ジェネリック医薬品(後発医薬品)業界では品質管理上の不正が相次ぎ、“ジェネリック不信”につながりかねない雲行きだ。
2020年12月、小林化工(福井県あわら市)で、経口抗菌剤(水虫薬)「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤の成分が混入。この薬を飲んだことによる意識消失や記憶喪失などの健康被害が100件以上報告され、なかには運転中に意識を失い、物損事故を起こしたケースもあった。福井県は、危険度がもっとも高い「クラス1」と判定。過去最長となる116日間の業務停止処分を下した。
日医工(東証1部上場)は出荷検査で不合格となった錠剤を砕いて再加工したり、再検査して出荷した不正が明らかになった。富山県の立ち入り調査で、11年からの10年間、工場長の指示で行われた組織ぐるみの不正だった。抗アレルギー薬や胃腸薬、高血圧、糖尿病の治療薬など75品目を自主回収した。3月、富山県から32日間の業務停止命令の処分を受けた。事態を重くみた厚生労働省は業務再開前に日医工の立ち入り調査を実施した。県の処分中に国が調査に踏み切るのは極めて異例のことだった。
日医工、メディパルと資本業務提携
医薬品卸大手のメディパルホールディングス(HD、東証1部上場)は日医工の第三者割当増資を引き受け、9.9%の株式を持つ筆頭株主になった。1株841円で622万株を発行。全株をメディパルHDが引き受け、52億円を出資したことになる。
メディパルと日医工の関係は深い。有価証券報告書によると、日医工のジェネリック品の総販売実績に占める医薬品卸の割合は、メディパルHD傘下のメディセオ(東京・中央区)が21.1%、金額にして約400億円の取引がある。首位のアルフレッサホールディングス(東証1部)傘下のアルフレッサ(東京・千代田区)の14.6%、スズケン(東証1部)の14.4%より多い。
日医工は調達した資金を、不正が発覚した富山第一工場(富山県滑川市)を含む工場の設備刷新に充てる。原料等の取り違えを防ぐ重量計測システムや不良品検出の精度を高めるX線検査機などを新たに導入するという。4月から富山第一工場での生産を順次再開させているが、現在も出荷ができていない製剤が多い。もっとも遅れるものは来年4月以降になる見通し。再発を防ぐため品質管理にたずさわる人員を増やしている。
日医工や小林化工が生産を一時停止しため、ジェネリック業界全体で供給の遅れが生じている。日医工とメディパルは今後、安定供給のための新たな流通モデルをつくる。生産量を両社で事前に調整するなどして効率的な生産体制づくりを目指す。32日間の業務停止処分の間に調剤薬局など取引先の日医工離れが進んだ。信頼回復が急務となっていた。
日医工の21年4~9月期の最終損益は53億円の黒字
日医工は公表していなかった22年3月期第2四半期(21年4~9月)と通期(22年3月期)の業績予想を公表した。21年4~9月期連結決算(国際会計基準)は売上高にあたる売上収益が940億円(前年同期は896億円)、コア営業利益は50億円の赤字(同13億円の黒字)、最終損益は53億円の赤字(同1億4600万円の黒字)を見込む。
22年3月期の売上収益は1950億円(21年3月期は1882億円)、コア営業利益は7億円(同9億円の黒字)、最終損益2億円(同41億円の赤字)を予想している。2月に子会社にした日医工岐阜工場の売り上げが寄与し増収。薬価改定や富山第一工場での生産・出荷の遅延で21年4~9月期のコア営業利益は前の期の黒字から50億円の赤字に転落する。
生死を預かる医薬品メーカーである日医工は信頼回復が最優先の経営課題である。
(文=編集部)