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データの裏づけがない商品を平然と売る海外事例も…ジェネリック医薬品の闇

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※画像はイメージ(新刊JPより)。

 私たちの生活と切っても切れないのが、病気やケガの時に使う医薬品だ。


 さまざまな医薬品が無理のない価格で手に入るのは、国民皆保険のおかげであるのと同時に、「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」のおかげでもある。


 先進国で医療費を抑え、途上国に必要な薬が行きわたるようになった立役者であり「公衆衛生上のイノベーション」とされるジェネリック医薬品の功績は揺るがないし、今後も必要とされていくことは疑いようがない。しかし、だからこそ目を向けたい側面がある。


「安くて、効き目は新薬と変わらない」


 一見いいことずくめのように思えるが、それは製薬会社が高い倫理観を持って医薬品開発にあたっていれば、の話。米紙「ニューヨークタイムズ」のベストセラー書籍に選ばれた「Bottle of Lies: The Inside Story of the Generic Drug Boom」の邦訳版『ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪』(翔泳社刊)は、ジェネリック医薬品の暗い側面に光を当てるノンフィクションだ。

 

■データの裏づけがない薬が市場に出回っている!?ジェネリックの闇


 患者である我々は、ジェネリック医薬品について 「新薬を開発した企業は、その薬の特許が切れると、ジェネリック医薬品メーカーを含めた他社に製法を開放する」 と考えがちだ。新薬開発企業の協力があるからこそ、ジェネリック医薬品メーカーは研究に投資する必要がなく、わずかなコストで同じ薬を作ることができる、と。


 しかし、実態は逆だ。新薬開発企業はむしろ、自社の利益を守るためにジェネリック医薬品が世に出るのをさまざまな策を弄して遅らせようとする。製造工程に特許の要塞を築きあげ、他社の参入を困難にしたり、自社の薬にささいな変更を加え、「新たな発明」だと主張して特許を取得し、独占期間を延ばそうとしたりである。こうした防御、露骨に言えば妨害工作をかいくぐって世に出るのがジェネリック医薬品なのだ。


 だから、ジェネリック医薬品にも研究開発(「リバースエンジニアリング」と呼ばれる)は必要で、それにはやはりコストがかかる。ジェネリック医薬品メーカーはコストを削減し、かつ利益を出すためにその薬の承認申請の一番手にならなければならない。そしてもちろん、医薬品市場の規制で定められている要件をクリアしなければならない。


 ジェネリック医薬品の世界では、こうした厳しい環境が時に不正を生んできた。


 コストを下げるという点で、途上国にアドバンテージがあるのは製造業も製薬業もかわらない。特にインドは世界のジェネリック医薬品生産量の20%を担う「ジェネリック大国」である。


 本書では、そのインドのジェネリック医薬品メーカーであるランバクシーが起こした不正にスポットライトをあてる。


「何を?」。タクールは尋ねた。
「何が真実かということさ」とアルンは答え、規制が弱く、何をしてもばれる恐れがほとんどない市場で、ランバクシーが好き勝手にビジネスをしていることについて話し続けた。(P150より)


 これは2004年にランバクシーの社員であるディネシュ・タクールと同社の薬事担当副部長アルン・クマールの間で交わされた会話である。


 当時のランバクシーは「世界売上50億ドル」という目標に向かって邁進していた。厳しい環境のなかでひたすらに売上を求めるうちに、ランバクシーの社内には各国の市場の規制を順守するのではなく、ごまかしたり回避したりする雰囲気が育っていったようだ。


 規制が厳しいアメリカやヨーロッパの市場では、その規制に沿うように労力をかけるが、アフリカやラテンアメリカ、インドのように規制が弱い地域では、データの裏づけがない商品を平然と売る。上の会話は当時のランバクシーのずさんな体質(実際に、ランバクシーは製品への異物混入、無菌検査の偽装など複数の問題を起こしている)を表しているが、こうした体質がのちに大きな問題となって表面化する。


 医薬品の品質管理は自国民の死活問題である一方で、ある国の規制当局が海外の製薬会社の品質管理をコントロールするのは果てしなく難しい。品質管理への意識が低いまま利潤を追い求める海外の製薬会社の意識をいかに啓発するかは、ジェネリック医薬品が抱える課題の一つなのだ。



 身近にあり、誰でもお世話になるからこそ知っておきたい薬の話。


 現在日本におけるジェネリック医薬品の普及率は78%(厚労省データより)とされる。今後も需要が増していくと見られているなかで、ゾッとするエピソードが満載の本書である。(新刊JP編集部)


※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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