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ロシア、ポーランド等へのガス供給停止を通告…ロシア外相、核戦争は「現実」と発言

文=Business Journal編集部
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ロシア産天然ガスの停止を伝えるポーランドエネルギー大手PGNiG公式サイト
ロシア産天然ガスの供給停止を伝えるポーランドエネルギー大手PGNiG公式サイト

 ついにロシアが切り札を出してきた。

 ポーランドアンナ・モスクワ気候環境相は26日(現地時間)、「ポーランドのガス安全保障」をテーマに会見し、ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムから、ガス供給を同日中に停止するとの通告を受けたことを明らかにした。ロイター通信、時事通信などによると、ブルガリアも同様の発表を行ったという。会見でモスクワ環境相は「供給元はほかにもあり、国内のガス供給が止まることはありません」と呼びかけた。

 またモスクワ環境相は会見に先立ち、以下のように自身の公式Twitterアカウント上に投稿し、重ねて同国民に平静を保つよう呼びかけている。

「ポーランドには、私たちの安全を守るために必要なガスの備蓄と供給源があります。私たちは何年もの間、ロシアから事実上独立してきました。ガス貯蔵施設の備蓄は76%です。ポーランドの住宅ではガスが不足することはありません」

ポーランドは以前からロシア産ガスの禁輸を主張

 ロシア軍によるウクライナ侵攻に対し、西側諸国は「国際決済ネットワーク=SWIFT」からの排除など一連の金融・経済制裁を発動。これに対し、ロシア政府は“友好的ではない国”に最後通告を送付。今月1日からガス代金をルーブル建で支払うことを求め、実施されない場合はガスの供給停止をほのめかしていた。

 ポーランドのエネルギー大手PGNiGは26日、公式サイトに「26.04.2022 PGNiG i GAZ-SYSTEM: informacja w sprawie dostaw gazu w kontrakcie jamalskim」(ヤマル契約に基づくガス供給に関する情報)とのプレスリリースを発表。ガスプロムから供給停止の通告を受けたとし、「供給停止に関連する状況を継続的に監視している」と報告した。国内消費者に向けたガス供給インフラは順調に機能していることを強調。以下のように解説している。

「ガス供給源を多様化するという政府戦略の実施により、PGNiGは以下のような様々な方向からガスを入手する準備ができています。西と南の国境のガス接続とシフィノウィシチェの液化天然ガスLNG)ターミナルを経由し、サービスを提供するLNG船の数を次々と増やしています。バランスシートは、国内のガス生産と地下のガス貯蔵施設に蓄積された燃料備蓄によって補完されます。現在、倉庫の充填レベルは約80%であり、前年同期よりも大幅に高くなっています」

 同社や気候環境省の2020年の統計では、同国の天然ガス総輸入の約55%をロシア産で賄っている。一方、同国政府は近年、米国や中東地域のLNGへの移行を進め、供給源の多様化を目指す方針を示していた。また同国政府は今回のロシア軍によるウクライナ侵攻を受け、欧州連合(EU)に対し、ロシアからのガス禁輸を呼び掛けていた。

焦点のドイツ、供給停止なら「バイエルン州の2割生産停止」

 日本の経済産業省関係者は「今後、焦点となるのはロシアが“天然ガスカード”を欧州最大級のロシア産石油・天然ガス依存国ドイツに対して、いつ、どのタイミングで使うかどうかでしょう」と懸念する。その上で、日本貿易振興機構(JETRO)が26日に公表した『天然ガス供給停止の場合、ドイツ・バイエルン州企業の2割が生産停止に』との短信を示した。

 同短信は、ドイツ南部バイエルン州の経済団体バイエルン経済連盟(vbw)がエネルギー、天然ガスの供給に関する企業アンケート結果を公表したことを伝えるものだ。

 金属・電機産業、その他製造業、建設・商業・ホテルなどのサービス業などに携わる同州企業に対して、4月4~13日、1141社に対しアンケートをしたもので、「天然ガス供給が短期的に停止した場合、22.0%の企業が『生産またはビジネスが完全に停止する』と回答」し、「エネルギー集約型産業に限定すると、『生産またはビジネスが完全に停止する』とした企業は全体の33.5%になった」という。

 英BBC(日本版)の21日付記事『ロシア産原油、即時禁輸はしないとドイツ財務相 政権内ですれ違いか』によると、ドイツのクリスチャン・リントナー財務相がロシアのエネルギーへの依存を解消するために「できるだけ早く」動いているが、時間がかかるとの見方を示す一方、アナレナ・ベアボック外相は「ドイツは年内にロシアからの原油の輸入を終了し、ガスもそれに続く」などと述べたと報じた。同国政府内でも混乱が見られるようだ。

 米経済誌編集者は一連の動きに関し、次のように語った。

「ドイツもまたガス代金のルーブル建て支払いを拒否する方針です。一方で、欧米諸国がウクライナに対して“重い兵器”(りゅう弾砲や装甲車、戦車など)への供給を始めたことを受け、ドイツは26日、ゲパルト対空戦車のウクライナに提供することを公表しました。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は同日、ロシアメディアのインタビューに応じ、西側諸国の一連の武器援助を『代理戦争』と指摘。核戦争の危険性についても『それは現実で、過小評価できない』などと述べ、一層態度を硬化させています。ロシアもまた欧米との全面戦争は回避したいと考えているとは思いますが、戦争に至る前に使える“カード”はすべて使う可能性が高いと思います。現状、ガス供給が止まればドイツはもちろん、世界経済への影響は大きいとは思います」

(文=Business Journal編集部)

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