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村井英一「お金の健康法」

新築マンション、高額なほうが売れる納得の理由…高いほうが税金面でお得な場合も

文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー
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「gettyimages」より

 不動産経済研究所が公表した調査によると、2021年の新築分譲マンションの販売価格は、全国平均で5,115万円と、5年連続で最高値を更新しています。首都圏に限っていえば、6,260万円となっており、こちらも史上最高値を更新しています。不動産価格が高騰したバブル期をも上回る水準で、景気が低迷しているなかでの価格上昇に驚かされます。

 バブル期のように好景気が続き、不動産売買が活況になってマンション販売価格が上昇しているわけではありません。2021年のマンションの販売戸数は前年比では大幅増となりましたが、コロナ以前と比べればそれほど増えているわけではありません。販売が大きく増えているわけではないのに、価格だけは上昇しているのです。原材料価格や建築のための人件費が上昇していることも要因です。しかし、それだけではありません。購入する側が、高い物件を求めるようになっているのです。その理由を見てみましょう。

1.共働きの増加

 ここ数年、というより10年以上、日本の平均所得は上昇していません。しかし、共働きが一般的になり、結婚や出産を経ても退職せずに正社員として働き続ける女性が増えました。すると、一人ひとりの収入は変わらなくても、世帯収入では“倍”になるわけです。夫一人の収入で生計を維持している場合に比べ、住宅購入に充てられる費用は大きくなります。通勤やリモートワークのことを考えると、仕事と家庭の両立を図るために、購入価格が高くなっても住環境を良くしようという夫婦が増えています。

2.親からの援助による予算アップ

 最近、マイホームを購入する子どもに援助する親が増えています。高齢の親世代のほうが資産を持っているからです。それを後押しするように、住宅購入のための資金であれば、一定額までは非課税で贈与できるようになっています。2021年は1,000万円(省エネ住宅や耐震住宅などは1,500万円)まで非課税で贈与できました。なお、2022年は500万円(省エネ住宅や耐震住宅などは1,000万円)に縮小されます。

3.低金利で返済の負担が小さくなった

 これがもっとも大きな理由でしょう。低金利のおかげで、大きな金額で住宅ローンを組んでもあまり負担が重くならないのです。たとえば、35年ローンを組んでマイホームを購入する場合の借入金額を考えます。無理なく返済できる金額を世帯年収の25%とすると、世帯年収800万円の夫婦の場合の返済額は年額200万円となります。すると、借入額の上限は、

・金利5.5%(バブル期の固定金利)の場合 → 約3,100万円

・金利0.475%(最近の変動金利)の場合  → 約6,400万円

となります。

 ボーナス返済を1回30万円とすると、毎月の返済額は約11.7万円です。この返済ペースで借りられる金額が、今は約6,400万円と、バブル期の倍以上になっているのです。今のほうが、同じ程度の負担でかなり高額の物件を購入することができるようになっているのです。

4.住宅ローン減税で高い物件ほどお得に

 今までの理由は「高額のマンションでも購入できる」理由ですが、4.と5.は、「高額のマンションであるほうが好ましい」理由です。住宅ローン減税は、年末の住宅ローン残高の1%分、所得税が減税となる制度です。上限はありますが、この制度が適用されるとかなり税金が少なくなり、所得税がゼロとなる人も少なくありません。

 適用期間は13年間ですので、できるだけ長い間、住宅ローンの残高が多く残っているほうが、減税される金額が大きくなります。そのため、できるだけ高い物件を購入し、住宅ローンを大きく組んだほうが得になります。「高くてもよい」ではなく、「高いほうがよい」ということになります。なお、2022年には減税額は、年末のローン残高の0.7%分に縮小されます。

5.相続税対策でのマンション購入

 2020年に相続税の非課税枠が縮小され、相続税がかかる人が増えました。それだけに相続税対策をする高齢者が増えています。金融資産よりも不動産で保有するほうが、相続財産の評価額が小さくなり、相続税を抑える効果があります。それを目的にマンションを購入する高齢者がいます。相続税をより減らすには、購入するマンションの価格が高いほうがよいわけです。

 1.~3.という「高額のマンションを購入できる」理由に、さらに4.~5.の「高額のマンションであるほうが好ましい」理由が加わって、高額のマンションが求められています。それを受けて、マンションの販売価格は上昇を続けています。2022年になり、税制面で優遇策(2.と4.)が縮小されましたので、ある程度は状況が変わるかもしれません。しかし、低金利が続く間は住宅ローンの負担が小さく(3.)、高額マンションの人気は続くでしょう。マンションの価格上昇はまだ続くかもしれません。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、国際公認投資アナリスト。神奈川大学大学院 経済学研究科卒業。
大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。
ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

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Twitter:@coreca

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