新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあって、住まい選びの考え方が大きく変化しています。これまで以上にさまざまな面で「広い家」が求められるようになっており、それにふさわしい探し方が必要です。どんな物件に目を向ければいいのでしょうか。
収納量拡大や広いリビング、部屋数が求められる
リクルートでは、毎年『住宅購入・建築検討者調査』を行っていますが、最新の2021年版では、長引く新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、住まいに求める条件がどんなふうに変化しているかを聞いています。
その結果が図表1ですが、さまざまなレベルで「広い家」が求められるようになっていることが分かります。
最も多かったのは「収納量を増やしたくなった」と「広いリビングがほしくなった」の26%で、次いで「部屋数がほしくなった」が25%で続き、そのほか、「庭がほしくなった」「仕事専用のスペースがほしくなった」など、上位10項目の半数を「住まいの広さ」に関する項目が占めています。
しかも、上位3項目に関しては新型コロナウイルス感染症拡大が始まった当初と比較するとその割合が大きくアップしているのです。「収納量を増やしたくなった」は2020年4月~5月の調査では20%でしたし、「広いリビングがほしくなった」は21%、「部屋数がほしくなった」は19%でした。それぞれ5ポイントから6ポイント高まっているのです。
広さを求めるには新築は予算的に厳しい面も
コロナ禍で、家族全員の在宅時間が長くなり、親は仕事の資料や書類、パソコンやタブレットなどを置く場所が必要で、子どもも勉強道具を広げるスペースが必要になり、特にリビングには物があふれてしまいます。仕事専用スペースがあればいいのですが、日本の住まい、特に、分譲住宅にはほとんど用意されてきませんでしたから、結果的にリビングでの滞在時間が長くなります。
物があふれるので収納場所が必要であり、広いリビングが求められます。リビング以外に仕事などに集中できるスペースがほしいと考える人も増えます。また、在宅時間が長くなれば自宅で趣味に打ち込んだりするスペース、外出しにくいのでフィットネスなどができるスペースなどを求める人もいます。
それらの希望を実現するためには、住まいの買換え、建替えなどが必要なるのですが、新築住宅は高くて、しかもさほど広くない住まいが大半です。
~築30年まで対象を広げると半値以下で手に入る
たとえば、不動産経済研究所によると、首都圏の新築マンションの平均専有面積は2021年8月では63.28平方メートルで、9月が66.59平方メートルです。コロナ禍でのファミリーを想定すれば、少なくとも70平方メートル台の3LDKがほしいところですが、そうなると平均価格以上の物件にならざるを得ず、取得は簡単ではありません。
そこで注目したいのが、中古マンションです。不動産経済研究所によると、2021年度上半期(4月~9月)の首都圏の新築マンションの平均価格は6702万円ですが、中古マンションに目を向ければ、図表2にあるように安くなります。
~築5年の築浅マンションは6258万円と新築マンションの平均価格とさほど変わりませんが、~築20年で5000万円を切って4761万円になり、~築25年は4003万円と新築マンションに比べて2700万円ほど安くなるのです。さらに思い切って~築30年まで広げると2463万円と新築の半値以下、3分の1近くまでダウンします。
築16年から25年以内なら専有面積は70平方メートル台
築30年といえば、マンションとしての基本性能に不安を感じるかもしれませんが、築30年以内なら竣工年は1991年以降ですから、1986年に新耐震基準が施行されてから5年が経過しており、原則的に新耐震基準に基づいて建てられています。大地震がきても倒壊することがないことが大前提ですから、ある程度安心できます。
中古マンションなので、仲介会社を通して買う場合、消費税を除いた価格の「3%+6万円+消費税」の仲介手数料がかかり、リフォームが必要になる物件も少なくないでしょう。それでも、価格が半値以下であれば、新築に比べれば資金計画は格段にラクになるのではないでしょうか。
しかも、築古のマンションには比較的専有面積が広い物件が多いのです。図表3にあるように、~築5年の築浅物件の専有面積の平均は64.2平方メートルに対して、~築15年は69.6平方メートルで、~築20年は72.8平方メートル、~築25年は70.1平方メートルと広くなっています。~築30年だと61.6平方メートルとむしろ築浅物件より狭くなるのですが、築16年から25年以内にターゲットを絞ると平均でも70平方メートル台を確保できます。
築古のマンションに目を向ければ、コロナ禍で求められる、安くて広い家が手に入るわけです。
築古の一戸建てなら築浅の6割強の価格に
一戸建てについてもある程度マンションと同じようなことが当てはまります。価格については、一戸建ては土地が付いている分、築年数が長くなっても土地値で歩留りがかかるので、マンションほどに価格が下がるわけではありませんが、それでも安くなる点は変わりません。
図表4の折れ線グラフは、首都圏中古一戸建ての築年数帯別の成約価格を示しています。~築5年の築浅物件は4608万円に対して、~築20年では4000万円を切って3830万円まで下がり、~築30年では2937万円と3000万円を切ります。~築5年以内に比べると6割強の予算で手に入れることができるのです。
中古一戸建てならコロナ禍のニーズに対応しやすい
しかも、築古になるしたがっての面積の拡大は、マンション以上の効果があります。先の図表3をみていただくと、~築5年の土地面積は110.1平方メートルですが、~築10年では120平方メートル近くに広がり、~築15年と~築20年は130平方メートル台で、~築25年と~築30年は140平方メートル台です。さらに、築30年以上になると、何と160平方メートル台に広がります。
コロナ禍では、庭の役割も重要になっており、庭でバーベキューを楽しんだり、テントなどを出してキャンプ気分を満喫する楽しみ方が注目されていますが、新築の一戸建てや築浅物件ではちょっと難しいかもしれません。でも、築古物件なら十分に楽しめそうです。
もちろん、土地面積が広ければ、それに応じて建物面積も広くなりますから、収納量を増やしたり、広いリビングにしたり、部屋数を増やしたりといったコロナ禍のニーズに対応しやすくなります。
2021年11月現在、コロナ禍は落ち着いたレベルで推移していますが、いつ第6波がやってくるか分かりませんし、新型コロナウイルス感染症が終息しても、次の感染症が発生しないとも限りません。
ですから、今回のコロナ禍における住まい選びの条件の変化は、今後もある程度続いていく可能性があるのではないでしょうか。中古住宅、なかでも安くて広い住まいを手入れることができる築古物件への注目度が高まる可能性がありそうです。