ジェネリック(後発医薬品)大手3社の21年4~12月期の連結決算は品質不正の影響が業績を大きく左右した。日医工は最終赤字、東和薬品は増益、サワイグループホールディングス(GHD)は減益となった。
品質不正が発覚した日医工の連結決算(国際会計基準)は棚卸資産評価損の計上で最終損益が157億円の赤字(20年4~12月期は2億円の赤字)となった。最終赤字は2期連続で、赤字は第3四半期(4~12月期)として過去最大額となった。
日医工の売上高にあたる売上収益は前年同期比3%減の1348億円、営業損益は153億円の赤字(前年同期は1700万円の黒字)だった。業務停止命令を受けた富山第一工場(富山県滑川市)の生産の全面再開が遅れており、原材料や仕掛品の廃棄に伴い棚卸資産評価損を48億円計上した。製造委託先の小林化工(福井県あわら市)の生産・出荷停止も響いた。
富山第一工場は日医工の主力工場。ジェネリック医薬品の不正製造をめぐり、21年3月に県から業務停止命令を受けた。業務停止期間を終えた同4月から製造や出荷を再開したが、品質チェックなどに想定以上の時間がかかった。富山第一工場では400品目のうち4割程度にあたる169品目が「出荷調整中」と説明している。
22年3月期通期の業績予想は売上収益が前年比2%減の1850億円、営業損益は171億円の赤字、最終的には創業以来最大となる186億円の赤字を見込む。配当は無配にした中間期に続き期末も見送る。年間での無配は、実は22年ぶりのことだ。
東和薬品は日医工や小林化工からの代替需要を取り込み増収・増益となった。売上高は前年同期比9%増の1256億円、純利益は59%増の150億円だった。22年3月期(通期)は売上高が前年比8%増の1867億円、純利益は11%増の154億円と増収・増益の見通し。年間配当を21年3月期比16円増の60円と従来予想から9円引き上げる。
サワイGHDの連結決算(国際会計基準)は売上収益が1486億円、純利益は158億円。沢井製薬の株式移転により21年4月にサワイGHDが設立された。沢井製薬当時の20年4~12月期単独決算と比較すると、売上収益は4%増、純利益は9%減と増収・減益だ。国内では日医工や小林化工からの代替需要があったが、米国でジェネリックの新規の参入が相次ぎ競争が激化し、販売が落ち込んだ。
持ち株会社として初めての本決算となる22年3月期は売上収益が1964億円、純利益は195億円を見込む。中間・期末合わせて年間130円の配当を予定している。
サワイGHDが小林化工の全工場を譲り受ける
サワイGHDはオリックスの子会社、小林化工の全工場を譲り受ける。サワイGHDの子会社のトラストファーマテック(大阪市)が22年3月末までに小林化工が持つ福井県内の5つの生産拠点や物流拠点と、600人の従業員のうち製造部門などの500人を引き継ぐ。小林化工の既存の製品は引き継がない。新しい会社は23年4月に出荷を開始する予定だ。
小林化工は20年12月、水虫などの治療薬に睡眠剤が混入。健康被害が発生した。服用した245人から健康被害の報告があり、2人が死亡した。福井県から21年2月9日、製薬会社としては過去最長となる116日間の業務停止と業務改善命令を受けた。その後、医薬品の承認申請書類の虚偽記載なども明らかにになり同年4月、厚労省から12製品の承認取り消しと業務改善命令を受けた。
小林化工は自力再建を断念。工場の譲渡金を原資に今後、被害者への補償や、流通するすべての自社製品の自主回収を行う。補償は大半が終わっているとしており、今後、清算・廃業に向かう。
今回の取引はサワイ側のメリットが大きい。小林化工という会社そのものを買収したわけではないから、製品の供給責任を引き継がなくて済む。工場だけ手に入れる道を選んだのはこのためだ。
サワイGHDは31年3月期に年間230億錠の生産能力の達成と20%以上の販売シェアを長期目標に掲げる。21年3月期の生産能力は年間155億錠でシェアは15.7%。この目標に向け、第二九州工場(福岡県飯塚市)に405億円を投じて新しい製造棟を建設する。新工場の生産能力は30億錠。工場ができあがって出荷が始まるのは24年4月からだ。
小林化工の工場に目をつけたのは、第二九州工場の稼働開始までのブランクを埋めるためだ。福井県の5つの工場の生産能力は、第二九州工場で計画している自社工場と同じ年間30億錠。2つ合わせると、60億錠増え、生産能力は215億錠に拡大する。目標とする230億錠にあと一歩だ。
小林化工の工場の取得額は公表していないが、推定で100億円程度と見られている。建設中の自社工場より300億円も低く抑えられる。サワイGHDが飛びついた理由は、時間を買い、投資額のセーブをするのが目的だった。
ジェネリック、供給停滞が長引く
ジェネリックの供給混乱が長期化している。2020年以降に明らかになった品質不正や生産トラブルが発端となった。異物混入で死者を出した小林化工、不適切な手順で生産していた日医工や長生堂製薬(徳島市・非上場)などが21年に、業務停止命令を受けた。
ジェネリックは生産が滞り、品不足が深刻だ。製薬業の業界団体、日本製薬団体連合会(日薬連)の調べでは、21年8月末時点で出荷量制限や欠品、出荷停止といった問題のある医薬品は全体の20%、3143品目もある。このうち、92%にあたる2890品が後発薬だった。サワイGHDなど一部の、後発薬の大手に注文が集中し、すべての注文に応じきれない状態が続く。
21年12月下旬時点でジェネリック大手3社が新規受注などを制限していた品目数は1000品目もあった。9月下旬から高止まりしたままだ。後発薬の使用比率は21年に入ってから低下傾向にある。薬局の業界団体、日本保険薬局協会の調査によると21年6月は83.7%。20年12月から1.4ポイント下落した。
小林化工の不祥事以降、患者が後発薬の使用に不安を訴える声が増え、先発薬に変更するケースが相次いだ。品質不正がジェネリック医薬品業界に深い爪痕を残した。
(文=Business Journal編集部)