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木下隆之「クルマ激辛定食」

安価な軽自動車の代名詞スズキ・アルト、実は超高コスパ!9代目の高性能に驚愕

文=木下隆之/レーシングドライバー
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スズキ・アルト、実は超高コスパだった!
スズキ・新型アルト

 スズキの誇るイメージリーダー的存在の「アルト」が、9代目となってデビューした。販売価格は、エントリーモデルである「A」が94万3800円、最上級モデルの「ハイブリッドX」でさえ137万9400円に抑えられている。コスト意識の強い軽自動車の世界でも、最近は200万円を軽々と超えるモデルも少なくないが、アルトは伝統的な低価格路線をひた走る。同価格帯のライバルであるダイハツ「ミライース」と、真っ向勝負の価格設定なのである。

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 それでも、コストに縛られてクルマとしての資質を見失うことがないのがアルトの魅力である。新型では車格を大きく引き上げた。全長3395mm、全幅1475mmの前後左右のディメンションは軽自動車枠ギリギリで、それ以上伸ばすことは叶わないが、高さに関しては規定の2mまでまだ余裕がある。先代に比較して全高を50mm伸ばしている。

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 これによって、乗降性が増した。ドアの開口部が天地に20mm伸ばされたことで、腰を窮屈に屈めなくとも乗り降りしやすくなった。背筋をピンと伸ばした正しい運転姿勢をとっても、頭上空間には余裕がある。後席にとっても恩恵は同様で、前後に長いシートスライドすることもあって、膝周りがゆったりしている。頭の上にも空間があり、半端な5ナンバー乗用車よりも広い室内を実現しているのだ。

 もちろん、全高のアップはリアハッチの開口部を広げる効果がある。バンパーを下げたこともあり、重量物でも腰に負担をかけずに積み込める。5ドアハッチの利便性を充実させているのだ。

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 このように、アルトはコスト至上主義ではなく、あくまで利用者の使い勝手を優先しているのが特徴となっている。

 42年前にデビューした初代アルトは47万円という、当時としては驚くほどの低価格が特徴で、それ以来アルトは安価な軽自動車の代名詞に祭り上げられてきた。スズキもその期待に応えてきた節があるが、歴史を振り返ってみると、コスト至上主義ではないことが判明する。

 2代目アルトには激辛スーパースポーツがラインナップしていたし、大ヒットした3代目アルトはスライドドアだった。今でこそポピュラーなスライドドアの流行の先鞭をつけている。エアコンの標準装備やABS(アンチロック・ブレーキ・システム)等、安全技術の投入など、コストを犠牲にしてでもユーザー目線の商品づくりを心がけてきたのである。初代は「ヨンナナアルト」と呼ばれるほど強烈なインパクトがあったため、価格が真っ先に注目されるが、本質はユーザー目線の商品性だった。そして、そのスタイルは新型でも受け継がれているというわけだ。

 走りに劇的なプレミアム感は薄いものの、“先代に比較すれば”という条件付きながら、音や振動が抑えられている。クルマとしての資質が磨かれているのだ。

 デザインも個性的である。楕円と曲線をモチーフにした筆捌きは、多少のコスト増を招く。平たい鉄板を貼り付けることから比較すれば生産性が悪い。だが、それでもデザインを優先した。内装のシート生地などはデニム柄をモチーフにしており、さまざまな色を複雑に絡ませる手法を選んだ。デザイナーの強い思いが伝わってくる。

 スターターを発電機を併用するISG(モーター機能付き発電機)を基本とするマイルドハイブリッドもあるが、決してコスト主義でないことがわかる。来るべき軽自動車ハイブリッド時代に備えているのだ。WLTC燃料消費率は27.7km/lと、クラストップに輝いた。環境性能にも開発予算を投じているのである。

 コスト意識を捨てつつも低価格でデビューしたアルトは、実はプレミアムアルトでもある。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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