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レンタルのゲオが始めた「ゲオヤ」とは?昭和の雰囲気すら感じる謎のコンビニ業態

文=谷口京子
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「ゲオヤ 蓮根2丁目店」の外観
「ゲオヤ 蓮根2丁目店」の外観

「GEO(ゲオ)」と聞くと、DVDや漫画のレンタル店を思い浮かべる人がほとんどだろう。しかし、ゲオショップを運営しているゲオホールディングスでは、衣料品や雑貨の買い取り・販売を行う「セカンドストリート」や、中古携帯・スマホの買い取り・販売の「ゲオモバイル」など、さまざまな事業を展開している。

 そんな同社が2021年1月にオープンしたのが「GEO-YA(ゲオヤ)」という新業態だ。なんでも、売っているのは中古のDVDでも古着でもなく、お菓子や飲み物などの食品を扱っているとか……そんな謎多きゲオヤに行ってみた。

公式サイトはなし…板橋区にオープンしたゲオヤ

 ゲオヤを運営しているのは、ゲオHDのグループ企業で20年7月31日に設立された株式会社ゲオリテール。21年1月21日に「ゲオヤ 蓮根2丁目店」をオープンし、その2日後に「ゲオヤ ときわ台駅前店」をオープンした。なぜか、どちらも東京都板橋区に店を構えている。

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ゲオホールディングス公式HPより

 主に食品を扱っているということから、「あのGEOがついにコンビニに参入?」とネットがざわついたのだが、その実態がなかなかつかめない。ゲオHDの「グループ一覧」のページにゲオリテールの名前はあるものの、電話番号や問い合わせ先はなく、ニュースリリースも見当たらない。大々的な宣伝はしていないようだ。なかなか概要がつかめないので、1号店の蓮根2丁目店に実際に行ってみることにした。

 最寄りは都営地下鉄三田線の蓮根駅。駅から徒歩5分圏内に「業務スーパー」や「みらべる」「Big-A」などの激安スーパーが乱立している。駅を出て高架下を3分ほど歩くと、「GEO-YA」の文字が書かれた、味のある立て看板を発見。看板を頼りに右に曲がると、店の外観が見えてきた。

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大きな通りからは店の外観と入り口が見えないので、立て看板で通行人を誘導しているようだ

 立て看板の他にも、入り口周辺には「たばこ」の“のぼり”が立てられ、「お菓子 飲料 安い」と書かれたポスターがイーゼルに置かれているなど、ネットで宣伝していないわりに主張が激しい外観だ。

店内には喫煙スペースも

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店内の様子

 売り場面積は11坪(約20畳)で少々狭い印象だが、約700点もの商品がところ狭しと並んでいる。身長156cmの筆者の目線よりも高い位置に商品が陳列されていた。圧迫感はあるが、狭小店舗ならではの工夫なのかもしれない

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「よっちゃんイカ」や「きなこ棒」など、懐かしの駄菓子も売られている。ジュースの棚には、コンビニではあまりお見かけしない商品も陳列されていた
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喫煙室は感染症対策から定員は2名、広さは2畳ほどだった

 入り口を入って左手には扉付きの「喫煙室」があり、缶コーヒー片手にスマホをいじりながら一服する客の姿も。都内の喫茶店は完全禁煙になり、コンビニ前からも屋外灰皿が撤去されつつある令和3年に誕生した、新たな喫煙スポット。蓮根スモーカーの憩いの場となっているようだ。

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コーヒーマシンには「炭火焙煎コーヒー」に加えて「カフェモカ」「カフェラテ」「ココア」のボタンがあり、それぞれホットとアイスが選べる

 菓子類の他にも、コンビニの定番になっているセルフ販売のコーヒーマシンが設置され、隣では焼き芋も販売されていた。手軽に食べられるファストフードのラインナップとして、あえて焼き芋を売るという独特なセンスが光る。

 会計はセルフレジで売り場は無人だが、店員の代わりに複数の防犯カメラが目を光らせていた。セルフレジに「店員呼び出しボタン」があったので、別の場所で待機しているのだろう。

 一見コンビニとあまり変わらないが、ゲオヤには弁当類は売られていない。菓子や酒類、カップ麺、アイスなど、賞味期限が長い商品を中心に取り扱っているのが最大の特徴だ。21年2月15日に掲載された「食品産業新聞」の記事で、ゲオHD広報課担当者は以下のように答えている。

「『GEO-YA』はコンビニから弁当・おにぎり・サンドイッチなど、消費期限が短く食品ロスが出やすい品目を除き、カップ麺や菓子、飲料など日持ちする食品のみに特化することで、食品ロスの削減につなげるというコンセプト」

 ゲオヤは、近年社会問題になっている「食品ロス」の解決策として登場した業態ということなのだ。同社はリユース事業で環境保全に力を入れており、新たに食品ロスに目を向けるのも不思議はない。

セルフレジで手こずる客も

 20分ほど店内を観察していると、近所の小学生たちが駄菓子を買いに来たり、20代の客が脇目も振らず喫煙室に直行したりするなど、全体的に若い客が目立つ。セルフレジの前では、ビールを買おうとしていた初老の男性が店員の呼び出しボタンを押し忘れて手間取っていたところ、店員が登場して無事に買い物を済ませる一幕も。ほぼ無人の店内でセルフレジの操作が必要なゲオヤは、シニア層には使いにくいのかもしれない。

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酒・タバコ類を買うときは店員を呼んで年齢確認をするシステム。ちなみに、環境に配慮したレジ袋は無料で使える。地味にありがたい

 商品の値札には「会員価格」と「非会員価格」の2つが記載されていた。“会員”とは「GEO-YAメンバーズカード」を持っている人のことらしい。会員になると、タバコなどの一部商品以外は10%割引になるという。年会費500円、月換算で約42円を高いと見るか安いと見るかは、ゲオヤの利用頻度によるだろう。ゲオの会員カードとの連携ができれば便利そうだが、ゲオヤの今後の展開はいまだ未知数だ。

 食品ロスの課題解決をうたってはいるが、実際に店舗に行ってみると、いわゆる“意識高い系の店”という印象はない。駄菓子や100円ショップでもよく見かける菓子類が陳列され、酒もタバコも買えて喫煙室まで完備されている……セルフレジ以外は昭和の雰囲気すらも感じる、とことん庶民派な小売店だった。

 22年2月現在、ゲオヤは板橋区にしかない。都心に住んでいる人でもなかなか行きにくい場所だが、偶然蓮根に足が向いたときは、ゲオヤに行くと懐かしさに浸れるかもしれない。

(文=谷口京子)

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