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フルサービスの高級ホテルより不自由なキャンプの方が満足度が高い本当の理由

松下一功/共感ブランディングの提唱者、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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キャンプを楽しむ男女(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーの経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者・松下一功です。

 新型コロナウイルスの感染が再び拡大したことで、不安にかられている企業も多いことでしょう。飲食業界では、時短協力金頼みになってしまっているところもあるのではないでしょうか。

 飲食店に限らず、サービス業全般においては、生活様式の変化によって、コロナ前と同じ営業スタイルでは売り上げにつながりにくいことが明白になりました。つまり、社会が変化したのと同様に、企業も変化しないといけないのです。

 しかし、何に軸足を置いて変化したらいいのかは難しいところです。そこで今回は、サービス業全般に共通する変化のポイントをお伝えします。

快適な高級ホテルと不自由なキャンプ

 私は以前より、飲食店を含めたサービス業のほとんどは「商品を売りにしてはいけない」と伝えてきました。過去の記事でも、顧客の手元に残らないものを売っている場合は、「接客」や「体験」などのサービス部分に力を入れるべきだとお伝えしています。

 そして、おもてなしの仕方や内容についても、創意工夫を凝らした方が顧客の満足度につながりやすいと説明しました。しかし、コロナが流行したことで社会の一般常識が変わった今、すでに新しいサービスの形が生まれていることに気づいたのです。

 きっかけはキャンプです。コロナ流行後は、野外でソーシャルディスタンスを確保できる趣味として、ますます人気が高まっていきましたね。私も友人に誘われて、コロナが少し落ち着いた時期に学生時代以来のキャンプに挑戦しました。

 久しぶりだったので、少しの緊張と大きな好奇心を持ってキャンプ場へ行き、「テントの設営で手こずりたくないな」「料理で失敗したらどうしよう」などと思っていました。そして、案の定とまどうことも何度かありました。そのたびに快適に過ごせる方法を考えて試し、自分なりに満足のいくよう努めました。

 その結果、成功したこともあれば失敗だったと思うこともありましたが、総合的には大満足で、「次回はいつにしよう?」とスケジュールを確認していました。

 一方、キャンプに行く少し前に、これとは反対の体験をしました。

 仕事の都合で、ある高級ホテルに宿泊したのですが、こちらはフルサービスホテルで、食事やアクティビティにルームサービスも充実していて、非の打ち所がありませんでした。宿泊中はホテル側の配慮を至るところに感じましたが、些細なことが気になり、大満足とはいきませんでした。

 そう、高級ホテルに宿泊したときよりも、すべてを自分たちで賄わないといけないキャンプの方が楽しかったのです。なぜなら、キャンプでは自分の手で、自分の好きなようにクリエイトできたから。苦労して何かを作り上げる、その工程こそに意味があったのです。

 技術の進化に伴い、高クオリティの既製品が当たり前になった現代人は、自分の手で何かを作ることに喜びを感じやすくなっているのでしょう。まさに、「メイカーズ(ものづくりをする人たち)」の考え方が、広まりつつあるのです。

あるメーカーのプロジェクトで得た確信

「メイカーズ」が広まりつつある予兆は、プライベートだけでなくビジネスシーンでも感じました。

 私が行っているブランディングのコンサルティングも、サービス業の一種といえるでしょう。コロナ禍後に、あるメーカーのプロジェクトを担当しました。普段であれば、こちらの提案にほぼ100%同意していただけるのですが、そのときは珍しく何度もブラッシュアップを求められ、最終的には最初の提案と大幅に異なるものとなりました。

 こういったことはめったにないので、力不足だったかと少し不安になっていたのですが、プロジェクト後に「とても満足できるものができました。協力していただき、ありがとうございました」と大変感謝されたのです。

 なぜかと思い、いろいろと考えてみたのですが、そもそもメーカーの人たちは根っからの「メイカーズ」です。おそらく、ミーティングで私が出す案に対して「本当にそれがうちの会社に合っているのか?」「自分たちなら……」と考えていたのでしょう。

 そのため、ミーティングに前のめりになって参加し、自ら案や疑問を出してブラッシュアップしていき、「これだ!」と思うものに行き着いたのだと考えられます。そして、「松下さんとのミーティングがいい機会になった」という評価につながったのだと思います。

 今までは、便利屋のように何から何までフォローするようなスタイルをとっていたのですが、それは、私自身がいまいちだと感じたフルサービスホテルと同じやり方だったのです。

 そして、高クオリティなものがあふれ、生活に不自由なことがほぼなくなった現代人にとっては、自分も一緒に参加して完成を目指して作り上げていく、まさにキャンプのような体験の方に価値がある。それをビジネスシーンにも持ち込むべきだと強く感じました。

「顧客が喜ぶ体験」とはどんなものなのかを考え、「顧客がクリエイトできる部分」を残しながら実践していく。それが、今後のサービス業全般に共通した変化の軸となるでしょう。

(松下一功/共感ブランディングの提唱者、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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