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JAL、3千人の配置転換で世紀の大リストラ…「地方の観光育成」企業へ転換

文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授
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JALのHPより

 日本航空株式会社(JAL)が従業員約3000人を配置転換する。その背景には、生き残りに対する急激な危機感の高まりがある。JALは国内外をつなぐ航空路線を整備した。それによって収益を得た。航空旅客事業がビジネスモデルを支えた。しかし、複合的な要因によって、収益力が低下している。既存の事業運営体制で高い成長を目指すことは難しい。現状維持が続くほど、収益性は低下するだろう。業績の回復と拡大は難しくなる恐れが高まっている。

 今後の事業戦略として注目されるのは、JALによる新しい動線(人の移動線)の整備だ。そのために、今回の人員配置は必要な施策ではある。ただし、持続的な成長の十分条件とは言いづらい。同社は組織の根底から、わが社は航空会社だ、という認識の枠組み(フレーム)を打破しなければならない。それが新しい発想の実行を加速させる。経営陣は人々の発想や行動様式の変革を加速させるべきだ。コスト削減も欠かせない。地域ブランドの創生などに資金を再配分し、収益源を多角化する。それができるか否かが、今後の業績に無視できない影響を与えるだろう。

JALが直面する急激な事業環境の変化

 今、JALは急激な事業環境の変化に直面している。これまで経験したことがない環境の変化といっても良い。グローバル化から脱グローバル化に、世界がシフトしているのだ。1990年代以降、世界経済はグローバル化した。それがJALの事業規模拡大を支えた。冷戦終結後、グローバル化によって国境のハードルは低下した。世界全体で経済成長率は高まった。

 それと同時に、各国で物価が上昇しづらい環境が実現した。グローバル化が加速するなかでJALは都市と都市を繋ぐ航空路線を増やした。その結果、同社は成長したのである。同社のビジネスモデルの要諦は動線を生み出すことにある。世界全体で人々の移動は円滑化、効率化された。2010年にJALは経営破綻した。JALは再建の道を歩んだ。中国経済の成長は同社の業績回復と事業規模の追い風になった。

 しかし、2020年以降、JALのビジネスモデルは根底から揺さぶられている。その要因は大きく3つ指摘できる。まず、コロナ禍の発生だ。世界各国で動線が寸断された。ビジネスや観光目的の航空旅客需要が蒸発した。2021年度、JALの売り上げ収益は2019年度に比べて7032億円少ない。感染再拡大によって、各国の動線は依然として不安定だ。世界の航空旅客需要がコロナ禍前に戻ることは難しいだろう。

 もう一つが、ウクライナ危機だ。それをきっかけにして世界の脱グローバル化が勢いづいた。グローバル化とは逆に、国境のハードルは上昇している。欧米各国はロシア制裁を強化する。世界経済はブロック化する。天然ガスなどの資源、穀物の供給制約は強まる。その結果として、インフレが世界経済最大の問題として浮上している。当面、物価は上昇するだろう。コストプッシュ圧力は強まる。企業の事業運営の効率性は低下する。航空業界では飛行ルートの変更などを余儀なくされる企業が増えている。

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