東京大学名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏が入籍していたと22日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が報じた。フェミニズム、女性学研究の第一人者である上野氏は著書『在宅ひとり死のススメ』『おひとりさまの最期』『おひとりさまの老後』『最期まで在宅おひとりさまで機嫌よく』をはじめとする「おひとりさまシリーズ」がベストセラーとなり、結婚制度を否定し非婚を勧め、自身も非婚であることやそのメリットを強調する識者として知られており、多くの熱心なファンを擁するカリスマ人気学者でもある。その上野氏自身が実は入籍していたと報じられ、上野氏への批判が強まっているようだ。
1995年に東京大学大学院人文社会系研究科教授に就任した上野氏は、著書などを通じた発言が徐々に注目を浴び、かつて存在しなかった女性学という学問領域を開拓。メディア出演も多い著名学者、そしてベストセラー作家としての地位を確立し、2011年に東大を退職。現在は自身が設立した、男女共同参画社会の実現に寄与することを目的とするNPO法人・ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)の理事長として活動している。
最近では、東京医科大学をはじめとする大学医学部入試における女子差別が社会問題化していた19年、東大の入学式で祝辞を任され、
「女子は子どものときから『かわいい』ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。だから女子は、自分が成績がいいことや、東大生であることを隠そうとするのです」
「東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました」
「がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください」
などと語り、大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。
上野千鶴子氏の功績
「東大・上野ゼミといえば有名で、上野さんのゼミに入りたいと思い東大を目指す人もいた。その人気ゆえに『アンチ上野』も多い。私は上野さんの著書にハマって何か影響を受けた層ではないので、上野さんの言論にそれほど詳しいわけではないが、従来から存在するマルクス研究や階層論、資本主義研究などの知識をいろいろと組み合わせて、うまく今の家族制度や女性に関する社会問題の解説に応用させているという印象。なので、学問の世界ではそれを『知識のつぎはぎ』『ポーズとしてのフェミニズム』『まがいもの』だとして批判する層も一定数いる。
ただ、京都大学でちゃんと博士号を取っているし、実際に東大大学院の教授まで務めているわけなので、それ相応の学問的なバックグラウンドを持つ実績のある社会学者である事実は揺るがない。また、フィールドワークとして介護や貧困層支援の現場などに頻繁に足を運ぶ現場主義者でもあり、机上の理論だけによらない面は評価できる。今回の件で『“ビジネス”フェミニズム』という辛辣な批判もあるみたいだが、フェミニズムや女性学の見識を世に広めた功績は認められるべき」(大学院で社会学のゼミに在籍していたマスコミ関係者)
「あくまで私の捉え方だが、上野さんの言説は基本的にはマルクス主義のフェミニズムなので、弱者を抑圧している社会のシステムを批判するという立ち位置。それはそれでとても意義があるテーマだと思うが、私の興味関心から少し外れていたので上野さんの本を何冊も読んだわけではないが、上野さんは言っていることは一見すると斬新で過激に聞こえるものの、よく読むと特に何か真新しい視点があるわけではないと言う学生は、私の大学院時代にもいた。
上野さんは現象や問題を言葉一つで表現することに長けていて、話しも上手。さらに文章的には断定調なんだけど話し方に『押し付け感』がないので、聞く側にしてみれば、すっと話が入ってくるので共感しやすい。また、さまざまな社会問題について、学問的な知識を肉付けしてきれいに交通整理して解説してくれるので、漠然と現状に不満を持っている一般の人々は心のモヤモヤを解消してくれたような気がするので、多くの人に受け入れられやすいという面はあったのかもしれないし、それはそれで学者の仕事としては意義のあること」(大学院で社会学を専攻していたマーケティング会社プロデューサー)
