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「GMARCH以下だと大企業就職は困難」は本当?見えない学歴フィルターの存在

取材・文=文月/A4studio
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青山学院大学(「Wikipedia」より)

 近年の就活市場において、「大企業に就職できる学生は、ある偏差値帯の大学群を境に限られてきている」という指摘も出ている。そのひとつの基準がG-MARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)だ。G-MARCHの偏差値帯は、日東駒専(日大、東洋、駒澤、専修)よりも上、早慶上理(早稲田、慶應、上智、東京理科大)よりも下とされており、このラインが大企業の人事の選考基準、いわゆる学歴フィルターと化しているというのだ。

 たとえば、5月29日付の「現代ビジネス」記事では、一橋大学名誉教授・野口悠紀雄氏がそういった実情を裏付ける論説を語っている。野口氏によると、日本の年間の大卒就職者の合計は約50万人で、そのうち従業員1000人以上の大企業へ就職できるのが年間約7万人なのだが、これはG-MARCHや東大、京大、一橋、東工大、早慶上理、関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)の合計卒業生数である約10万人よりも少ないとのこと。つまり、結果として大企業への就職は上記大学の卒業生だけで占められるというのである。

 このように、G-MARCH以上の学生しか大企業に就職できないという現実は存在するのか。今回は大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に話を聞いた。

明確に学歴フィルターはなくとも、結果論として存在?

 まず、G-MARCHが大企業選考の基準になっているというのは事実なのか。

「あからさまな学歴フィルターを公言する企業はありませんが、大企業へ就職する学生の数の多さを見ていると、結果的には存在しているかと思います。

 そう考えられる要因は主に2つありまして、一つは適性検査の存在です。適性検査には性格検査と能力検査がありますが、そのうち能力検査は数学や国語などの能力を測る試験であり、大学のレベルによって点数が大きく変化します。その際に企業側の及第点の点数を獲得できるのが、G-MARCH以上の学生であることが多く、逆にそれ未満の偏差値帯の大学生は低い点数をとる傾向にあるんです。

 2つめは“二度手間フィルター”。近年は就活解禁の時期まで、企業主催のセミナーやインターンシップを自由に行えなくなりつつあり、企業が就活サイト上で先行して新卒採用の準備を行えなくなっています。そのため、企業は学生がリクナビやマイナビなどの就活サイトを通じてエントリーした際に、企業のマイページやSNSに登録するように促す。これを私は二度手間フィルターと呼んでいます。

 多くの学生にとっては面倒でやらないことでしょうが、G-MARCH以上の学生は就活に対する情報感度が高く、とりあえず登録しておく割合が高いです。そうなると、企業主催のセミナーや説明会の情報を入手しやすく、登録していない学生と差が出てしまうのです。この2つの理由で、結果論としてG-MARCH以上の学生が大企業の選考で残りやすいのだと考えられます」(石渡氏)

 さらに「G-MARCH以上の学生が重宝されやすいのは間違いではない」と石渡氏は指摘する。

「G-MARCH以上の学生に特別こだわりがあるわけではないかと思いますが、G-MARCH以上だと社内の賛同は得られやすいでしょう。選考時、G-MARCHないし日東駒専未満の偏差値の大学生は『採用しないのに無駄な時間を使っている』と他部署から批判される可能性もあり、基本的に人事部は採用に前向きではありません。

 これは入社してからも一緒で、仮に入社した人間が戦力としては微妙でもG-MARCH以上の学歴であれば『優秀だと思ったけど仕方なかったね』と“G-MARCH卒”という肩書を免罪符に責任を免れることができます。ところが、それがG-MARCH未満の学生であった場合、『だからやめとけと言ったのに……』と苦言を呈されてしまう恐れがあるわけです」(同)

 G-MARCH以上か、未満かだけでこれほど印象が変わってしまうのなら、学歴に対する人々の選民意識というのは、ある意味深刻なのかもしれない。

G-MARCH未満の大学でも、大企業へ就職できるのか

 一方の就活生自体もG-MARCH以上、それ未満の学生で意識に差があるという。

「これは私が見てきた学生の傾向ですが、G-MARCH以上の学生は、就活へのモチベーションが高いです。基本的に勉強もサークル活動も両立させ、1、2年生の頃から就活を意識して行動する学生が多いですね。G-MARCH以上だけではなく、日東駒専や産近甲龍(京都産業、近畿、甲南、龍谷)も同じような学生が多めです。

 ただそれ未満の偏差値帯の大学は、就活のモチベーションがG-MARCH以上クラスの学生と互角なのは、肌感で1~2割程度。残りは大企業狙いと豪語しつつも、就活にはあまり手を付けず、エントリーないし書類選考、適性検査で落ちているイメージがあります」(同)

 また、G-MARCH以上の大学ほど就活に有利な土壌が整備されている面もあるという。

「G-MARCH以上の大学では、大企業へ就職した卒業生の情報がサークルやゼミを通じて入ってきやすいです。現在は個人情報保護の時代ですので、OB名簿を公表しない企業も多いですが、学生間で就活に関する情報は受け継がれているでしょう。

 また、企業・金融機関や業界団体主催の寄付講座が、G-MARCH以上の大学で多数開講されている事実も無視できません。寄付講座とは、企業団体の社員がリレー形式で行う産学連携の講座。学生が社会を知るキャリア講義という形式をとっていますが、実質的には新卒向けの早期セミナーとなっています。そのため、お得に就活情報を吸収しやすいんですよ」(同)

 大企業へ就職しやすいG-MARCH以上の大学では、次なる大企業内定者を出すための再生産の仕組みが整っているのだろう。ところで、G-MARCH未満の偏差値の大学の学生でも、大企業に就職しやすい例があるのかも気になるところだ。

「地方国公立大は、たとえ偏差値はG-MARCH未満だったとしても、あまり関係なく大企業へ就職できる学生が少なくないですね。地方国公立大は共通テスト5教科受験という大学が多く、適性検査のスコアも私大生よりは高めなので、企業側が抱く国公立大へのイメージは悪くありません。

 また特定業界に強い伝統学部も、場合によっては大企業への就職がしやすいです。一例ですが、日大の理工学部は土木建築業界、立正大学地球環境科学部地理学科は観光業界に強く、業界からの評価も高め。ニッチな分野をしっかりと専攻し、特定業種にて能力を発揮できるというのはしっかりとした強みなんです。

 そして、近年ではIT系学部・学科の躍進がすさまじいです。IT業界では、2010年代から人手不足が深刻であり、IT大手の企業でもG-MARCH未満のIT系大学は無視できない存在になりつつあります。偏差値や志願倍率も上昇傾向にあり、例を挙げますと東京情報大学の総合情報学部は、倍率が2010年に1.4倍だったのに対し、2021年には4.0倍に上昇しています。同系統の学部は、全体的に偏差値が5~15ほど上がっており、IT系学部を取り巻く状況は大きく変わりつつあるのです」(同)

 G-MARCH以上の大学は大企業とのコネクションが深いなどの理由で、明確な学歴フィルターはなくとも、結果的にフィルターが働いたような採用結果になるようだ。とはいえ、G-MARCH未満の大学出身であっても、自分の専攻や興味関心を突き詰めれば、大企業への就職という一発逆転も夢じゃないだろう。

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A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

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