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スシロー、AIが生成した画像連投が物議…著作権法上、問題になる可能性も

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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スシローが公開した、AIが生成した画像
スシローが投稿した画像(公式Twitterより)

 回転寿司最大手のスシローが、また炎上している。

 昨年、スシローは「おとり広告」で景品表示法違反として措置命令を受けたほか、キャンペーンの期間を表示しない広告を掲示してトラブルが発生したり、「ビール半額」を謳いながら開店直後でも品切れ状態だった、などといった不祥事が相次ぎ、客足が遠のいた。

 それが今年に入ると、1月に高校生が醤油ボトルや湯飲みを舐め回す動画が拡散したほか、レーンを流れる寿司に消毒液を噴霧する動画など、さまざまな迷惑行為・犯罪行為の舞台となり、大きな被害を受けた。昨年から一転して“被害者”の立場となり、芸能人やユーチューバーから一般人まで、スシローを応援しようとの声がネット上にこだました。

 だが、今回は少し様子が異なる。スシローの企業体質を疑問視する向きもあるが、「理不尽な言いがかりで、スシローがかわいそう」と同情する声も出る事態になっているのだ。

 事の発端は、スシロー公式ツイッターが10日に投稿したツイート。

「ダメだ….我慢できない… サーモンの素晴らしさをもっとみんなに伝えたい 抑えられないこの気持ち… どうしようもなくてChatGPTに相談してみました シンギュラリティ ならぬ #スシンギュラリティ を明日お届けします…」

 この投稿と共に、ChatGPTに「『スシローのサーモンの素晴らしさ』を伝えるバズるアイデアをひとつ考えてください」と質問して得た回答を貼り付けている。ChatGPTは、「『AI が考える究極のサーモン寿司』SNS投稿キャンペーン」を提案し、AIにサーモン寿司の画像を生成させてSNSに投稿するように指示。

 このアイデアを採用し、スシロー公式は翌日、画像生成AIで作成した画像を連続投稿。「サーモン」「生サーモン」「サーモンとろたく」など、計11枚の寿司のビジュアル画像を公開した。

 だが、このAIが生成した画像を見た一部のツイッターユーザーが、「まっとうな企業がやることか?」「他者の著作物を無断で改変して広報に使うとか倫理観どうなってんの?」「他人様のイラストを無料で食べさせてAIで生成した画像を無料で商業的に利用している」などと批判が噴出。

 確かに、画像生成AIは、インターネット上に公開されているイラストや写真などを勝手に取り込んで学習し、それらを組み合わせるようにして画像を生成することから、問題視する声も出ている。だが、果たしてAIが生成した画像を広報に利用することは、なんらかの問題をはらんでいるのだろうか。

AIが作成した画像の法的な取り扱い

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように説明する。

「確かに、AIがネット上の素材(イラスト、写真)を集めて画像を作成しているとするならば、著作権フリーの素材ではない限り、複製権や翻案権という著作権の幾つかを侵害する可能性があります。

 もっとも、侵害しているのは誰か、について『コンピュータである』と考えるなら、人間が作った法律は人間(法人も)にしか適用されませんから、SFの世界でない限りコンピュータに『著作権法違反だ!』と追及することはできないことになります。

 とはいえ、法人である『あきんどスシロー』が画像生成AIというツールを使用しているわけですから、『引用』という、著作権法上許される『他人の著作物の使用方法』にあたらない限り、著作権法違反となる可能性があります。

 スシロー社が公開している画像の中には、明らかに『誰かの著作物』と認識できる素材が含まれていますので、この著作物の権利者(著作権者)が侵害を訴えたら、法的な問題となるでしょう」

 確かに、スシローが投稿した画像のなかには、元画像の著作者のものと思われる署名が入っているものもある。このような画像については、争いが生じる可能性があるというわけだ。

 進歩が著しいAIだが、そんなAIが生み出した画像は、誰に著作権が帰属するのだろうか。

「AIが作成した画像自体の著作権ですが、そもそも数々の著作権が発生する『著作物』とは、難しく言うと『思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの』、簡単に言うと『考え方や、いいなと感じたことを文章や絵や音楽で表現したもの』です。SFの世界でない限り、AIはまだ『感情』を持っていませんので、いくらAIが作成した画像が芸術的だったとしても、現行の法律では著作権は発生しません。

 ここで、AIに画像を作成させるための『言葉』を入力した人間に、出来上がった画像の著作権が発生するかどうかも問題になりますが、いくらプロットをAIに叩き込んだところで、完成品をイメージして『言葉』を表現したわけではないので、この人間にも著作権は発生しないと考えます。

 昨今のAIの進化を、ニュースではインターネット発明以来のすごいことと報道されていますが、法律の世界でも今後、『AI作成の画像の著作権について』という新しい論点が活発化しそうで楽しみです!」

 AIの進化に法律が追いついていない状況にあるわけだが、今後、AIが生み出す作品は、画像のみならず、音楽や小説、彫刻、料理など多岐にわたって権利が争われることになっていくのかもしれない。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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