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低価格のカシミアより3千円のユニクロのセーターを買うべき?圧巻の品質&コスパ

取材・文=福永全体/A4studio
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セーター
「Getty Images」より

 この時期、冬物の服を買い足している人も多いだろうが、Twitterではとあるユーザーが「秋冬服を買うとき用メモ」と題して投稿したツイートが大きな反響を呼んでいた。

レーヨン70%ナイロン30%は毛玉になりにくい」

「レーヨンとポリエステルの混合は毛玉になる」

「化学繊維(アクリル、ポリエステル等)も毛玉になる」

「動物繊維(ウール、アンゴラ等)も毛玉になるが取りやすい」

といった冬服に使われることの多い素材の特徴をまとめたもの。11月9日現在までに2.9万回リツイートされており、多くの人々に情報がシェアされたようだ。このように素材の特徴を知ったうえで買い物をすれば失敗は減るだろうし、長く付き合える服に出会える確率も高まるはず。

 そこで今回はファッションジャーナリストの南充浩氏に、長く着られる冬服、特にニットの選び方について話を聞いた。

毛玉ができにくく、長く着られるのはどんな素材?

 冬服にまつわる悩みのひとつに、毛玉ができてしまうことが挙げられるだろう。長く着るなら、より毛玉ができにくいものを選びたいもの。そもそも、毛玉ができるメカニズムはどのようなものなのだろうか。

「衣服の生地を構成しているのは1本1本の糸で、その糸はさらに細かい繊維が集まってできています。その糸を構成している繊維が摩擦によって毛羽立ってくる(元から毛羽立っている糸は特に)と、そこにホコリや周囲の繊維が絡み、毛玉ができるんです。ですから基本的には糸の性質で毛玉のできやすさは決まってきます」(南氏)

 では、話題になったツイートの内容の真偽はいかがだろうか。

「ツイートの内容は、大まかには間違っていないです。しかし、同じ素材でも品質や編み方、織り方によって毛玉になりやすさは変わってくるので、“一概にはいえない”というのが正直なところですね」(南氏)

 それでは、ひとくくりにして語るのは難しいという前提のうえで、具体的な素材について伺っていこう。

「“レーヨン70%ナイロン30%は毛玉になりにくい”とありましたが、それは正しいでしょうね。レーヨンがそもそも毛玉になりにくい繊維なので、そのおかげだと思います。過去に自分が持っていた製品を見ても、レーヨンが多く入ったセーターは毛玉になりにくかったです。しかし、ナイロンは毛玉になることもあるので、この比率が変化するとまた話が変わってくるでしょう。

“レーヨンとポリエステルの混合だと毛玉になりやすい”ともありましたが、これも合っていると思います。レーヨンは毛玉になりにくいですが、割合によってはポリエステルの毛玉ができやすい性質が勝ってしまう可能性がありますからね」(南氏)

“ウールやアンゴラなどの動物繊維は毛玉ができるにしても毛玉が取りやすい”とも書かれていたが、その理由も気になるところだ。

「化学繊維は繊維自体の強度もあるので毛玉が取りづらくなります。一方で動物繊維は柔らかくて弱い繊維なので、ちょっとつまんだり、何かの拍子で擦れたりするとポロっと落ちることがあるんですね。

 ちなみに、動物繊維のなかでも紡毛(ぼうもう)と梳毛(そもう)という2種類の紡ぎ方があるのですが、梳毛だと毛玉ができにくいです。紡毛は短い繊維も長い繊維も一緒くたにして紡ぐ方法ですが、一方で梳毛はある程度繊維の長さを揃えてから紡ぎます。梳毛だと長さが揃っている分、出来上がった糸自体に毛羽が少ないので、毛玉ができにくいのも必然でしょう。ただ手間がかかっている分、梳毛のセーターは高価になるので、今は高級ブランドくらいしか扱いがないと思います。ユニクロなどで販売されているセーターはほとんど紡毛ですね」(南氏)

買うなら業界内でも高評価のユニクロのニット一択?

 では、実際の買い物の参考になるように具体的な商品について聞いていこう。安価で購入できる割にクオリティが高いニットは、どのように見抜けばいいのだろうか。

「僕は総合的に考えて、ユニクロのセーターがナンバーワンじゃないかと思っています。ユニクロの2990円~3990円くらいで買えるラインは、使っている素材の良さと値段の安さのバランスが抜群なので、業界内でもかなり評価が高いんです。

 今出ているものでいえば、『エクストラファインメリノクルーネックセーター(長袖)』(2990円、税込、以下同)や、『プレミアムラムクルーネックセーター(長袖)』(2990円)あたりでしょうか。両方とも、この価格でウール100%を実現しています。

 あくまで私個人の経験ではありますが、冬場に週1、2回のペースで着ているユニクロのニットが、虫食い対策以外の特別な手入れなしでも10年ほど着られていますから、長持ちすると思いますよ」(南氏)

 なるほど。では、本当に長く着られるニットを探していて、値段も2~3万円まで出せるという人におすすめの選び方も教えていただこう。

「洋服の世界はブランドネームで価値が決まることも多く、一概に値段と品質が比例するわけではないので難しいところですね。ただ上限を2~3万円とするのであれば、基本的には先ほど挙げたユニクロの2990円~3990円くらいで買えるラインで十分ではないでしょうか。それでももう少し良い物をということであれば、ユニクロのようなネームバリューを売りにしていないブランドの、梳毛のウールをチョイスするのがいいかもしれません」(南氏)

 専門家の南氏が、一般的に高級なイメージを持たれるカシミアではなく、ウールを推すのは意外な気がするが、どういった理由なのだろうか。

「確かにカシミアは上品な質感で毛玉もできにくいので、10年前であれば僕はカシミアをすすめていたと思います。しかし、カシミアでトップクラスの品質を求めたら10万円を越えるくらいになるので、2~3万円で買えるカシミアはほとんど最低ライン。また、最近は原料などの値上がりもあって、2~3万円のカシミアというとだいぶクオリティを落としているはずなんです。

 その一方で、ウールなら先ほど挙げたユニクロのアイテムなど、3000円ぐらいから上質なものがあるため、2~3万円出してカシミアの最低ラインのものを買うのであれば、同価格のウールで十分でしょう。実際、細い梳毛のウールを使ったセーターであれば、ファッションに精通している人であっても、カシミアとあまり区別できないくらいのクオリティに仕上がっています。ですから2~3万円出してできるだけ上質なニットがほしいのであれば、ウールの上級なものを選んだほうがお得だと思います」(南氏)

 サステナブルファッションが叫ばれる昨今のムードを踏まえれば、クローゼットを少数精鋭にしていきたいもの。この冬は、長く付き合っていけそうなニットを探してみてはいかがだろうか。
(取材・文=福永全体/A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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