みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーの経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者・松下一功です。
2年前からの新型コロナウイルス感染拡大を受けて、いろいろな業界で価格競争が激化しています。その一方で、高価格にもかかわらず、売り上げを伸ばしている企業もあります。
たとえば、世界的な高級ブランドのグッチやシャネル、サンローランやバレンシアなどは、軒並み好調です。グッチはハイエンド化で、シャネルはさらなる付加価値をプラスして値上げに踏み切り、成功しました。
また、高級ブランド以外に目をやると、いわゆる眠活市場の注目度が高まり、高級ベッドの売れ行きが上昇。さらに、観葉植物は数十万円クラスのものが売れているといいます。
景気がいいとは言えない今の時代で、なぜ高価格帯の商品が飛ぶように売れているのか? その理由をご説明しましょう。
高い商品を買う消費者心理とは?
コロナ禍により、不要不急の外出を控えるようになったり、人との接触を控えるようになったり、私たちの生活スタイルは一変しました。そうした影響を受けて、企業の中には売り上げが減少し、経営状態が悪化したケースもあるでしょう。それは、消費者の「ニーズ」と「ウォンツ」がより明確となり、お金の使いどころを分ける傾向が強くなっているからだと推測できます。
たとえば、コロナ前であれば、ランチはワンコインで安く済ませる一方で、ディナーは多少高くても好きなものを食べたい、という人が多かったと思います。しかし、外食すること自体が減った状況では、ランチの店もしっかり選びたい、というふうに意識が変わっています。中には、コロナ前とは違って1000円や2000円以上のランチを食べた、という人もいるかもしれません。
コロナ禍により、飲食店に行くこと自体が非日常になりつつあるため、価格が高めでも自分の欲求を満たしてくれそうな店を選んでしまうのです。つまり、私たちは無意識のうちにお金の使いどころを分けており、その傾向が強くなった結果、今は高価格帯の商品が売れているのです。
消費者に高価格帯の商品を受け入れる態勢ができ始めてきているといっても過言ではない今、安さを売りにして苦しんでいた業界は、その状況からの脱却を試みるべきです。もちろん、値上げは簡単にはできませんが、長い目で見ると、高価格設定は事業を継続する上での重要なポイントになります。
価格を高く設定するには覚悟が必要ですが、裏を返すと、高価格は企業の自信や責任の表れとも取れます。つまり、商品やサービスの品質や付加価値を高めて、その魅力を、価格を通じて消費者に伝える必要があるのです。
では、価格を高く設定するには、どうしたらいいのでしょうか? それは「仕事の純度を高めること」で叶います。いったいどういうことか、僭越ながら、私の実体験でご説明しましょう。
なぜ広告デザイナーから経営コンサルタントに?
私はもともと、広告業界でデザイナーをしていました。しかし、プランニングワークの方が得意だったため、それを武器に独立して企画制作会社を立ち上げ、さまざまな広告物をつくるようになりました。
広告というと、きらびやかな世界をイメージするかもしれませんが、実際には地味な作業の連続です。ひとつの広告物をつくるときは、その企業の歴史やこだわり、創業者の思いなど、さまざまなことを学んで理解する必要があります。そこから導き出した要素や価値を活かし、ビジュアル化したものを広告物として販売するわけです。
そのため、ひとつの広告物をつくるには莫大な時間と労力がかかります。正直なところ、制作して納品するだけでは割に合いません。そこで、私は「完成した広告物の販売」ではなく、「広告物の制作過程自体を売りものにする」ことを思いつき、経営コンサルタントに転身したのです。
自分が自信を持つ分野を極めることで、より強い信念を持って仕事へ取り組めるようになり、結果的に増収につながりました。つまり、私なりに仕事の純度を高めたことで、自分の仕事に対する価格設定を上げることができたのです。
価格を高くするということは、自分の仕事への評価が厳しくなるという一面もあります。しかし、仮に価格を2倍にした場合、今までと同じ作業で2倍の売り上げが出ることになります。そのため、ゆとりを持って仕事に向かえるようになり、時間と思いを込められるようになる分、必然的にクオリティも上がっていくでしょう。
さらに、価格を上げると客層が変わります。世の中には「安さが一番!」という人もいれば、「いい商品やサービスには、それに見合った代金を支払おう」という人もいます。価格を上げると、前者からは振り向いてもらえなくなりますが、後者と出会えるようになります。
価格アップにはハードルもありますが、そのマイナス面だけを見ず、仕事自体をワンランクアップさせるつもりで臨めば、決して難しくない挑戦といえるでしょう。