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ワキ汗やワキガ、多彩な治療の選択肢!夏到来の前に治療を

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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ワキガは治療できる!(「Getty Images」より)

 5月最後の週末、東京都心では最高気温が30度を超え、今年初の真夏日となった。例年より早い夏の到来は、「汗」の悩みを抱える人にとって、ストレスが一つ増えるといっても過言ではないだろう。

 汗に悩む人は非常に多く、なかでも「ワキ汗」や「ワキガ」は、その程度によっては仕事や人間関係に影響を及ぼすこともある。実は、ワキ汗やワキガは治療できるが、あまり広く知られていない。ワキ汗やワキガの治療について、大阪府豊中市の千里中央花ふさ皮ふ科院長・花房崇明医師に話を聞いた。

 誰しも運動時や気温が高い環境に置かれた場合、シャツに汗ジミができるほどの多くの汗をかくだろう。しかしながら、そういった環境下ではないにもかかわらず、多くの汗をかく場合、「多汗症」という病気の可能性がある。しかし、汗っかき=多汗症ではなく、多汗症には一定の診断基準がある。

「局所的に過剰な発汗が、明らかな原因がないまま 6カ月以上認められ、次に解説する6症状のうち、2項目以上あてはまる場合を『多汗症』と診断します」(花房医師)

 その6症状とは、下記の通りである。

(1)最初に症状がでるのが、25歳以下であること

(2)対称性に発汗がみられること

(3)睡眠中は、発汗が止まっていること

(4)1週間に1回以上、多汗のエピソードがあること

(5)家族歴がみられること

(6)それらによって、日常生活に支障をきたすこと

「局所多汗症が出やすい部位は、腋窩、手掌、足底です。また、顔面や頭皮、胸腹部などにもみられることがあります。有病率は腋窩の多汗症が5.75%と高く、当院への相談の多さも、ワキ汗がもっとも多い印象です」(同)

 一般に「ワキ汗」と呼ばれている症状にも、正式な病名がある。

「ワキ汗は、『原発性腋窩多汗症』という病名があります。左右対称性に下着やシャツにしみができるほど多汗がみられ、時に1日のうち何回も着替える必要があるほどの症状が特徴です。制服を着用するような職業や対人関係に関わるような職業に就く人の場合、社会活動や精神活動に悪影響を及ぼしているケースもありますので、そういった方には近くの皮膚科へ相談してほしいと思います」(同)

 ワキ汗に限らず多汗症には家族歴がある場合があり、多汗症に悩む患者の一部には、なんらかの遺伝的要因も背景にあると考えられている。しかしながら、はっきりとした原因は不明であり、努力によって治せる症状ではないため、一人で悩まずに治療を行うことが望ましいといえる。

ワキ汗とワキガの違い

「汗は汗腺から分泌されます。ヒトの汗腺には、ほぼ全身に分布するエクリン汗腺と、腋窩など特定の部位に存在するアポクリン汗腺の2種類があり、汗をつくり表皮へ送り出します」(同)

 エクリン汗腺とアポクリン汗腺の特徴は下記の通りだ。

(1)エクリン汗腺…口唇や亀頭などの一部を除き、全身の皮膚に存在しており、手掌・足底と腋窩にもっとも多く存在する。エクリン汗腺から分泌される汗の99%は水分で、残りはわずかな塩分やミネラルが含まれている。

(2)アポクリン汗腺…哺乳類の芳香腺が退化したもので、腋窩や外耳道、鼻翼、鼻前庭、乳輪、臍囲、外陰部に多数存在する。

「脇のエクリン汗腺からの過剰分泌がワキ汗、アポクリン汗腺からの過剰分泌がワキガ(腋臭症)の原因です。腋臭症ではアポクリン汗腺から分泌される汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚表面の細菌の作用で分解され、特有のにおいを生じます」(同)

 99%が水分というエクリン汗腺からの汗も時間の経過とともに不快なにおいを生じる場合もあるという。

「エクリン汗腺の過剰分泌によるワキ汗の場合も、汗そのものは無臭ですが、放置することで細菌が増殖し、においを生じます。自分ではにおいを自覚しないことも多く、家族や周囲の人に促されて受診する場合も多くあります」(同)

ワキ汗、ワキガの治療

 ワキ汗を含む多汗症やワキガで医療機関を受診する際は、皮膚科が専門となる。いくつかの治療薬が存在する。

「内服では、抗コリン薬や漢方が処方されますが、抗コリン薬は制汗効果がある一方で、ふらつきやめまい、目の乾き、口の乾きなどが起きる可能性もあり、副作用にも注意が必要です。外用薬では、抗コリン作用を介して局所の発汗を抑える塗り薬があります」(同)

 最近では、2012年から健康保険適用となった腋窩多汗症のA型ボツリヌストキシン注射を行う人が増えているという。

「A型ボツリヌストキシン注射は神経伝達をブロックし、汗を抑えます。A型ボツリヌストキシン注射の場合は、4~9カ月に一度の間隔で繰り返す必要があります。保険適応のクリニックと、自費診療として行っているクリニックがあります」(同)

 保険適応外の自由診療では治療の選択肢はさらに広がり、塩化アルミニウム製剤の塗り薬やミラドライと呼ばれる治療法がある。

「塩化アルミニウム製剤の塗り薬は、アルミニウムイオンが蛋白を凝集させ、汗の分泌腺を塞ぐため、汗が抑えられます。ミラドライは、マイクロ波を用いてワキ汗の原因のエクリン腺を焼灼、変性させる治療法です。ワキ汗やワキガには複数の治療法がありますので、医師と相談の上、ご自身が納得する治療法を受けていただきたいと思います」(同)

 近年、においにより周囲を不快にさせるスメルハラスメント(スメハラ)という言葉もあるほどで、においには注意が必要となってきている。本格的な夏が始まる前に汗の悩みを解決し、アクティブな夏を迎えてほしい。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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