お金で支配も…デートDVの実態とは
阿部さんは、「『いつもおごらせる』をデートDVに入れたのは進歩」というツイートが反響を呼んだ理由について、「『おごらなければ男らしくない』と我慢していたが、本当はずっと断りたかった。そういう男性がたくさんいるからこそ、本音を語りやすいインターネットで注目を集めたのかもしれません」と話す。
とはいえ、女性である筆者からすると、こちらにデート代を払う意思があっても、明らかに経済的・社会的地位に差がある場合など、「男性のメンツを立てたほうがいいのでは……」と思うときもあり、判断が難しいのも事実だ。
同じくNPO法人エンパワメントかながわの事務局長・理事を務める池畑博美さんによれば、「おごらせる=DV」ではないという。
「1回のデートに限ったものではなく、本心では嫌なのに『おごることを受け入れざるを得ないような関係性』が定着しているのがデートDVです。本当は嫌なのに、それが言えない。支配する側と支配される側、立場の固定化がデートDVにつながっていくのです」(池畑さん)
世のカップルの中には、「おごるのが当然」「おごられるのが当然」「高いプレゼントをあげて当然」「それをもらって当然」という人たちもいる。だからこそ、ひとつの行為だけでは、デートDVと決めつけることはできない。キーワードとなるのは「支配する側と支配される側の固定化」で、ときには「おごる」という行為が、逆に支配する手段として使われる場合もあるという。
「相手を支配するために経済力を利用する人もいます。『お金を出しているんだから言うことを聞け』と、相手を思い通りにしようとする。相手に家賃を出してもらっている場合、暴力を受けても『この人がマンションのお金を払ってくれているし……』と、何も言えなくなってしまうこともあるでしょう。
別れようと思っているのに『今までのお金を全部返せ』と言われて別れられない、という相談も多くあります。お金は力関係を固定化します。たとえどんなに親密な関係であっても、金銭的に対等な関係でいることが重要です」(同)
デートDVか否かを見極めるには、「一方的な関係性」になっているかどうかがポイントとなる。本音では嫌なのに、なんらかのパワーで支配されていると自分の希望や意見が言えない。そんな状況であれば、デートDVと判断すべきだという。
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ちなみに、DVには「被害者=女性」というイメージが強いが、男性にもデートDVの被害者が少なくない。内閣府の「男女間における暴力に関する調査報告書」(平成26年度)によると、女性の19.1%が交際相手からデートDVを受けたことがあり、男性も10.6%がデートDV被害の経験があると回答。そのなかには、「嫌がっているのに性的な行為を強要される、見たくないポルノ映像等を見せられる、避妊に協力しない」などといった「性的強要」も含まれる。