「ビジネス左翼」「情弱ビジネス」との厳しい声
「文春」によれば上野は東大教授時代、妻子がいる元大学教授の男性と共同名義で一軒家を購入し、多くの時間を一緒に過ごし、上野氏の周囲では二人は不倫関係にあるとみられていたという。また、上野氏は要介護生活を送っていたこの男性のお世話をして、最期を看取ったというが、公には熱心に非婚を勧めていた当人が実は入籍していたという報道を受け、識者からは次のようにさまざまな声があがっている。
<「みんな平等に貧しくなろう」と言いながら、自らはタワマン、別荘、BMW生活を送っていたことで有名な上野千鶴子大先生は、「みんなおひとりさまになろう」と言いながら、自らは結婚もしていたらしい。ようは徹底してビジネス左翼だったってわけか>(麗澤大学客員教授の飯山陽氏/21日付Twitter投稿)
<これほど卑劣で愚劣な御仁を他にあまり知らない>(中野区議の吉田康一郎氏/21日付Twitter投稿)
<今回のことで、「おひとりさま」の生き方を説いてきた上野千鶴子さんを批判したり、「ビジネス左翼」という言い方をされる方もいしゃるけど、ぼくはむしろ、パートナーでいらした色川大吉さんのことを含め、素敵な生き方だとその人間らしさに心を動かされた方である>(脳科学者の茂木健一郎/22日付Twitter投稿)
また、SNS上では以下のように厳しい声もみられる。
<これが本当だったら「他人に独身をすすめて自分は結婚の幸せを手に入れていた」って話になるんで、邪悪ってレベルじゃねぇーぞ。ヤバイ投資をすすめる情報商材売って、自分はそこに投資してない投資家みたいなもんやん>
<本妻に対する嫌がらせで結婚制度をdisり、おひとりさま論を売物にしていたのは、情弱ビジネスそのものではないのかな?>
<“おひとりさま”をテーマにした本でベストセラーになるヒットをして『平等に貧しくなろう』と提唱していた上野千鶴子氏が、実は密かに入籍していたり、タワマンに住んで高級外車を何台も乗り継いで裕福な生活を満喫しているという現実。情弱は搾取される。恐ろしや…>
<上野千鶴子が結婚してたことより、不倫してたってことの方が嫌だな…女性一人を不幸にするのを「結婚制度バカバカしい」「不倫は性的自由」という理論武装で正当化してたんじゃないの?>
<結婚してただけでも相当アレだけど、その上不倫もしてたったのが同じ女としてはめちゃくちゃドン引きである。妻の方が先に死んだから後釜に収まるって妻の立場はどうなのよ…だから結婚制度を批判していた訳か>
<不倫を肯定してたのは己がその立場にあったから、ならば、氏のしてきたことは相当罪深いと思うけどなあ。ただの私怨じゃん、その思想>
<まあいつもこれからの社会はこうあるべき!でもご自分は別。みたいな理想論かましてた人が、またご自分は別だったんですね>
<結婚を「誰かの“所有物”になる契約」として全否定していた上野千鶴子が、不倫相手の不動産、“所有物”を相続できるように入籍していたとか…大変滑稽というか人間味あふれる矛盾というか…>
<上野千鶴子が真に求めてたのは自由な恋愛・不倫の正当化、そのための家族制度解体だったのかな>
<息子の立場での相談でむしろ母親の不倫を肯定してたけど、自分がやってたから肯定してただけなんだよな 理屈も理念も何もなく、自己保身で結婚してたの隠して、不倫してたのを自己正当化してただけ>
こうした声について、大手出版社で女性問題に関する特集なども手掛ける週刊誌編集者はいう。
「ドキュメンタリー番組『情熱大陸』(TBS系)で紹介されていた上野さんのタワーマンション上層階の自宅や広々とした別荘、愛車のBMWなどを取り上げ、『平等に貧しくなろう』と語っていた主張との不一致を指摘する声も出ており、今回の入籍の件と合わせて言行不一致だという批判が多く出ている。ただ、いわゆる識者といわれる人たちがみな、公の場での主張と実際の生活が一致しているかといわれれば、そういうわけでもない。上野さんが日頃発信する社会システム全体の話と、個人としての実生活の話は分けて考えるべきだという捉え方もあるだろう。
その一方、上野さんが『おひとりさま』の生き方を推奨することで本や講演、メディア出演などを通じてお金を稼いできたことも事実であり、『おひとりさまビジネス』『情弱ビジネス』という批判が出るのは免れないし、権威が失墜したことで『上野信者離れ』は一定程度起きるかもしれない。個人的には、上野さんは世間から少し持てはやされ過ぎていたという印象はあるので、『まあ、そんなもんでしょう』という感想」
(文=Business Journal編集部)