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ジェネリック医薬品、揺らぐ信頼…最大手・日医工、検査不合格の錠剤を砕いて再加工

文=編集部
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「日医工 HP」より

 ジェネリック医薬品(後発薬)最大手の日医工は3月3日、製造や品質管理に問題があるとして、主力の富山第一工場(富山県滑川市)での32日間の医薬品製造の停止と、24日間の医薬品製造販売業としての業務停止命令を受けた。3月5日からである。

 日医工は20年4月以降、製品の自主回収が相次ぎ、これまでに回収品は75品目に上る。富山県が20年2月に行った富山第一工場への事前通告なしでの抜き打ち査察が、一連の回収のきっかけになった。この査察によって出荷試験によって不適合とされた製品を、不適切な手法で再試験することが10年ほど前から行われていたことが判明。別のサンプルを使ったり、錠剤を砕いたあと、再び加工したりして適合させていた。

 田村友一社長は3月3日、オンラインの記者会見で「業容を拡大するなか、現場に無理をさせすぎた」と語った。責任の所在を明確にするとして、田村社長は3月から3カ月、月額報酬の100%、他の役員3人も減俸とした。これで責任の所在が明確になったのだろうか。

 ジェネリック医薬品メーカーでつくる日本ジェネリック製薬業協会は、3月9日付で日医工を5年間の正会員の資格停止処分にした。除名処分の次に重い処分である。2月には同じ後発薬メーカーの小林化工(福井県あわら市)が、爪(つめ)水虫などの飲み薬に睡眠導入剤の成分が混入した問題で福井県から116日間の業務停止命令を受けたばかりだ。後発薬の信頼を揺るがす事態へと発展した。

2代目社長がM&Aを繰り返し、急成長

 日医工の創業は1965年にさかのぼる。1953年、富山大学薬学部を卒業した田村四郎氏が日本医薬品工業を設立し、ジェネリック医薬品の製造・販売を始めた。新薬の特許が切れた薬と同じ成分ものを後発医薬品として売り出す。新薬メーカーのように多額の研究開発投資を必要としないため価格を安くできる。価格は新薬に比べて3割から7割安い。

 2000年、創業者の長男、田村友一氏が社長の椅子を継いだ。学習院大学文学部心理学科卒。住友商事を経て、米シアトル・パシフィック大学に2年間留学。国内外で武者修行をした後、89年、日本医薬品工業に入社した。

 2005年、社名を日医工に変更。1980年名証第二部、翌81年大証第二部に上場していたが、06年、名証・大証1部に昇格。2010年に悲願としていた東証1部上場を果たした。肥大化を続ける医療費を抑えるため、政府はジェネリックの使用を促進してきた。厚労省によれば、05年に32%だったジェネリックの使用割合は20年9月には78%まで上昇した。こうした追い風を受け、日医工の業容は拡大した。

 田村社長は「売り上げ至上主義者」(日医工の関係者)とみられている。M&A(合併・買収)を繰り返し、急成長を遂げる。

 04年、マルコ製薬の事業を引き継いだ(現・愛知工場)のを手始めに、08年、テイコクメディックスを子会社にした(現・埼玉工場)。14年、アステラス製薬子会社の工場を取得(現・静岡工場)。16年には米国市場を開拓するため、ジェネリック注射剤製造の米セージェント・ファーマシューティカルズを手に入れた。18年、エーザイの子会社のエルメッドエーザイを約170億円で買収。まず株式の20%を握り、19年4月、完全子会社にした。

 エルメッドエーザイの売上高は約280億円。買収により日医工の国内シェアは15.8%となる。業界トップの沢井製薬をかわして1位の座を固めるのが狙いだ。「ジェネリック医薬品は規模で戦う時代に入った」。日医工の田村社長は、エルメッドエーザイの買収を発表する記者会見でこう強調した。薬価引き下げ圧力が強まり、競争環境が厳しさを増すなか、規模を拡大。「将来は世界トップ10入りを目指す」と胸を張った。

 21年2月、武田薬品工業が49%出資する武田テバファーマから後発薬事業を買収し、高山工場を譲り受けた。M&A攻勢で売上高は急増。田村氏が社長になった当時の売上高は100億円だったが、20年3月期には1900億円と19倍になった。「次の20年間で年商5000億円にする」と豪語していた。

沢井製薬とデッドヒート

 20年3月期に3年ぶりに首位が交代した。日医工の連結売上収益(国際会計基準)は前期比14%増の1900億円となり沢井製薬の売上収益(同)1825億円を抜いて首位に躍り出た。トップ躍進の原動力となったのが19年4月に連結子会社に組み入れたエルメッドエーザイだ。統合したことで国内後発薬売上高は前期比2割伸びた。

 しかし、利益では大手3社のなかで一人負けの状態だ。コア営業利益(営業利益から一時的な要因を除いたビジネスベースの利益を指す)は40%減の80億円。米子会社セージェントの収益が見込み通り上がらなかったことに伴う減損損失や、国内で行った大規模な自主回収の費用を引当金として計上したことが響いた。21年3月期は再び首位が逆転する。日医工の売上収益は横ばいの1900億円、 コア営業利益は前期比63%減の30億円の見込み。対する沢井製薬の売上収益は10%増の2002億円、コア営業利益は1%増の348億円を予定している。沢井は米国で前期に獲得したジェネリックブランド品の販売が寄与する。

 東和薬品の21年3月期の売上高(日本会計基準)は前期比39%増の1530億円、営業利益は21%増の195億円を計画している。日医工の連結売上収益コア営業利益率は1.6%。沢井製薬の17.3%、東和薬品の12.7%を大きく下回る。日医工の収益率は1ケタ台。沢井、東和薬品に大きく水をあけられている。

 M&Aで自社にない医薬品を手に入れた結果、製品のラインアップは約1220品目にまで膨らんだが、これが足かせとなっている。700台品目後半の沢井製薬や東和薬品を6割程度上回る。他社が撤退した低採算の医薬品を多く製造していることから、規模の大きさが利益に結びつかないと指摘されている。M&Aでひたすら規模を追い求めてきた拡大路線が、大規模な自主回収を繰り返し、業務停止命令を受ける原因となった。

 日医工が業務停止処分を受けたことで沢井製薬(4月からサワイグループホールディングス)の一人勝ちになる公算が大きい。日医工は業務停止命令を受け、業績は一段と悪化する。後発薬そのものの信用にかかわる問題を起こした田村社長の引責辞任は避けられないだろう。日医工の経営体制はどうなるのか。ジェネリック医薬品業界の再編は待ったなしだ。

厚労省が異例の立ち入り調査

 厚生労働省や富山県が医薬品医療機器法に基づき3月24日、日医工の主力の富山第一工場に立ち入り調査に入った。自治体の命令による業務停止期間中に国が調査するのは異例。富山第一工場で品質管理の徹底に向けた改善策が講じられているかを確認するのが目的だ。

 小林化工は3月10日、業務改善計画を提出し、小林広幸社長と小林順子副社長が辞任し、社外から社長を招聘する。親会社オリックスが出資する企業から総括製造販売責任者(総責)を招く。総責は品質保証責任者や安全管理責任者を監督する現場の最高責任者だ。オリックスが買収した動物用ワクチン大手メーカー、微生物化学研究所(京都微研)に在籍している大手製薬会社出身者を招くという。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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