用する際にそういったコストがかかっていると考えれば、送料770円が丸々かかってくると思わなくともいいのではないでしょうか」(松崎氏)

 確かに一見割高に思えていた送料も、さまざまな面でかかってくるコストやリスクを鑑みると“必要経費”として飲み込めてくるかもしれない。

 また、ダイソーネットストアのリリース時、多くのネットユーザーから「店頭に出向かなくてもダイソーの商品を事前に知ることができるので、カタログのような活用ができそうだ」といった消費者目線のメリットも挙がっていた。松崎氏によると、ダイソー側にもダイソーネットストアがリリースされたことによる副産物的なメリットがあるのだという。

「サイトを頻繁にチェックするのは大半が既存のファンでしょうが、長い目で見ればライト層も取り込めるチャネルになるでしょう。また、ダイソーネットストアによって実店舗とネットショップの売れ筋商品の違いや、居住地域ごとにどういったアイテムが売れやすいかといったデータも取りやすくなるはず。こうしたデータが商品開発のアイデアや、次の一手を打とうと経営戦略を練るときに役立つでしょう」(松崎氏)

 松崎氏は、今後はダイソーネットストア専用アプリの導入も期待したいと続ける。

「ダイソーはインスタグラムを通した商品PRをうまく運用している印象です。現在は主に新商品の紹介に注力していますが、アプリを介してリアルタイムで気軽に購入できるようにするシステムを導入するなどして消費者をうまく誘導できれば、直接的な販促にもつながっていくのではないでしょうか。

 今後、消費者行動がどう変わっていくのかはまだ誰にもわかりません。再び緊急事態宣言のような措置が取られる可能性もありますから、満を持してリリースしたECサイトという非接触チャネルを、いかにして育てていくかが企業課題になってくるでしょう」(松崎氏)

 今や我々の生活に必要不可欠な存在になりつつある100円ショップ。その代表格であるダイソーが個人へ向けたECサイトが今後どのように展開してゆくのか、目が離せない。

(取材・文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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