貸会議室大手のティーケーピー(以下、TKP)代表取締役社長の河野貴輝氏は、2005年8月に同社を設立後、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災による会議室利用の減少など、さまざまな危機に見舞われるも、「持たざる経営」で乗り越えてきた。アパホテルとの業務提携やシェアオフィスサービスを展開する日本リージャスの子会社化などを経て、今後もシナジー効果を発揮できる企業との提携やM&Aを積極的に進める方針だ。TKPは「持たざる経営」でどのようなビジネスモデルを描いているのか。河野氏に話を聞いた。
TKPが積極的にM&Aを進める理由
――TKPは2019年に、レンタルオフィスサービスを展開する日本リージャスを完全子会社化しました。
河野貴輝氏(以下、河野) 現在、全国172拠点にリージャスのレンタルオフィスを展開しています。最近では、フランチャイズ化を進め、収益性の高いビジネスモデルを展開する方針を示しました。都市部はTKPが直営で運営しますが、一方でFC化を進め、地方の各地域での拡大を目指していきます。
――M&Aも積極的に展開する方針ですね。
河野 貸会議室やイベントホール、ホテル事業などとシナジーのある企業を募集しています。TKPはこれまでも、日本リージャスや品川配ぜん人紹介所など計8件のM&Aを実施してきました。また、スポーツ業界やブライダル業界などとの資本・業務提携の実績もあります。今後も、シナジーを創出できる企業とのM&Aを積極的に進める方針です。
TKPの貸会議室などを活用しているのは企業の人事部や総務部が多く、新卒採用セミナーや新入社員セミナーなどで活用されています。ユーザーがよりアップセルできるために、事業提携やM&Aを進めていきます。
――どのような企業に対して、募集をかけていますか。
河野 たとえば、イベントや会社説明で使用する動画を作成したり、ライブ配信をしたりする制作会社、研修講師を抱えている企業が対象です。そうした企業とのM&Aや事業提携が実現すれば、TKPの貸会議室をもっと活用いただけるようになります。また、現在、メタバースが注目されているように、今後はリアルとバーチャルが融合した懇親会などを開催できるようになるでしょう。そのようなイベントができる会社にも触手を伸ばしたいところです。M&Aの募集を始めてから、1日4~5件の申し出があります。
――本業とのシナジーが相当期待できそうですね。
河野 TKPの貸会議室を利用すればアパホテルもついてくる、というビジネスモデルであれば、ただ貸会議室を提供するよりも魅力が増します。たとえば地方から来て東京で会議をする際に、同時に宿泊も手配できるため楽です。
――コロナ禍で打撃を受けた部分もあるかと思いますが、パーティーの開催などでホテルには人が戻ってきているのでしょうか。
河野 品川配ぜん人紹介所の動向を見ると、戻りつつあるというのが実感です。まだ人数制限をしてはいますが、宴会やパーティーの出席者も徐々に増えています。本格的に客足が戻るには、あと半年から1年はかかると思います。