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社員の9割が外国人、国籍約10カ国…ザ・プラント、多文化共生型の組織運営

取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト
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ザ・プラント代表取締役のアナトール・ヴァリン氏と、チーフ・ヒューマンリソース・オフィサーの岡真喜子氏(撮影=名和真紀子)

 社員72名の9割以上が外国人で、国籍数は10カ国近くに及ぶザ・プラント(東京都港区)。2005年に設立された同社は、グローバル企業向けECプラットフォームやCMSの開発を手がける。多文化共生型の組織運営にどのように取り組んでいるのか。同社チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー(最高人事責任者)で、日本GHCDコーチング協会認定講師の資格を持つ岡真喜子氏に聞いた。

――社員の大半が外国人ですが、戦略的に増やしたのか、それとも自然発生的に増えたのでしょうか。

岡真喜子氏(以下、岡) 外国人社員は自然発生的に増えました。杭州とオーストラリアにオフィスを開設したのも、社長と一緒に創業した中国人社員とオーストラリア人社員がそれぞれ「自分たちの国に帰りたいが、ザ・プラントで働きたい」と希望したので、現地で働き始めたことがキッカケです。その後、社長や社員の紹介、ホームページ、紹介会社経由などで採用を進め、上位のポジションはヘッドハンティング会社に依頼して採用しました。一方で、取引先の外国人社員が「雇ってもらえないだろうか?」とアプローチしてきて、驚いた経験もあります。

――顧客だった社員もいるそうですが、どんな理由で転職してきたのですか。

岡 昔ながらの日本企業の習慣で少し窮屈な思いをしていた時に、自由度の高い雰囲気で働いている当社の社員を見て、働きやすそうな会社だと思ってくださったのです。

――採用の基準は何ですか。

岡 面接は、担当部長がスキルをチェックし、私とHR部門がパーソナリティーを見て、社長が最終面接を行っています。スキルは実務スキルに加えて、東京勤務に関しては英語と日本語でビジネスができること。パーソナリティーは「会社に貢献したい」という価値観ではなく「手の届く範囲の人たちをサポートしたい」という価値観を持っていることを意識して見ています。 

――「手の届く範囲の人たちをサポートしたい」という価値観の持ち主かどうかは、どうやって見極めるのでしょうか。

岡 これまでの経験を聞いたり、当社に入社したらどんなキャリア形成をしたいかを聞くなかで見えてきます。私の場合、日本GHCDコーチング協会でコーチング研修の講師を行っているので、この経験を活かして、応募者の話の折々に突っ込んだ質問をしています。すると、面接用にお行儀の良い発言をしているのかどうかが見えてくるのです。

――どんな質問をするのですか。

岡 例えば「この転職が1年後や2年後に正解だったと思えるのは、どんな状態か」と聞いて、さらに具体的に掘り下げて聞いていくと、中途半端な考え方の応募者は答えに行き詰まってしまいます。今はZoomで面接を行うので、パソコンの上にカンペを置いて話している人は目線ですぐに分かります。そこに書いていないことをどうやって話していただくか。そのために突っ込んだ質問を重ねています。

――応募者はかなり多いのではないでしょうか。

岡 いえ、そうでもありません。プロジェクトマネージャーの応募は結構ありますが、営業職だと、かなり高度なバイリンガルであることとeコマース業務の経験を求めているので、そこで門戸がぎゅっと狭まってしまうのです。それで最近はヘッドハンティング会社に依頼しています。

――御社はグローバル基準を踏まえて、給与水準も日本企業に比べてかなり高いのでしょうか。

岡 そうですね。同業他社に比べて高いと思います。応募者も「このぐらい欲しい」と希望額を提示してきます。

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多様性とイノベーション

――経済産業省の調査によると、多様性を含む企業は業績が高い傾向があります。多様性の高さとイノベーションや業績の関係をどうご覧になっていますか。

岡 多様性があるからイノベーティブな仕事ができているのかどうかは分かりませんが、心理的安全性が確保された職場だと思います。例えば社長や経営幹部が「これをやるから」と示した方針に対して、社員が「それ、おかしくない?」と疑問を述べたら、おかしいと指摘したことに関する記事やデータを探してきて、それをもとに議論を始めて「じゃあ、こうすればいいんじゃない?」と前に進めています。誰もが納得感を得られる職場なので、生産性が上がっているという面はあるかもしれません。やらされているのではなく、自分も一員に加わっているという意識を持てるのです。

――もともと社長がそういう方針をお持ちなのですか。

岡 社長は才能のある社員をトップダウンで抑えるのではなく、その才能を活かすべきだというマインドセットを持っているので、批判的な意見にも「ああ、そうなんだ」と聞き入れています。

――10カ国近い国籍の社員が働いていると、労働時間の考え方も含めて様々な習慣の違いがあると思います。どのように調整しているのでしょうか。

岡 社長が「クオリティーの高い成果物を出してくれればよい」という考えなので、当初から昼食時間などの設定が自由な職場です。日本の企業には、残業して会社にいることが頑張っていると見なされる風潮がありますが、この風潮はおかしいと社長は指摘していて、社員がフレキシブルに時間を使えるようにしています。採用面接で、中国人社員は昼食後にお昼寝タイムを要求し、イスラム教徒の社員は毎日2時間のお祈りタイムを要求してきましたが、すべて受け入れています。

