なぜ日本人は、日本人たる姿形をしているのか。普段からそんなことを考えている人は少ないだろうが、太古の昔に誕生した人類が、今の日本人になるまでにはどんな経過をたどったのか。
700万年前に、最初の人類となる猿人がアフリカで誕生し、長い時間をかけてホモ・サピエンスと進化した。そして世界各地に移住し、その土地土地の環境に適応していった、というのが現在の人間社会の成り立ちだとされている。
でも、それならば日本人もアフリカ人やヨーロッパ人も似たような姿形になってよさそうなもの。肌の色や顔立ち、背丈など、現在の日本人の特徴はどう作られていったのか?
■現代日本人は「縄文人系」か「弥生人系」か?それとも…
『[新装版]アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』(溝口優司著、SBクリエイティブ刊)では、日本の形質人類学の権威である溝口優司氏が、人類を生物学的観点から研究する学問の形質人類学の研究結果を基に日本人のルーツを探っていく。
日本人がどのように成り立っていったのかには、大まかに3つの仮説がある。
なかでも、南方起源の縄文人が先に、北方起源の弥生人が後から日本列島にやってきた、という説がほぼ確実だと言っていい、と溝口氏は述べる。では、この2つの系統の異なる集団が、日本列島の中でどう現日本人になってきたのか。つまり、今日本にいる我々の先祖はどちらなのか?
縄文人と弥生人の関係は、これまでに大きく分けて「置換説」「混血説」「変形説」の3つの仮説が唱えられてきた。最初に登場した置換説は、まだ日本人自身が人類学を始める前、江戸時代の終わり頃から明治時代にかけて日本にやってきたドイツ人医師で博物学者のP・F・v・シーボルトやドイツ人医師のE・v・ベルツなどによって唱えられた。これは、もともと日本に住んでいた人々が、外からやってきた現代日本人の祖先に駆逐され、置き換わられたというもの。
次に登場したのが、混血説。1925年から1950年頃にかけて、京都大学医学部教授の清野謙次らによって唱えられた。現代日本人は縄文人を祖先とする人々と日本に隣接する地域の人々と混血してできたとするものである。
3番目は1950年頃から1980年頃に東京大学理学部教授の長谷部言人や鈴木尚によって唱えられた変形説。縄文人が環境の影響などを受けて、少しずつ形質を変形させてできたとするもの。
この3つの仮説の中で、今は「置換に近い混血説」が主流なのだそう。大陸から渡来した弥生人が、もともと日本に住んでいた縄文人と混血しながら広がっていき、かなり置き換わったのに近い状態になったと考える人が多いという。
日本人はどのように日本人になったのか。700万年前から遡り、自分たち日本人のルーツを探る本書。自分自身のことを知るという意味でも、興味深く読むことができる1冊だ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。