
フィンランドの航空会社フィンエアーが約30年ぶりに、北極上空を飛行する「北周り航路」を復活させた。ロシア軍のウクライナ侵攻に伴い、制裁の応酬が行われた結果、ロシア領空の民間航空機の通過は2月28日、禁止になった。そのため同社は今月9日、東京・成田―ヘルシンキ線の運航を「北回り航路」で再開した。駐日フィンランド大使館は直行便によって両国が緊密な関係を築いてきた歴史的な経緯を踏まえ、「成田―ヘルシンキ直行便が維持されることを喜んでいる」と述べた。
北極を飛び、アラスカを抜ける長大な航路、再び
同社が17日に公式サイト上発表したニュースレター「Flying over the North Pole: Well-planned is half done」でその経緯を詳細に説明している。
同社は1983年、欧州から日本への直行便「北回り航路」の運行を開始した初めての航空会社。しかし、東西冷戦の終結、旧ソ連の崩壊などを経て、ロシア領空を通る飛行ルート(南回り航路)が開放されてから約30年間、同航路は利用されていなかった。
前出のニュースレターによると、天候など様々な要因でなされるフライトプランの変更は航空会社では通常の業務の一環だったが、「全ロシア領空の全閉鎖」は「非常に例外的な事例」だったため、慎重に計画を練り直す必要があったのだという。
同社が再開させた日本への「北回り航路」は、フィンランドからノルウェー、スバールバル諸島、北極を越えてアラスカに向かい、ロシア領空を通らないよう公海上を南下して日本に到達するという行程で、飛行距離は約1万2870キロ、所要時間は12~13時間となる。
ちなみに同社のこれまでの発表資料を調べたところ、中止された「南回り航路」はロシアを横断し、中国を経由、ウラジオストックの北で再びロシアに入って南下するというルートで飛行距離は約8000キロ、平均所要時間は約9時間だった。大きく迂回することで距離、所要時間が増え、様々な課題が発生したようだ。
代替空港の確保、ETOPS認証をクリアを配布
同社はニュースレターで、「北回り航路」を採用した際、さらにフライトを迂回させる必要が生じた場合に備えて、航路途上の代替空港を調整する必要があったと報告している。
同社のフライトプランナーRiku Kohvakka氏は「極地航路に沿って、スカンジナビア、カナダ北部、アラスカ、日本北部に、これまで使用したことのない空港があり、代替空港を使用できるようにするために情報収集を行った」と述べている。