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テスラ販売わずか6千台、日本でまったく売れない理由…日産「サクラ」に敵わず

文=Business Journal編集部
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テスラ「モデルS」(「Wikipedia」より/Benespit

「NIKKEI Mobility」報道によれば、米テスラの2022年の日本での販売台数は約6000台であることがわかった。同社は同年の世界販売台数が131万台と世界EV(電気自動車)市場で2位の座にあり、同年の米国での販売台数は48万台(前年比約4割増)、欧州は23万台(同)と伸びているが、日本では前年比1割増にとどまる。1300万円近い新車販売価格(「モデルS」)や200万円超とされるバッテリー交換費用をはじめとする高額な修理・パーツ交換費用、さらにはEV用の充電拠点の少なさなどがハードルとなっているようだ。その一方、国内では日産自動車の軽EV「サクラ」の22年度の販売台数が約3万3000台になり、EV市場トップとなっている。国の補助金を使えば180万円ほどから購入できる点や、テスラと違い小回りが利くサイズであることなどが受けている。では、なぜ世界ではEVの主流となったテスラは日本では売れないのか。その理由を追ってみたい。

 欧州連合(EU)が2035年にガソリンなどで走るエンジン車の新車販売を禁止する方針を決めるなど(環境に良い合成燃料を使用するエンジン車は販売可能)、世界的にEVシフトが進むなか、EVメーカーとして急速に存在感を高めているのが、テスラと中国勢だ。現在、世界最大のEVメーカーは中国のBYDであり、2位はテスラだが、テスラが市場のパイオニアとして世界にEVを普及させる起爆剤となったことは誰もが認めるところだろう。

 日本でも政府が35年までに自動車の電動化100%を進めると宣言しており、補助金制度などの影響もありEVシフトが進む。トヨタ自動車は25年ごろに電動車の新車販売を年550万台以上にする方針を示しており、日産は30年代前半に日米欧中の新車販売のすべてを電動車にする。ホンダはさらに踏み込み、40年に世界での販売のすべてをEVとFCV(燃料電池車)にすると発表している。

 だが、国内でのEV販売は少ない。昨年の新車販売に占めるEVの割合は1.5%にとどまり、車種別シェアとしては、トップの日産「サクラ」に続き、2位は日産「リーフ」(1万2732台)、3位は三菱自動車「eKクロスEV」(4175台)となっている。

日本でテスラを買う理由がない

 国内でテスラが売れない理由について自動車業界関係者はいう。

「日本でテスラという社名を知らない人のほうが少ないだろうが、街中でテスラ車が走っている光景を目にした人はほとんどいないだろう。新車販売で年間6000台というのは『まったく売れていない』というのと等しい。大きなボディのサイズや斬新すぎるデザイン、ファミリー層にとっての使い勝手の悪さ、充電拠点の少なさ、高額な価格や修理費用などを考えれば、テスラは道路や駐車のスペースが狭い日本向きではなく、日本でテスラを買う理由がないといっていい。なので、一部の物珍し好きのユーザーが好奇心から購入しているにすぎないのが実情だ」

 また別の自動車業界関係者はいう。

「そもそも、まだ日本ではガソリン車ではなくあえてEVを買う積極的な理由がない。そのようななかでもEVを買うとなれば、日本の交通事情にマッチするよう開発された『サクラ』一択になってくる。『サクラ』は一般的な軽自動車より高いトルクを実現しパワーがあり、自宅充電だと6時間ほどでフル充電できる。ただ、いくらトルクが高いとはいえ普通車よりはパワーは弱く、充電に『6時間もかかる』ともいえ、依然としてハードルが高い」

 もっとも、世界的なテスラの伸長も長続きする保証はないとの声も聞かれる。

「製造から廃棄までの全工程、動力源のエネルギー面をトータルでみると二酸化炭素(CO2)排出量や環境負荷はガソリン車よりEVのほうが高いという見解も広まっている。加えて世界市場で中国メーカーが一気に台頭していることに欧米の警戒が高まっていることもあり、すでに海外ではEVシフト見直しの機運も出始めている。実際に35年にガソリン車の新車販売を禁止するとしていたEUも、一部のエンジン車の販売を認めるなど、方針を緩めつつある。今、世界でEVシフトが進んでいるのは、日本を含む各国がEV購入に多額の補助金を出しているためだが、もし各国政府が政策を転換して補助金をやめれば、世界のEVシフトは急速にしぼむ。そうなればテスラ『バブル』も弾ける」(同)

 当サイトは7月29日付記事『テスラ車バッテリー故障→修理代230万円、買取も拒否…EV保有の隠れたリスク』でテスラ車を所有する際の留意点などについて報じていたが、今回、改めて再掲載する。

――以下、再掲載――

 電気自動車(EV)メーカー、テスラの「モデルS P85」でバッテリー不具合が生じ、同社から交換費用の見積もりとして230万円を提示されたという事例が話題を呼んでいる。SNSのX(旧Twitter)に投稿されたツイートによれば、この投稿主は2019年10月に認定中古車として購入し、今年3月に車検を受けたが、5月頃に突然バッテリーが故障。無料交換が可能な保証期間が昨年11月に切れていたため、交換費用が発生するという。日本でもEVの普及が進むが、EVではこうした予期せぬ事態やリスクは多いのだろうか。専門家に聞いた。

