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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

住宅購入、今、早まって購入はダメ!国の各種支援制度が期限延長?絶対知っておくべき概要

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 現在実施されている住宅取得支援策の多くは、2019年10月の消費税引上げや2020年からのコロナ禍に対応した時限措置であり、間もなくその期限が切れます。そのため、住宅メーカーや不動産会社などでは、「早く買わないと支援策の恩恵を受けられなくなる」などと購入を煽っていますが、実際には期限が延長されそうなので、焦る必要はなさそうです。

ほとんどの支援策は時限措置になっている

 多くの人に住宅を取得してもらい、住宅投資を増やして景気回復を促進するため、国はさまざまな住宅取得支援策を実施しています。現在のところ、主なものとしては次の3点を挙げることができます。

(1)住宅ローン減税

(2)住宅取得等のための資金贈与に係わる贈与税非課税措置

(3)グリーン住宅ポイント

(1)の住宅ローン減税は、従来は控除期間10年で、一般の住宅は10年間で最大400万円、長期優良住宅などの認定住宅は500万円だったのが、現在は図表1にあるように、控除期間が13年に延長され、控除額は一般の住宅は13年間で最大480万円、認定住宅は600万円に拡充されています。

 ただし、その対象となるのは、注文住宅は2021年9月末までに、分譲住宅などは2021年11月末までに契約し、ともに2022年12月末までに入居することが条件になっています。

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長寿命住宅(200年住宅)税制の創設 (登録免許税・不動産取得税・固定資産税)

贈与税の非課税措置も2021年12月末まで

 特に注文住宅については、相談を始めてから契約に至るまでには一定の時間が必要ですから、21年9月末までの契約にはもうほとんど間に合いません。

(2)の贈与税の非課税枠は、両親や祖父母などの直系尊属からの住宅取得のための資金贈与については、バリアフリーなどの一定の条件を満たす質の高い住宅については1500万円まで、一般の住宅は1000万円まで非課税にしてくれる制度ですが、これも2121年12月末までに契約することが条件になっているのです。

 両親などから1500万円の贈与を受けると、この非課税枠がなれば、年間の基礎控除110万円を引いた1390万円が課税対象になります。税率は45%で、控除額が175万円ですから、税額計算は、

1390万円×0.45-175万円=450.5万円

で450.5万円の贈与税がかかります。1500万円もらっても、実際に住宅取得に使えるのは1000万円ほどにすぎません。それが、この非課税枠を利用できれば税額はゼロになって、1500万円をそのまま取得資金に充てることができるのですから、非課税枠のメリットには大きなものがあります。

グリーン住宅ポイントは10月末の契約まで

(3)のグリーン住宅ポイント制度は、一定の条件を満たす新築住宅、中古住宅の取得やリフォーム、賃貸住宅の建設などを対象にポイントを付与する制度で、図表2にあるように、新築住宅は原則1戸当たり40万円相当のポイントですが、東京圏からの移住のための住宅、多子世帯が取得する住宅、三世代同居仕様である住宅、災害リスクの高い区域からの移住のための住宅については加算ポイントがついて、最大100万ポイントになります。

 この制度も2021年10月末までに工事請負契約や不動産売買契約を締結することが条件になっています。こちらももうほとんど時間が残されていません。「早くしないと、100万ポイントをもらえなくなりますよ」と焦らせる不動産会社や住宅メーカーの担当者などが多いのではないでしょうか。

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(資料:グリーン住宅ポイントホームページ

時限措置はいずれも延長される可能性が高い

 しかし、これらの時限措置、いずれも延長される可能性が高いのです。ですから、住宅メーカーや不動産会社などの煽りに乗せられて購入に動く必要はないかもしれません。あまり急いでしまうと選択を誤って後悔することになりかねないので、ここはジックリと腰を据えて、この先どうなるのかを見極めたほうがいいのではないでしょうか。

 ただし、一方では首都圏を中心にマンション、一戸建ての価格が、新築、中古の別を問わずに急速に上昇しているという現実もあります。ですから、あまりのんびりしていると、住宅価格が上昇して手が届かなくなってしまう可能性がないとはいえません。悩ましいところですが、そのあたりは市場の動向を見極めながら自分たちの事情に合わせて判断するようにしてください。

グリーン住宅ポイントは国土交通省判断で

 では、どんなふうに延長される可能性が高いのでしょうか。

 まず、(3)のグリーン住宅ポイント制度は、2021年度の第三次補正予算に盛り込まれて2021年3月末にスタートしました。予算枠は1094億円ですが、国土交通省による2021年7月末時点での累計発行ポイントは約100億ポイントにとどまっています。予算枠の1割以下の消化率で、このままでは予算を使い切ることはできないとみられます。

 現在のところ、2021年10月末までに建築請負契約や不動産売買契約を提携することが条件になっていますが、国土交通省は2021年11月以降の契約であっても、ポイントの対象になるように期限を延長することになるのではないかとみられています。

 すでに予算が組まれていますから、国土交通省の内部の調整だけで延長は可能です。(1)~(3)の住宅取得支援策のなかでも、このグリーン住宅ポイント制度が最も時限措置の延長を実施しやすいのではないでしょか。現実的には、2021年度いっぱい、2022年3月までの延長などが想定されます。

業界団体は揃って時限措置の延長を要望

 それに対して、(1)の住宅ローン減税と、(2)の贈与税の非課税措置の期限に関しては、税制に関する法律で定められており、期限を延長するためには、税制改正が必要になります。周知のように、例年各省庁の税制改正要望が8月末にまとめられ、与党内で議論が進められて、12月中旬には「税制大綱」としてまとめられます。

 それに向けて、不動産協会、住宅生産団体連合会(住団連)などの住宅、不動産関係団体は国会議員や中央省庁への働きかけを行っており、例外なく、(1)(2)の期限延長を要望しています。

 たとえば住団連の要望の骨子は図表3にある通りです。住宅ローン減税、贈与税非課税措置ともに、「ただちに延長し、景気が回復するまで当分の間、継続実施されたい」としています。

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(資料:住宅生産団体連合会ホームページ

期限切れ段階まで遡って拡充策を適用

 業界団体の与党議員や国土交通省への働きかけの感触としては、「ほとんどの先生方が理解を示してくれている」としており、国土交通省でも延長に向けて本格的な取組みを始めているようです。

 現実的には、税制改正が実施されるのは、2022年3月末に税制改正案が国会で成立してからになります。その段階では、ローン減税について、注文住宅は2021年9月末、分譲住宅は11月末で期限が切れているので、2021年10月に遡って現在の拡充策を適用することになるでしょう。

 贈与税の非課税枠についても、2022年3月段階では2021年12月末で期限が切れているものの、2022年1月に遡って拡充策を延長することになるでしょう。

時限即継続の広報をできるだけ早く実施へ

 つまり、現実には住宅ローン減税の拡充策や贈与税の非課税措置が切れ目なく継続されることになる可能性が高いわけですが、問題はそれを速やかに消費者に広報することです。業界としては、年内は「早くしないと支援策を利用できなくなる」と煽りながら、契約をできるだけ多く勝ち取ってから、時限措置が延長されることになった形になるのが一番いいのでしょうが、それでは消費者は不安ですし、焦って失敗するもとになりかねません。

 できるだけ早い段階で、国が責任を持って時限措置の継続を広く広報することで、消費者が安心して住宅を取得できるような仕組みを考えていただきたいものです。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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