男性なら、女性とデートをしたときに、「おごろうか、それともワリカンにしようか?」と迷ったことが一度はあるはずだ。バブル期など、かつては男性が全額を出すのが当然とされた時代もあった。しかし、今や若者の間ではデート代はワリカンが一般的で、男性が全額を出すのは時代遅れになりつつある。
その一方、いまだに女性には「男がおごるべき」という声が少なくないのも事実。そして、男性からは「昔は財布を出して払おうとしていたのに、今では財布を出そうともしない」など、交際期間が長くなるにしたがってデート代を負担しても感謝さえされないことを嘆く声も耳にする。
そんななか、今年3月、ツイッターで「内閣府公認資料ベースで『いつもおごらせる』をデートDVに入れたのは進歩」というツイートが2万以上もリツイートされ、大きな反響を呼んだ。内閣府男女共同参画局による「男女間における暴力に関する調査」の「デートDV」の項目に、「デート費用など、いつもパートナーにお金を払わせる」が盛り込まれたというのだ。
デート費用負担はデートDV?内閣府の真意
デートDVとは、「交際している恋人間で起きる暴力」のことを指す。夫婦間など家庭内暴力をDV(ドメスティックバイオレンス)というが、近年は特に若者の間でDVが深刻な問題となっていて、これがデートDVと呼ばれるようになった。
このデートDVに該当する要素に、内閣府がデート費用をいつも恋人に払わせる「経済的圧迫」を盛り込んだのは2014年。それが「女性が男性にデート代をすべて支払ってもらうこと」と解釈され、なぜか最近あらためて注目されているのだ。
そこで、内閣府に「経済的圧迫」をデートDVの要素に盛り込んだ理由を聞くと、「『交際相手の嫌がることをし続けたら、それがデートDVになる』という意味で、『おごる』『おごらない』という論点は重要ではない」と、担当者が不本意そうに話す。「おごらせる」という部分ばかりがクローズアップされることで「デートDVの本質」を誤解されたくない、ということのようだ。
それでは、具体的にデートDVとはどのような行為なのか。「デートDVには次の5つの要素があります」と語るのは、デートDVに特化した電話相談「デートDV110番」を運営するNPO法人エンパワメントかながわ理事長の阿部真紀さんだ。
「殴る蹴るといった『身体的暴力』、メールの返信が遅いと怒る、異性や友人との関係を制限する、スマートフォンをチェックしたり勝手にデータを消したりする『行動の制限』、暴言や人格否定、別れたら死ぬと騒ぎ立てる『精神的な暴力』、コンドームをつけない、相手の同意なく性的な画像や動画を撮影するといった『性的暴力』……。そして、5つ目が、デート費用をいつも負担させ、高額なプレゼントを要求する『経済的暴力』です」(阿部さん)
いずれも、肉体的・精神的な暴力によって交際相手をコントロールしようとするのが特徴で、これらの行為は複合的に発生するケースが多いという。