 欧州連合(EU)が2035年にガソリンなどで走るエンジン車の新車販売を禁止する方針を決めるなど(環境に良い合成燃料を使用するエンジン車は販売可能)、世界的にEVシフトが進むなか、日本でも購入時の補助金に後押しされるかたちで徐々にEVが増加。22年度の国内の全乗用車販売のうちEVが占める割合は2.1%となっている(日本自動車販売協会連合会などの発表より)。テスラはEV販売台数で世界シェア1位であり、22年の世界販売台数は131万台に上るが、日本での同年の販売台数は約6000台(1月26日付日経産業新聞より)。ちなみに22年度の国内メーカーのEV販売台数は、日産自動車の軽EV「サクラ」が3万3097台、日産「リーフ」が1万2751台、三菱自動車の軽EV「eKクロスEV」が7657台となっており、その知名度とは裏腹に日本でのテスラの普及はまだこれからといえる段階だ。

 そんなテスラ車の購入を検討している人にとっては心配になる事態が報告された。前述のツイート主によれば、テスラに相談したところ、バッテリーが故障した状態では買取ができないと拒否され、修理すれば90万円で買い取ると言われたという。これはテスラ車特有のリスクといえるのか。中古車販売店経営者で自動車ライターの桑野将二郎氏に聞いた。

230万円というのは常識の範囲内

――バッテリー交換に230万円というのは、適正な金額といえるのか。

桑野氏 EVはまだ発展途上。とくにバッテリーの性能は日進月歩の状態です。他のEVを例に挙げると、日産の初代「リーフ(ZE0型)」は生産終了からすでに5年経過していますから、バッテリーの劣化した中古車が市場でも多く見られます。私自身、昨年に走行距離6万kmの中古リーフを50万円で購入して乗っていましたが、買った時からバッテリーの充電容量が減っていて、満充電でもエアコンをつけたら50km程度しか走れませんでした。さすがに不便なので、ディーラーでメインバッテリーの交換を見積りしたら、バッテリー代だけで80万円以上、交換工賃10万円以上、合計でおよそ100万円でした。

 初代リーフの新車当時の販売価格は、約270万~450万円でした。バッテリー容量によって値段が違いましたが、小さいバッテリーの安いモデルは本当に近所の移動くらいにしか使えないレベルでしたから、実用性を考えると大きなバッテリーの高額モデルという選択になります。一方のテスラ「モデルS」は新車時価格が約1300万円ですから、この車両価格の差に準じて部品の値段も高くなることを考えれば、バッテリー交換が230万円というのは常識の範囲内だと思います。

――このような事態は、日本メーカーのEVでも起こり得るのか。

桑野氏 前述のように、日産リーフも同様といえるのではないでしょうか。三菱自動車の「i-MiEV(アイ・ミーブ)」でもまた同じ。実際に私自身、所有して経験してきたので間違いないです。日本メーカーのEVはメインバッテリーが劣化すると使い物になりません。そう考えると、テスラは保証期間も長いですし、バッテリーは日本のEVに比べて非常に劣化しにくいというデータもあり、リセールバリューも含め、テスラのほうが優秀だという見方ができます。

 また、EVではなくレシプロエンジンを搭載した中古車の場合に置き換えると、同じように保証期間も切れた8年落ちの車両が、エンジンの不具合で故障することは普通にありえますし、その際の修理代は50万円で済む場合もあれば、150万円以上するケースもあります。少し高級な輸入車ですと、300万円以上することもあります。こういった従来の自動車に比べると、EVは部品点数も少なく、故障頻度も少ないといわれています。

 テスラの場合は保証期間も長いわけですから、万が一バッテリー交換で230万円かかったとしても、新車時価格に照らし合わせるとけっして高額過ぎるということはないでしょう。テスラ「モデルS」と同価格帯のメルセデス・ベンツがエンジンの故障に見舞われた時、保証が切れていれば修理代が250万円といわれても、オーナーは受け入れられるでしょう。EVだから修理が高くつく、といった偏見は捨てるべきでしょうね。

――このほかに、テスラ車を購入する際に押さえておくべき注意点などはあるか。

桑野氏 テスラに限らず、EVはまだユーザーの理解が及ばないことがたくさんあります。レシプロエンジンの自動車とは動力が違うわけですから、上手な走らせ方にも独特なコツがいりますし、ガソリンスタンドで気軽に給油できるわけもなく、電欠トラブルのリスクが常にあります。ただし、そういった特性を理解して慣れていけば、経済性だけでないEVならではのメリットもあるわけです。リスクを抑えるためには、テスラを専門的に扱っているお店で購入することや、認定中古車に絞り込んで探すという選び方を一考すべきでしょう。

――日本メーカーのEVを購入する際に、押さえておくべき、ガソリン車と違う注意点などはあるか。

桑野氏 前述のとおり、最大の留意点は充電に関するリスクです。ガソリンスタンドのように、どこにでも充電ステーションがあるわけではなく、常に走行可能距離を把握して、電欠にならないドライブマネジメントが必要となります。また、中古車のEVを買う場合は、走行距離や年式よりも、現車の内外装のコンディションとともに、バッテリーの残量を示す航続距離計の残量数値をチェックしましょう。テスラの場合、標準値、定格値、パーセンテージという3種類の数値で判断できますが、テスラの優れているところは、バッテリーの劣化度合いをソフトウェアで定量化できているところなので、標準値が新車当時の基準値に対してどれくらい劣化しているか確認することが有益です。

 日産「リーフ」の場合はセグメント欠けを確認すべきです。セグメントとは、「リーフ」のバッテリー劣化度合いを表す数値で、メーターに目盛りで表示され、劣化すると目盛りが欠けていきます。これが俗にいわれるセグ欠けという状態で、半分程度まで欠けている中古車も多く見られます。ここまでバッテリーが劣化すると日常使いではかなり不便になってきますので、そういう中古車は避けるべきでしょう。

(文=Business Journal編集部)

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