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日高屋は業績低迷続く、餃子の王将はコロナ前の水準にV字回復…対照的な差の原因

取材・文=文月/A4studio
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「日高屋」のHPより

 若者からビジネスパーソンにまで人気の高いラーメン・中華料理チェーン店の「日高屋」。リーズナブルな価格帯のメニューを多数提供しており、ビール、ハイボール、ホッピーといったお酒のラインナップも豊富。手軽に中華料理を食べながらお酒を飲めるということで「ちょい飲み」をしたい層からも支持を集めている。

 そんな日高屋は関東を中心に店舗を展開。そして昨年12月14日に群馬県高崎市に出店したことにより、関東の都県すべてに出店を果たした。高崎前橋新聞の報道によれば、高崎店のスタートは非常に好調で、日高屋はさらなるニーズ拡大に向けて出店計画を進めている。2022年11月末の店舗数は439店舗であるが、将来的に日高屋は600店舗の出店を目指している。

 しかし、積極的な出店計画の裏には、近年の業績に対する不安が絡んでいる可能性も。1月6日に日高屋の運営元である「ハイデイ日高」が発表した「2023年2月期第3四半期決算短信」によれば、売上高は前年比49%増の275億円6900万円を突破したものの、営業利益のほうは芳しいものとはいえない。営業利益が1億5100万円と黒字にはなっているが、コロナ禍前である20年度2月期の第3四半期決算の同30億6500万円には程遠い数字となった。しかも、コロナ禍の影響を如実に受けていた21、22年度2月期の第3四半期決算では、それぞれ20億6400万円、30億9500万円の営業赤字だった。現在の営業利益は黒字に回復したものの、コロナ禍以前の水準にいまだに戻れていない。

 日高屋不調の要因は何か。今回はフードジャーナリストの重盛高雄氏に解説してもらう。

コロナ禍の影響から抜け切れていない

 日高屋の業績が芳しいものではないことについて、やはりコロナ禍の影響からまだ抜け切れていないことが最大の原因だという。

「やはり客数の減少が業績悪化の大前提になる要素でしょう。日高屋は駅近くに出店していることもあり、仕事終わりのサラリーマンなどをメインターゲットに設定していたのですが、コロナ禍以降テレワークが始まり出社数は激減。外食すること自体が悪い印象を持たれる時期が長かったこともあり、日高屋の利点であるふらっと店舗に訪れて『ちょい飲み』に来るお客が少なくなりました。

 日高屋は料理とお酒を楽しむ居酒屋的な営業スタイルを売りとしているので、店舗に人が訪れてお金を落としてくれなければ売上アップは難しい。そして駅近くであるため固定費もかさみますし、昨今の情勢を踏まえて人件費、原料費も高騰化していると考えられるので、コスト面でも打撃を受けたはずです。

 またロードサイドに出店しようにも、日高屋のサラリーマンをメインターゲットとする戦略上、ファミリーがメインの客層となるロードサイドの立地にはなかなか展開しにくいと考えられます。このように客数減少、時流と営業方針のミスマッチなどが原因で業績を落としてしまったのではないでしょうか」(重盛氏)

テイクアウト事業を上手く展開できず

 そして、テイクアウト需要に上手く乗り切れなかったことも原因だという。

「コロナ禍に突入後、いくつもの飲食チェーンがデリバリー、テイクアウトに力を入れてきましたが、先述したとおり日高屋は店舗に訪れて食べることが前提になっているので、お客のほうも持ち帰りを想定していない方がほとんど。しかも、テイクアウトのメニューは、一部店舗では弁当類の販売もあるものの冷凍ものの餃子や唐揚げが主流となっているので、調理が面倒な一人暮らしのサラリーマンなどからすると少し手が出しづらい。

 これはテイクアウト事業で成功を収めた競合である『餃子の王将』とは対照的です。餃子の王将もコロナ禍初期は苦戦していたものの、もともとテイクアウト、デリバリー事業に力を入れていたことが功を奏し、売上減少を最低限に抑えました。個人的には、メインメニューである餃子をテイクアウト用に調理して提供したり、冷凍のまま販売したりと幅広いテイクアウトの形態を展開していたことがお客の心を掴み、リピーター増加につながったのではないかと考えています」(同)

 コロナ禍の影響がまだ大きかった21年の両社の売上におけるテイクアウト比率を比較してみよう。餃子の王将の21年4月から9月までの店内飲食における「テイクアウト・デリバリー」の比率は約43%と高水準なのに対し、日高屋は21年8月に12%強という数字となっていた。

 餃子の王将もコロナ禍の打撃を受けたものの、21年の4月から9月までの売上高は404億6300万円、営業利益は31億9200万円となっており、それぞれコロナ前の19年と比較して95%、79%ほどに回復している。

 日高屋もコロナ以前の19年からお持ち帰り専用の検索・予約サイト『EPARKテイクアウト』でテイクアウトを開始したが、お客のニーズを獲得できず伸び悩んでいたのだろう。

今後の課題は新規の客層の拡大にある

 日高屋の群馬県出店は、客数を増やすために必然的に行うしかなかったのか。

「コロナ禍の影響で、現在日高屋は利益が鈍化している傾向にあります。日高屋のメニューは、調理工程を一カ所で行い各店舗に配送するセントラルキッチン方式でつくっており、すべて埼玉県行田市にある工場産です。現状、お客が減っていたとしても、工場を休ませることになるとコスト面での損失が大きい。ですから、なるべく工場の稼働を増やさなければならないので、通常どおりメニューを製造し続けなくてはいけません。

 今回、群馬県に出店した理由としては、店舗数を増やして工場生産分の余剰分のメニューを賄うという狙いがあるかと思います。そして店舗数を拡大していき、客数をどんどん増やして、売上を伸ばしていくという狙いも当然あります。いずれにせよ、今回の群馬県出店は今後の日高屋にとって分水嶺となる決断になるでしょう」(同)

 では他チェーン店の比較を踏まえつつ、日高屋業績回復のために必要なことは何か。

「昨今の値上げラッシュを見てみると、値上げする代わりに割引キャンペーンや大盛り無料といったサービスを展開するチェーンが増えてきたように感じます。しかし、これらの施策は諸刃の剣で、たしかに客数アップする面もありますが、客単価が下がったり、そもそも大盛りを求めていなかったりする層がいたりと空回りする可能性があるのです。

 そして日高屋は客数が減っているので、従来のサラリーマン層だけではなく、幅広い世帯に足を運んでもらう必要があります。ですから一部の層にしか刺さらない施策はあまり意味をなさないように思います。今後はサラリーマン層が利用する時間帯以外のアイドルタイムに、老若男女問わない客層を呼び寄せることができるかが業績回復の鍵となってくるでしょう」(同)

 コロナ禍の影響は依然大きいが、日高屋が新規客のニーズを掴み復活する日は来るのだろうか。

(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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