――マナーの違いはいかがでしょうか。

岡 受け取った名刺を両手でもてあそぶようにいじる社員とか、クライアント先での会議に自分が食べるドーナツを持ち込もうとする社員もいたので、その都度日本のマナーを教えています。それから日本企業の会議では、開始時間の遅くとも2~3分前には会議室に入りますが、外国人社員には5分や10分平然と遅れる人もいました。時間厳守の意識が日本人とは異なるので、日本の習慣を伝えています。

――勤務時間はフリータイム制ですか。

岡 一応午前10時から午後7時に設定していますが、小さなお子さんの送り迎えで早く退社したいとか、エンジニアが深夜のほうが仕事ははかどると希望するなど個々の事情に応じて、担当マネージャーが勤務時間を承認しています。

――在社時間の拘束がないという意味では、フリーランスのような働き方ができているようにも見えます。

岡 そうですね。コロナの前からリモートワークを導入していたので、コロナが起きてリモートワークに切り替えた時にも抵抗感がありませんでした。いざ切り替えると皆の生産性が上がったんじゃないかと。実際、システム開発でスペックを書いたり、デザインを考えたりする時には、静かな時間をまとめて欲しいという事情もあるので、リモートワークはプラスに働きました。

――リモートワークでは社員の行動が互いに見えにくい面もあるのではないでしょうか。これは人事評価にも関係してきますが、どんな方法で行っていますか。

岡 社員が増え始めた2年前に仕組みをつくりました。「この人はサポートしてくれるのか?」「この人は話しやすいのか?」「この人が辞めると言ったら、どのぐらい一生懸命止めるのか?」についてアンケート形式で、上司から部下、部下から上司、同僚同士の評価を行っています。その上で本人の言い分も聞きます。お互いにどれだけサポーティブに働いて、より良い成果を出しているが評価のポイントです。

風土を醸成する5つの価値観

――チームワークを重視しているわけですね。その風土を醸成する価値観として「人」「リーダーシップ」「職人」「成長」「信頼」という5つを掲げています。価値観を策定した経緯を教えていただけますか。

岡 社員から「価値観を言語化したほうがいいよね」という意見が出たことを受けて、各部署のニーズを引き出して土台を作ってから、経営層が整理したというのが経緯です。ボトムアップで策定されました。

――組織で働く人は、同僚に対して競争本能を持つ一方で、共存本能も持っていると思います。この2つをどのように均衡させていますか。

岡 チーム単位で仕事をしているので、一人だけの成功は起こり得ません。競争本能は同僚ではなく、社外のコンペティターに向いています。社内ではお互いにサポートし合って、コンペティターに負けない良いシステムを開発しようと。

――離職率はどのぐらいですか?

岡 ヒトケタ台の前半です。

――社員にとって、働きがいがあって処遇の良い職場といえますね。ウェルビーイング経営のあり方をどう認識されていますか。

岡 一般にウェルビーイング経営には、従業員をどうやっておもてなしするかという捉え方が多いと思います。しかし会社は成果を出さなければならず厳しい面もあるので、従業員からもどんな貢献ができるかを考えてもらうという双方向があって、初めてウェルビーイング経営は成り立つと思います。当社では何か問題が発生した時には、その都度、どこまで社員に厳しく言うのか、どこまでソフトに言うのかを経営層でディスカッションしています。

――御社は2030年までに「日本一幸福な働く場所にする」という目標を掲げているとうかがっています。目標とする状態や指標について教えてください。

岡 5つの指標を設定しています。第一に、人事部スタッフ全員が、全従業員と年一度必ず対話を持ち、顔、名前、ロールを100%覚えている状態になっていること。第二に、 年一度の従業員満足度調査における「自分らしく働けている」の設問への回答が90%「Yes」の状態になっていること。第三に、「The Plant 5つの約束」の内容を従業員の85%が理解し実行できている、または挑戦できている状態になっていること。第四に、従業員全員の誰もが、パソコンを持たずに2週間以上の休暇に行きたい時に行ける状態になっている。そして第五に、退職後も「The Plantアルムナイ」として継続的なつながりを持ってくれるメンバーが70%以上の状態になっていること。

――日本企業では外国人雇用が一段と増えていきます。何が成否のポイントになるのでしょうか。

岡 雇用する前に期待値をどれだけ擦り合わせておくか、雇用した後はどれだけフレキシブルに対応するかが大事だと思います。あとは、日本の企業は「このことをこの社員にやってあげたら、全員にやってあげなければならない」と考えがちですが、そうではなくてもよいというマインドセットを、経営者や管理職がどれだけ持てるかが大事ではないでしょうか。

――期待値は数字で示したほうがよいのですか?

岡 数値目標というよりも個々の働き方だと思っています。そのためには、日本の細かい商習慣を分かりやすく、丁寧に説明していくことなど、日本の文化も含めて理解していただくことが大切だと考えています。

――本日は示唆に富んだお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト)

※本記事はPR記事です。

小野貴史/経済ジャーナリスト

小野貴史/経済ジャーナリスト

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表
著書「経営者5千人のインタビューでわかった成功する会社の新原則」

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