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アップル時価総額3兆ドル、1社の業績下降で世界的株安リスク…強すぎるGAFAM

文=編集部
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アップルのHPより

 1月3日の米ニューヨーク株式市場。IT大手アップルの株価が上昇し、時価総額が一時、3兆ドル、日本円にして340兆円を上回った。3兆ドルの大台超えは上場企業で史上初の快挙といわれた。東京証券取引所1部に上場する企業2200社の時価総額、およそ730兆円の半分を、たった1社で占めたという計算になる。

 主力のスマートフォンやワイヤレスイヤホンなどの販売が好調で、コロナ禍でも堅調な業績を保ってきたことに加え、電気自動車(EV)の分野にも参入。2025年には「アップル・カー」が走るとの観測が流れている。さらに、メタバース分野にも進出するという情報も広まっている。メタバース関連商品を23年初頭に発売するとの思惑とあいまって、アップルの成長期待が高まっている。

 アップルの快進撃の歴史を振り返ってみると、アップルの時価総額は18年8月、米企業としては初めて1兆ドルを突破した。2年後の20年8月に2兆ドルの大台を超えた。3兆ドルは2兆ドルの達成からわずか1年4カ月後である。驚異的なスピードだ。

 1年前の21年3月、米ブルームバーグは「アップルの時価総額が3兆ドルに達する可能性があると複数のアナリストが予想している」と報じた。この頃は、アップル・カーの開発やiPhone新機種への夢が語られていた。アップル株は21年10月以降、急上昇し時価総額3兆ドルに迫っていた。だが、12月28日、5営業日ぶりに反落。時価総額3兆ドルには手が届かず終わった。

 年が明けた今年1月3日の米国株式市場。アップル株は3%上昇し、一時3兆ドルを突破した。このニュースが流れると、ウォール街のエコノミストたちが米メディアに驚嘆のコメントを次々と発表した。ブルームバーグは「ウイスロー・キャピタル・マネジメントの共同ポートフォリオマネージャー、パトリック・バートン氏は『3兆ドルの時価総額を目にするとは考えもしなかった。アップルの今後5年から10年の可能性を物語る』と指摘した」と伝えた。

 足踏みが、まったくなかったといったら嘘になる。中国との米中貿易戦争が年末商戦に影響しかねないとの懸念から、アップル株の時価総額は21年10月にはマイクロソフトを瞬間的に下回った。しかし、ここ1カ月あまりの株価上昇率はマイクロソフトの3.6%をしのぎ、アップルは12%あまりに達し、時価総額の増加ペースが加速した。マイクロソフトの時価総額は2.5兆ドル(約280兆円)前後で推移していた。

 アップルの株価は、21年1年間でおよそ33%値上がりしたことになる。グーグルの持ち株会社アルファベットも昨年1年間で株価が65%上昇した。マイクロソフトも51%上昇である。巨大IT企業に投資資金が集中する状況が一段と鮮明になった。アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、テスラ、メタ(旧称・フェイスブック)の米ハイテク6社の時価総額の合計は日本の東証1部上場企業の時価総額を上回った。

投機マネーに支えられるアップル株のリスク

 こうした巨大IT企業に資金が集中する状況は世界経済にどんな影響を与えるか。1月4日付日本経済新聞は社説「3兆ドル企業アップルの衝撃」で「投資マネーが一部の巨大テック銘柄に集中しすぎて、市場が不安定になるリスクに留意したい」と警鐘を鳴らした。アップルやマイクロソフト株が急落したら、マーケット全体に悪影響を及ぼすのは避けられない。投機マネーはアップル株が下落に転じれば、あっという間にアップルから離れ、株安を増幅させる一因となる。規模もさることながらスピードが問題だ。わずか1年4カ月で時価総額が2兆ドルから3兆ドルに跳ね上がったのはバブルだという見方もある。

 1989年時点の世界時価総額では、首位の日本電信電話(NTT)をはじめ、日本企業が躍進した。上位50位までにランクインした日本企業32社のうち金融機関が17社だった。金融機関が“日本株式会社”の成長を牽引してきたことがわかる。だが、バブル崩壊で、ジャパンマネーの時代は終焉した。

 90年代半ばから2000年代初期にかけて勃興したインターネット銘柄の株価上昇で世界の時価総額ランキングは米国企業が席巻した。遅れて、中国企業が大躍進してきた。アリババ、テンセントなど中国勢が一時もてはやされたが、あっけなく失速した。今日、米国ハイテク株の独り勝ちが際立っている。

 22年1月時点の世界時価総額ランキングでは、米国企業が上位を独占中だ。ベスト10でサウジアラビアのアラムコと台湾TSMC の2社以外はすべて米国だ。日本企業は50位以内にトヨタ自動車(31位)が1社だけ顔を出している。世界のトレンドが製造から金融、そしてITへと大きく変化してきていることを、ワールドワイドの株式時価総額は映し出している。

 アップルはアップル・カーをテコに時価総額4兆ドルへと再び駆け上がっていくのだろうか。だが、過去には「アップル・ショック」が繰り返し起きている。19年1月、中国市場でのiPhoneの販売不振が引き金となり、18年10~12月期の業績予想を大幅に下方修正したことから、世界的な株安を招いた。その影響はアップルに半導体や部品を供給する日本企業にも及んだ。

 アップルが株式市場で咳をすれば世界経済を左右し、肺炎が起きるような重みを持っている。

NYでハイテク株売りが加速か

 米国の金利政策の大転換が迫っている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1月26日、インフレ抑制に向けて3月に利上げを始める方針を示した。米金融政策の引き締めは、ハイテク株バブルの崩壊の引き金を引くことになる。すでに米国の大型ハイテク株の売りは始まっている。

 動画配信サービスのネットフリックス株は1月21日に20%を超える大幅安となった。1~3月(第1四半期)の会員数の見通しがウォール街の予想を大きく下回ったのが嫌気され、株価は約10年ぶりの下落率となった。フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズとアマゾン・ドット・コムの株価は上場来高値から20%以上、下落した。

 アップルは時価総額が3兆ドルを突破した1月4日の高値182.94ドルから、1月26日の安値157.82ドルまで16%下落した。新型コロナウイルス変異株の急拡大、原油価格の高騰、ウクライナ情勢の緊迫化という3つの悪材料があるが、FRBの金融引き締め宣言がトドメを刺すこととなるのだろうか。

 ハイテク株のバブルの宴は終わるのか。それとも再生するのか。もう少し様子を見る必要があるかもしれない。

BusinessJournal編集部

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