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たかぎこういち「“イケてる大先輩”が一刀両断」

コラボ「ユニクロ アンド マルニ」初日に完売続出の大ヒットの秘密

文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師
コラボ「ユニクロ アンド マルニ」初日に完売続出の大ヒットの秘密の画像1
ユニクロのHPより

 5月20日、ユニクロ(UNIQLO)とイタリアのファッションブランド・マルニ(MARNI)のコラボレーション「ユニクロ アンド マルニ(UNIQLO and MARNI)」が、全国のユニクロ主要124店舖とオンラインで発売された。朝に長い行列ができるほどの混雑ではなかったものの、平日にもかかわらず銀座店の12階イベントフロアには、服好きとおぼしき客が多数みられた。

 今回のコラボ商品では、転売目的の購入を防ぐために1人1アイテムの販売規制が実施された。過去にはユニクロのコレクション「+J」発売日に長蛇の列ができ、転売目的のまとめ買いが目立った。売切れアイテムがメルカリで高額な価格をつけられ再販されて話題を呼んだ。それを受け2021年3月の「+J」発売前には、ユニクロとメルカリが消費者保護のために事前の情報提供や転売目的の出品者への規制を発表した。今回も転売目的の購入を規制したにもかかわらず、発売初日に完売するアイテムが続出し、オンライン販売では午後からメンズ商品で完売商品が出始めた。この興味深い話題をいくつかの視点から深掘りしてみたい。

1.初日完売までの過程

 ユニクロは近年「+J」や「マメ クロゴウチ」「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」「ジェイ・ダブリュウ・アンダーソン(J・W・Anderson)など、他社デザイナーとのコラボコレクションの販売が連続している。ユニクロらしいのは“コラボありき”ではなく、ユニクロのシーズンディレクションの延長線上にある点だ。なので年によってコラボ相手も回数も変わる。今回のコラボレーションコレクション発売までの過程をたどってみよう。

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『アパレル業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(たかぎこういち/技術評論社)

 通常グローバル展開するブランドの企画は1年前のディレクション決めからスタートし、販売計画、生産計画などが立案される。これは、アパレル産業の過程が大きく分けて3段階に分かれるためである。まずは、川上と呼ばれるオリジナル素材や付属品の開発、生産が必要となる。そのためには販売計画をベースにデザイン企画数、販売数などの検討が並行して進む。それから川中と呼ばれる生産ラインの準備が必要となり、生産工場ラインの仮押さえが決まる。川下と呼ぶ販売店、今回は売場面積の異なるユニクロ全店舗でのMD
(マーチャンダイジング)別の商品発売となる。

 もちろんサプライチェーンは海外生産なので国際間の物流手配も必要となる。コロナ禍によりサプライチェーンの乱れや工場の稼働停止などで昨年は秋物のコラボ商品発売日が大幅に遅れた。今回も事前のオンライン発売告知では一部アイテムは5月下旬と表記されていたが、実際は20日の発売日にフルラインが揃って店頭に並んだ。関係部署には多大な苦労があったと推測される。

 WWDに掲載された、ファーストリテイリンググループ執行役員ユニクロR&D統括責任者、勝田幸宏氏へのインタビュー記事によると、マルニへのコンタクトは発売1年前である。勝田氏はWWD記事内で次のように語っている。

「2022年春夏商品について考える中で、その頃にはコロナによる自粛も終わり始めて、世の中に『解放されたい』というムードが広がるだろうと予想していた。そういった空気を洋服に置き換えると、鮮やかな色や柄のアイテムを元気よく着たいとみんな感じるようになるんじゃないかと考えた。社内で使っている22年春夏のキーワードの1つが“リバレーション(解放)”だが、解放をユニクロとしてどう表現するか」

 ユニクロは2019年9月にイタリアのミラノにショップをオープンしており、マルニ側もユニクロの商品をよく知っていたといわれている。こうして今回のマルニらしい大胆なカラー、柄表現が用いられた。フォルム(立体的な形)のデザインも新鮮である。初日完売した商品がすべて大胆な柄使いだったのも頷ける。早い時期から詳細な商品情報がネット上で公開され、服好きの消費者の期待を大きくさせた。マルニの認知度はラグジュアリーブランドのなかでは高くないが、この予想以上の結果を見れば今回の施策の成功を認めない者はいないであろう。

2.マルニから学べること

 マルニは1994年にミラノで誕生した。創業者兼デザイナーはコンスエロ・カスティリオーニである。彼女の夫はフェンディの毛皮製品の製造を手掛ける毛皮メーカー「Ciwi Furs」の社長を務めるジャン・カスティリオーニである。マルニは創業当初は毛皮製品のみを展開していたが、1996年からニット、布製品、アクセサリーなどをコレクションに加えた。2007年からメンズラインを展開するなど、その人気とともにブランドの製品戦略を広げていった。

 最近では、日本の吉田カバンとのコラボレーションも人気を博している。12年に現在のイタリアのディーゼルの親会社であるOTB(オンリー・ザ・ブレイブ)に買収された。CEOの交代に続きコンスエロは16年にクリエイティブディレクターを退任。現在まで彼女と同じくイタリア出身のフランチェスコ・リッソが同職を務める。19年春に表参道ヒルズに世界最大の旗艦店をオープンした。

 OTBは「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」「マルニ(MARNI)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」などを擁し、21年12月通期決算は売上高が前期比16.2%増の15億3000万ユーロ(約2004億円)、営業利益は同1285.1%増の1億8700万ユーロ(約244億円)だった。19年比では、売上高はほぼ横ばい、営業利益は938.8%増とコロナ禍以前を上回る結果となった。マルニ単体の売上シェアは10%前後(200億円)と推測されている。売上の60%は世界の直営店とオンライン販売、40%が卸販売といわれる。

 日本国内で売上規模200億円のアパレル企業は珍しくない。マルニも5年前は売上160億円前後であった。日本のアパレル企業も縮む国内市場一辺倒からの脱却は喫緊の課題である。

まとめ

 衣服は時代の鏡といわれるが、今回のユニクロ アンド マルニのヒットも、消費者が開放的な気分と買い物の楽しさを求めている証左といえる。コロナ禍以降は暗い話題が多く語られるアパレル業界である。しかし、確実に市場には潜んだ需要がまだまだ眠っている。生まれ続ける新市場に視点を変えて挑戦していく価値は充分ある。

コラボ「ユニクロ アンド マルニ」初日に完売続出の大ヒットの秘密の画像3
『アパレルは死んだのか』(たかぎこういち/総合法令出版)

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

カギ&アソシエイツ 代表/スタイルアドバイザー/コンサルタント(ファッション視点からの市場創造)/東京モード学園ファッションビジネス学科講師

1952年、大阪生まれ。奈良県立大学中退。大阪で服飾雑貨卸業を起業。22歳で単身渡欧後法人化代表取締役就任、1997年香港に渡り1998年、現フォリフォリジャパングループとの合併会社取締役に就任。オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場の成功に導く。また、第1回東京ガールズコレクションに参画。米国の有名ファッション展示会「d&a」の日本窓口なども務めた。時代に沿ったブランディング、MD手法には定評がある。2013年にファッションビジネスのコンサルティング会社「タカギ&アソシエイツ」を設立。著書に『オロビアンコの奇跡』『超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック(共著)』(共に繊研新聞社)、『一流に見える服装術』(日本実業出版社)、『アパレルは死んだのか』(総合法令出版)『アパレル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。
コンサルタントのタカギ&アソシエイツ

Instagram:@kohichi.takagi

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