間食はやめようと思っているのについついお菓子に手が伸びてしまったり、タバコをやめたいのに気がつくとまた吸っていたりと、「わかっちゃいるのにやめられない悪癖」はどんな人にでもあるもの。
こんな悪癖をだらだら続けているのは、ひとえに自分の意志の弱さのせいでございます、と私たちは何かにつけて意志や思考にその原因を求めがちである。だけど、本当にそうなのだろうか?
「やめたくてもやめられない習慣」は意志の力ではやめられない
『やめたいのにやめられない悪い習慣をやめる技術』(小早川明子著、平井愼二監修、フォレスト出版刊)は、こうした悪癖、悪習にハマってしまうメカニズムとそこから脱するために必要なことを伝授する。
まず知るべきは、人間の脳に備わっている二つの中枢神経系である。
第一信号系…無意識的な神経系、動物的な脳。
第二信号系…意識的な神経系、人間的な脳。
人間が行動する時は、この二つが互いに影響しあっているという。では「やめたいのにやめられない悪い習慣」をやってしまう時、脳では何が起きているのか。
よく、悪習をやめられない時に他人から言われ、自分でも持ち出すのが「意志の弱さ」だ。つまり「禁煙していたんだけど、ついにまた吸っちゃったよ。自分の意志の弱さにがっくり」というような具合である。意志は第二信号系が司っている。
ただ、ここで知るべきは、我々は必ずしも「意志」だけで動いているわけではない点だ。「やってはいけない」と思って(意志)いながらもやってしまうことは、いくらでもある。「やめたいのにやめられない習慣」はその最たるもの。つまり、悪い習慣は意志によって行われているわけではない。だから、やめるために意志に訴えても効果は薄い。
条件反射を断ち切るために
本書では「悪い習慣」は後天的な「条件反射」だとしている。「パブロフの犬」の実験でおなじみのアレである。
「今日こそはまっすぐ家に帰る」と心に決めていても夜になると飲みたくなる。
タバコはやめると決意したものの、仕事の区切りで一服する習慣が定着していたため、仕事の合間に吸いたくなってしまう。これらはまさしく条件反射のたまものである。
そしてこちらは第一信号系の問題だ。飲酒の例でいえば、「夜がきた」「電車から降りた」「ネオンサインを見た」という「刺激」に対して第一信号系から「飲みに行く」という行動を司る神経活動が「反応」として出力される。長い時間のなかで「刺激」と「反応」の連続が定着し、「夜になると飲みに行く」という行動が固定していくのだ。
「夜がきた」→「飲みに行った」
この回数が多いほど、意志の力(第二信号系)で「今日はやめておこう」と制御しようとしても、条件反射の力(第一信号系)に打ち勝てなくなっていくという。
◇
ならば、この固定化された行動の鎖を断ち切るためには条件反射がおこるための「条件付け」を解除するしかない。
本書では長年の悪習慣の前にはあまりにも脆弱な「意志の力」に頼らずに、やめたいと思っている習慣を断ち切る方法を解説している。自分のことを好きでいるために、やめたいことはやめられる自分でありたいもの。
どんな人にでも一つや二つある悪習だが、今の生活や未来に悪影響をおよぼすようなら、本書を通してサヨナラしてみてはいかがだろう。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。